年長児、お別れ遠足のおべんとうの話
5年前、娘の初遠足の日。
離乳食終わりたてでろくに食べられるものもない中必死で弁当を作り、さぁ出発、と助手席に置いたリュックの底は、水筒から漏れたお茶で盛大に濡れていた。
たかが復帰して2ヶ月弱なのに、溜まった何かが決壊し、運転席で号泣したのを覚えている。
生まれて初めての遠足がこんな体たらくで、娘に申し訳ない、と思った。
先日、お迎えに行ったら、先生に
「明日お別れ遠足ですね!」
と言われた。
ちゃんと、数週間前にプリントで予告されていたのに、完全に忘れていた。
先生方に、一日の終わりに徒労感を覚えさせてしまった。
最悪だ。本当にすみません。
スーパーに向かう車内でお弁当のリクエストを聞き、唐揚げ用のもも肉、プチトマト、ブロッコリー等々を急いでカゴに入れ帰宅。
唐揚げを揚げ、夕飯の支度をしつつ、お弁当箱と、この5年で溜まったお弁当デコグッズを引っ張り出して並べた。
翌朝、娘たちは自主的に、ハンカチ・ティッシュ・濡れおしぼり・ゴミ袋・シートを用意してくれた。
娘たちの機動力に甘え、何とかお弁当を作り上げ、今回は写真を撮る余裕まであった。
入園から5年、計算すれば、2人分20個弱のお弁当を作ったことになる。
嘘みたいだ。計算間違いかと思った。
5~6回しか作った記憶がない。
(毎日お弁当を作る園に通わせている親御さんからしたら、遊びのような回数だが、要領も準備も悪い私からしたら、毎回が一大事だった。)
娘たちの口には大きすぎるロールパンサンドを作ってしまったこと。
返ってきた弁当箱に、入れた覚えのない謎の唐揚げが入っていたこと。
断片的な記憶しかない。
多分だけど、記憶に残らなかったのは、私が出来上がったお弁当を見るのは一瞬で、返って来る弁当箱は(謎唐揚げ事件を除き)毎回空っぽだったから、かもしれない。
年々弁当箱は大きくなって詰めやすくなり、
唐揚げ・ブロッコリー・プチトマトさえあれば成立することを覚えた。
堂々と、スーパーのお惣菜のマカロニサラダを詰める。
唐揚げだけは、私が作った方が美味しい自信があるから、面倒くさいけど揚げた。
キャラ弁を作るセンスなどない母で、申し訳なかったけれど。
出発前、水筒の蓋を、これでもかときつく締める。
もうリュック濡らしたりさせない。
無事保育園に送り届けたあと、車内でCreepy Nutsの「のびしろ」を聴く。
娘たちの盛大なのびしろと、
私のささやかなのびしろと、
今後も事ある毎に作り続けるだろうお弁当を思い、化粧を崩さないよう、ギリギリ泣くのを堪えながら、運転に集中した。
そして、ブロッコリーにマヨネーズをかけ忘れてしまったことを思い出した。
相変わらずポンコツである。
しかし、娘たちよ、君たちの応用力があればマカロニサラダのマヨネーズソースを付けて食べる事を思い付くはずだ。
頑張れ〜、とひとごとのようにエールを送った。