Vol.10 消えた町と消えた音頭。
先日、ふらふらと本屋さんに入店した際、以前から気になっていた小説『成瀬は天下を取りにいく{著:宮島 未奈さん}』(注1)を衝動買いして、読み始めてみれば、案の定 面白くて一気読み。
いくつかの短編を綴ったオムニバス構造の作品で、どんな物語かと言うと、滋賀県の浜大津エリアを舞台に、独創性とバイタリティ溢れる若者 ” 成瀬あかり ” が巻き起こす様々なエフェクトを、主に ” 周囲の人視点 ” で描く…というもの(※ただし、一遍は本人視点)。
ぶっ飛んだ(厳しい言い方をすれば、現実離れした) ” 成瀬あかり ” というキャラクターが痛快な上に、滋賀県民の私からすれば、だいたいの立地条件が頭に入っているので、より楽しめる訳です。
まぁ私は、滋賀県民と言っても北部エリアの民!?なので、浜大津方面に対する「地元感」は若干薄いのですが、それでも「一時はあの辺りに出没する用事があったなぁ」…と思い出しつつの読了と相成りました。
ちなみに、この作品の終盤『江州音頭(ごうしゅうおんど)』(注2)という盆踊りが出てきます。
滋賀県ではポピュラーな盆踊りで、他所から来た方から「滋賀県民の方はみんな江州音頭を踊れるんだね!」と驚かれる事もあるのですが、…実は私、滋賀県民なのに江州音頭で踊れないのです。
…というのも、私が小学1~2年生の頃は、運動会の途中に「みんなで江州音頭を踊る時間」があって、運動会前に江州音頭を踊る練習をさせられたのですが、それが小学3年生の頃には、「ふるさと創生」の一環で『町オリジナルの音頭』が作られ(注3)、それに取って代わられた結果、江州音頭を覚える機会を逸してしまったからなのです。
しかし、江州音頭に取って代わった『町オリジナルの音頭』も、その後の いわゆる「平成の大合併」(注4)により、私が住んでいる町が隣の市に吸収合併されたことで存在意義を失い、皆の記憶から消えていったのでした。
そんな皆の記憶から消えた『町オリジナルの音頭』ですが、その作曲者は 今は亡き私の祖父だったりします(笑)
(…元教師ということもあり、他にも ” 幼稚園の園歌 ” 等々の作曲や作詞もやってたみたいです。)
それでは、今週も締めの吃音短歌(注5)を…
2分経ち 微笑み添えて 「おしゃべりね」 君の言葉で 赤くなる頬
【注釈】
注1)小説『成瀬は天下を取りにいく』
書籍情報は下記(新潮社のHP)にて↓
注2)江州音頭(ごうしゅうおんど)
詳しくは、滋賀県の公式HPにて↓
注3)町オリジナルの音頭
当時、滋賀県出身の民謡歌手によってレコーディングされたデモテープ(カセットテープ)が、全戸に無料配布されました(笑)
注4)平成の大合併
平成 11 年(1999年)以来、基礎自治体の行財政基盤確立のため、全国的に市町村合併が推進されたことで起こった、地方自治体の統廃合のこと。
詳しくは、総務省の資料{平成22年(2010年)3月5日付}にて↓
https://www.soumu.go.jp/gapei/pdf/100311_1.pdf
注5)吃音短歌
筆者のハンディキャップでもある、吃音{きつおん}(注6)を題材にして詠んだ短歌。
この中では『「吃音」「どもり」の単語は使用しない』という自分ルールを適用中。
注6)吃音(きつおん)
かつては「吃り(どもり)」とも呼ばれた発話障害の一種。症状としては連発、伸発、難発があり、日本国内では人口の1%程度が吃音とのこと。