Vol.68「拾い物感」があった映画。
大々的に宣伝されて劇場公開されるブロックバスター大作も良いのですが、静かに劇場公開される作品を観て「拾い物感」を覚える事ってありますよね?
先週末、映画館で数本映画を観た中で、そんな感想を抱いた作品が2本ありまして…
1本目『オアシス』
【あらすじ】
その街では、菅原が率いる暴力団と、木村が率いる半グレ集団が、縄張りを巡って一触即発の状態にあった。
そんな中、若い女性 ” 紅花 ” の様子を影ながら見守っている、暴力団員の ” 富井 ” 。
半グレ集団の中で、若手の暴走を なんとかなだめようとする ” 金森 ” 。
実はこの三人、過去に繋がりがあったのだが、再び三人の縁が交錯しようとしていた…
下記は約1分間の予告編です。
「乾いた雰囲気」の冒頭や、終盤の「接写気味で描くバトル描写」が目立つのですが、それ以上に ” 富井 ” と ” 金森 ” 、それぞれのパートをブリッジする際、例えば「食事の場面」で自然にスライドさせる等々、丁寧な編集や話運びといった「作り手の巧さが光る作品」でした。
特に「 ” 富井 ” と” 紅花 ” が語り合う場面」で、一瞬挿入される「三つのコーヒーカップを持つ ” 金森 ” 」のショットは、『セリフに頼らない雄弁さ』を感じました。
また、記憶を巡る話なのですが、過去の因縁を語りすぎず、それでいてしっかり観客に伝える塩梅も心地よく、更には、あるキャラクターの ” 忘却 ” に対して、安易な決着にしなかった点も好感が持てました。
まぁ、強いて言えば物語のクライマックスが「 ” 着地ありき ” の逆算」に見えてしまったのは、少々残念だったかな?…と。
(それでも、「え?コイツこんなに強かったの?」というサプライズ!?があったりするので、十分見どころはあります。)
2本目『他人は地獄だ』
【あらすじ】
実家暮らしに閉塞感を募らせて、仕事を辞め衝動的に上京した青年ユウは、先に上京していた恋人のメグミに同棲を持ち掛けたものの断られてしまう。
やむなくシェアハウス「方舟」に身を寄せるが、そこで出会ったのは焼肉を食べながら「蟲毒(こどく)」の説明を嬉々として語る、謎めいた青年キリシマだった…
下記は約1分間の予告編です。
原作は韓国のWEBコミックで、既に韓国では連続ドラマ版も制作されているとの事ですが、私はどちらも未読&未見。
そんな、事前知識ゼロの姿勢!?で観ましたが、なかなか見応えありました。
主人公が、「周囲がおかしいのか?ひょっとすると自分がおかしいのか?」という疑念にさいなまれていくのと同時に、新たな職場でストレスをため込んでいく…という中盤までの展開は、演者の佇まいも相まって良かったですし、それに加えて派手なシャツを着こなすキリシマの不気味さはインパクト大。
事実が明らかになる中盤で、話の推進力が一瞬落ちた様に感じたのですが、更に重なる ” とある展開 ” で勢いを増してからは、予測不能なままラストまで突き進んでいきました。
正直、 ” キリシマの真実 ” は、ほぼ反則に思えたのですが、それでも ” エピローグ ” に妙な納得感があった作品でした。
※なお、結構「胸糞悪い展開」があるので、ご鑑賞の際はご注意下さい(笑)
では、今週の締めの吃音短歌(注1)を…
つたないしゃべり 笑われて 笑われて 心砕けて ようやく負ける
※ちなみに「他人は地獄だ」で、あるキャラクターが演出上、吃音めいた喋り方!?をした様に聴こえた瞬間がありまして(吃音が ” 異質なモノの演出 ” として使われた様に感じて)少々イラっとしました(笑)
【注釈】
注1)吃音短歌
筆者が抱える障害でもある、吃音{きつおん}(注2)を題材にして詠んだ短歌。
この中では『「吃音」「どもり」の単語は使用しない』という自分ルールを適用中。
注2)吃音(きつおん)
かつては「吃り(どもり)」とも呼ばれた発話障害の一種。症状としては連発、伸発、難発があり、日本国内では人口の1%程度が吃音とのこと。