針を置いたらあの海へ 第5話
うちのカフェは、十九時にもなれば、お客さんはほぼ、いや全く居なくなる。ばあちゃんのお友達の常連さんたちは、夕飯の支度なり、買い出しなりがあるから。それでもばあちゃんは、毎日二十時まで店を閉めない。もしかしたらふらりと休みたくなる人もいるかもしれないから、と。
自前の土地で、家賃がかからないからこそのゆとりだとは思う。
そんな、閑散とした十九時に、予告通りつやつやのポニーテールの女子高生が来店した。亡くなった常連のアケミさんの孫、川辺瑠衣。俺の中高の同級生で、同じ美術部