「人」を売り込むな
これからは、モノじゃなくてヒトの時代だよ。なんてことを言う声がちらほら聞こえ始めましたが、本当にそうでしょうか。アイドルだって、人気は沸騰しても、落ちるときはあっという間。トレンドに乗ったヒトが残り続ける例ってどれだけありますか?っていう話
1、買いたいのは「ヒト」じゃない
あなたが、和食が大好きで、ご飯のオトモに目がない人だとする。なにか良い商品ないかなと思っていたところで、偶然「とてもおいしそうな漬物」を見つけたとする。その時に、惹かれるのは何でしょうか。
「漬物」の見た目やどんなものかの説明
漬物を「つくる人」
漬物を作っている「場所」
漬物の「パッケージ」
もちろん、購入前の取捨選別において、どこで、どんな姿で売っているかは、振り分けの条件にはなるでしょう。「とてもおいしいもの」を探す時に、「超激安ディスカウントショップ」で探そうとは思わないように、「売っている場所」は商品の一部を形成する情報の1つ。そして、パッケージとしての色使いや持った時に形や質感も、中身を表象する構成要素にもなりえます。
でも、購入し、食べるときに、これらの情報は記憶に残っているでしょうか。いつまでも残り続けるでしょうか。それが決定的な要素になるでしょうか。
「おいしかった」と思うのは「中身」
「また食べたい」と思うのも「中身」
商品自体こそが、商品価値を決める。その周りにあるものは、いくら貢献したとしても、「助演」の域を超えることはないのです。
ましてや、作っている「ヒト」で売り込もうとするなんて、商品価値から目をそらし、それこそルッキズムで優劣をつけさせるようなもの。惑わせる購入の仕方といっても過言ではないのです。
2,そもそも「営業」は将来いらなくなる
すでにその片鱗は動き始めていますが、あなたがAmazonで購入する時に、どんな商品が画面上に出てくるでしょうか。購買履歴に基づいた嗜好性や、閲覧履歴に基づく関連性、さらには、ニュースサイトやSNSでの興味関心やクリックの行動履歴など、全てを包括した形で、あなたに最適なものをマッチングしていく。
膨大な商品やサービスがある中で、最適な商品を最適なタイミングで提案するロジックやAIはどんどん進化しているのです。
とすれば、合わない商品に出会うことはどんどん減っていく世界にいくし、無理にそこに入りこもうとしても、迷惑メールフォルダのように、門前払いされる世界がやってくるでしょう。そこのには「営業」というヒトがヒトを売り込んだり、モノを売り込もうとする世界は断絶される社会。
それよりも、「適した顧客」がどのぐらいいて、「適したモノ」はどうあるべきか。その市場分析と商品開発こそが、これからの社会で事業を行う上で必要なもの。
のどが渇いたひとに、きな粉を勧めても、売れないように(それを売る技術があるというのはまた別な話)、「最適化」が自動でマッチングされていく世界は遠くないのです。
3、「商品力」を磨く、「開発力」を磨く。
では、そんな世の中を渡り歩くのに大切なこと。それは「ニーズやウォンツ」を正しく理解すること。そして、それにあった「商品」を「作り上げる」能力を持つこと。
でも、ネットの世界とちがって、例えば、農業などの一次生産物は、「すぐに」つくることが難しい世界。だからこそ、「計画」は重要で、それにあった「ものづくり」としての生産技術・栽培技術が最低ライン。その上で「世の中」を観察じっくり観察することで、欲しいヒトに商品が行き届くような計画ができるというもの。
マッチングはECなり、市場がやってくれる分けですから、その先にあるニーズから逆算したものを計画し、微調整できる能力こそが、求められるものです。
だから、「ヒト」を売り込む余地なんてない。顔出しして、産直売場で野菜が売れるなんて言うのは、勘違いも甚だしい。見た目がいいものをその場として「よりすぐり」する条件にすぎず、人柄に惚れて売れてるわけではもちろんない。マイナスな感情が生まれなければ、多くの場合は、「ヒト」はそこまで商品売買には介入されないのです。
そして、「自分自身で直接売る」ときは、相手のが欲しい「タイミングと量」を把握しておくこと。それこそが、AIにはできない「配慮や思いやり」であり、単なる商取引にプラスルファの価値をもたらすもの。
それであっても消費者は「行為」に価値を見出しているのであって、人柄や性格、見た目が問うているわけではないのです。
勘違いしないでください。「ヒト」を売り込む必要はない。表に出る必要もなければ、自分の性格と異なる振る舞いをする必要もない。ただ、そこに必要なことは「相手への配慮」という行為そのものだということを…。
無人販売所に売れているところと、売れていないところがある。その差が何かを考えてみて下さい。ヒトが介在せずとも、売れます。そして、その売れている無人販売所には、必ず「見せ方、買い方、食べ方…」あらゆるところに配慮がいきとどいているのですから。見えないところの差に気付けるか。
商売の差というのは、一見すると見えないところにこそ、大きな差が存在しているのです。
ヒトでごまかすな!