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Vol.3 映画「サイダーのように言葉が湧き上がる」(ネタバレ無し)。

もし私が、人から
『あなたにとっての「2021年夏映画」は何ですか?』
…と問われたら、迷わず
『「返校 言葉が消えた日(注1)」と「サイダーのように言葉が湧き上がる」の2本です。』
…と答えることでしょう。
(※そんな機会は未来永劫ありませんけどね!)

ちなみに、挙げた2作品の内「サイダーのように言葉が湧き上がる」がEテレにて、2023年8月26日土曜日の21時30分~放送予定らしいので、今回は(ネタバレ無しで)その魅力の一端を語ってみたいと思います。
まずは30秒の予告編をどうぞ!


『はいはい、若い男女が出会うボーイ・ミーツ・ガールものでしょ?よくあるやつでしょ?』

…と一刀両断されそうですが、それで片づけるには惜しい魅力が詰まってますので、ちょっと待って頂きたい!
確かに『”俳句好きの少年”と”ネット配信してる少女”の出会い』がお話の主な軸なのですが、例えば…

魅力①「独特のビジュアル感」
まるで、イラストレーターの わたせせいぞうさん(注2)の作品を彷彿とさせるような絵で構成されたアニメーションは見事の一言。
早い話、日本を代表するアニメーション監督の方々(例えば、宮崎駿さんとか、細田守さんとか、新海誠さん等々)が作り出しそうな、どのビジュアルとも全く異なるビジュアルなのです。
それだけでも「まだまだアニメーション表現には可能性が秘められている」とワクワクするじゃないですか!(←※ワクワクしなかったら、ごめんなさい!)

魅力①´「作品世界の舞台立て」
お話の主な舞台が「地方都市の郊外にありそうなショッピングモール」というのも、絶妙なリアリティがあって良い所!
ちなみに、私はこの作品をシネコン(映画館)で鑑賞したのですが、そこは『「地方都市の田園風景にそびえたつショッピングモール」の中にあるシネコン』だったので、作品への没入感がより深くなった様に感じました(笑)

魅力②「表現のバリエーションや可能性を描いた作品」
当初、主人公のチェリーくんは、人付き合いが苦手な事に加え「俳句は字で書き、目で読む物」と考えて、自ら詠んだ句を人前で音読することすら嫌がっているのですが、句を詠むたびにSNSには発信して「いいね!」がつかずに落ち込むという、なかなか面倒くさいキャラクターです。{←なぜだろう、親近感がわくぞ(笑)}

そんな彼が、人との出会いや、思わぬ経験を経てどう変化するのか…という事を描いた作品でもあるのですが、その過程は『「表現のバリエーションや可能性」について描かれている』様にも見えます。
例えば、チェリーの悪友 バービー ビーバー(☆)が行う『タギング{落書き}(注3)』という表現。(←※もちろん、許可とらずに自らの所有物でない建造物等々にタギングするのは違法行為ですよ。)
または、「文字の作品を、口で読み上げる」という『ポエトリーリーディング(注4)』にも通じる表現。
あるいは、「人に想いを伝える」という、シンプルかつ基本的な表現。

それらの魅力や意義に、主人公がどう気付き、どう昇華していくのか?それもこの作品の見どころです。

…まぁ、他にも隠し玉的な見どころはあるのですが、ネタバレにつながりそうですし、なにより私の文章力の貧弱さが一層バレそうなので、今週はこの辺で。

(ちなみに、主人公お二人{チェリーくんとスマイルさん}の前史的な周辺情報は、あまり描かれないまま話は進みますが、私は気になりませんでした。
もしかすると私は「途中から始まって、途中で終わる話」が好きなのかもしれません 笑 )

それでは、今週の締めくくりとして、恋愛ネタっぽい!?吃音短歌(注5)を添えさせて頂きます。

「好......き...で......す...」と ノイズの様に 絞り出し 震える僕の 頬触れる君


【注釈】

注1)映画『返校 言葉が消えた日』

同名ホラーゲームの映画化作品。
独裁政権下の1962年の台湾を舞台に、廃墟と化した高校の教室で目覚めた女子高生のファン・レイシンが、失った記憶と、事の真相を探っていくダーク・ミステリー。

注2)わたせせいぞう

漫画家、イラストレーター。
代表作は『ハートカクテル』。

注3)タギング

街角に、マーカーやスプレーで文字やサインを書くストリートパフォーマンス、グラフィックアートの一種。
(もちろん、許可とらずに自らの所有物でない建造物等々にタギングするのは違法行為。)
タギングが劇中出てくる映画としては『「スパイダーバース」シリーズ』が有名。

注4)ポエトリーリーディング

詩を朗読するアート形態。
時としてビートに乗せたり、音楽に乗せたり、様々なスタイルが存在する(らしい)。

注5)吃音短歌

筆者のハンディキャップでもある、吃音{きつおん}(注6)を題材にして詠んだ短歌。
この中では『「吃音」「どもり」の単語は使用しない』という自分ルールを適用中。

注6)吃音(きつおん)

かつては「吃り(どもり)」とも呼ばれた発話障害の一種。症状としては連発、伸発、難発があり、日本国内では人口の1%程度が吃音とのこと。

【訂正履歴】

☆部『×誤:バービー  → ○正:ビーバー』
2023年 8月29日訂正

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