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江戸時代の人々から学ぶ、サステナブルなアイデアvol.11

2030 年までにSDGs17 の目標を達成するため私たちにできることはなにか? わたしたちは、そのヒントを江戸時代の暮らしの中に見つけました。太陽と植物の恩恵を活用し豊かな物資とエネルギーをつくり出していた江戸時代の人々。衣食住のあらゆる面でリサイクル、リユースに基づいた循環型社会が築かれていました。その江戸時代の知恵を活かし、日常でできるアクションをはじめましょう。


<参考文献>
阪急コミュニケーションズ 江戸に学ぶエコ生活術
アズビー・ブラウン:著 幾島幸子:訳


江戸時代の武士の生活は、自給自足を大切にしていました。武士の家庭にはかなり大きな土地が与えられおり、家計が苦しくなれば庭先で家庭菜園に励み、自家用の野菜や果樹、薬草を栽培しました。家庭菜園をしても、武士としての品位が損なわれるといったようなことはなく、家族全員で取り組んでいました。菜園では、堆肥の山や池、農具を収納する物置、つる植物を這わせる棚、日よけなどが設けられ、水の循環システムも整備されていました。
また、敷地内には様々な果樹が植えられており、松や栗、梅などの木が実をつけるとともに、景観の一部として庭に溶け込んでいました。果樹園のような庭では、柿や桃、ビワ、ミカンなどが四季折々に収穫され、家庭の食卓を豊かにしていました。武士たちは、収穫した作物を親戚や隣近所と交換することもありましたが、売ることはしませんでした。それは、武士にとって自給自足があくまでも、経済的苦境をしのぐ手段だったからです。
現代の自給自足というとまず思い浮かぶのは農家などですが、畑を借りて家庭菜園を楽しむ一般の人たちも増えています。今回は、庭やベランダで自給自足を楽しめるアイデアを紹介します。

「野菜を育てよう」

庭やベランダで野菜を育てることは、簡単にできる自給自足の活動です。食卓が旬の野菜で彩られ気持ちも明るくなるでしょう。一般家庭でできる野菜の育て方を紹介します。

●庭で
〔土壌準備〕
良質な土壌を用意し、堆肥を混ぜて栄養を補給します。
〔野菜の選択〕
トマト、ナス、レタス、ホウレンソウなど、初心者に向いた野菜の種もしくは苗を選びましょう。
〔水やりと日当たり〕
適度な水やりを心掛け、日当たりの良い場所を選びます。

●ベランダで
〔コンテナ栽培〕
鉢やプランターを使用し、ベビーリーフやハーブなど小型の野菜を育ててみましょう。
〔排水性〕
鉢底に石を敷くなどして排水性を確保します。
〔スペースの有効活用〕
ラティスや棚を使い、縦方向にもスペースを活用します。

「果樹を植えよう」

現代でも果樹を植えることは、多くの利点があります。まず、果樹が育つことで、その花の鮮やかな色や香りを楽しむことができます。加えて、収穫された果物を食卓に並べることで、自然の恵みを直接享受できます。
四季折々の果実を楽しむためには、季節ごとに収穫できる果樹を組み合わせて植えると良いでしょう。庭・ベランダでそれぞれおすすめの果樹を育てるプランを紹介します。

●庭で

〔早春や初夏に〕
梅: 早春に花を咲かせ、初夏にかけて実をつけます。梅干しや梅酒などに加工可能です。
〔初夏から〕
ビワ: 甘くてジューシーな果実が楽しめます。
〔秋から〕
柿: 甘柿と渋柿の両方が楽しめます。
〔秋から冬に〕
ミカン: 冬の果物の代表で、甘くてビタミン豊富な果実が楽しめます。

〔育て方のポイント〕
日当たり: 果樹は日当たりの良い場所を選びましょう。
スペース: 果樹の成長を考慮し、植え付ける際の左右・上下の間隔を十分に取るようにしましょう。
土壌: それぞれの果樹に適した土壌を選び、必要に応じて土壌改良を行います。

●ベランダで

コンテナや鉢植えで育てられる小型の果樹を選ぶと良いでしょう。
〔冬から初夏まで〕
イチゴ: 鉢植えで育てやすく、スペースが限られているベランダでも楽しめます。
〔夏〕
ブルーベリー: 酸性土壌を好むので、専用の土を使用すると良いです。
〔年中〕
レモン: 四季咲きで年中開花し、開花後約半年で収穫できることが多いです。グリーンレモンと黄色いレモンでも収穫の適期が異なります。

〔育て方のポイント〕
・鉢: 果樹の種類に応じたサイズの鉢を選び、排水性を確保します。
・日当たりと風通し: 果樹が十分な日光を浴びられるように配置し、風通しも良くして病害虫を防ぎます。
・土壌と栄養: 鉢植え用の良質な培養土を使用し、定期的に施肥を行います。

「自治体の自給自足」

災害など不測な事態が起きた場合でも、人々に必要な食料が行き渡るような仕組みを確立することを「食料安全保障」といいます。それを達成するためにはいくつかのアプローチがありますが、食料自給率が低い日本では国内農業生産、つまり自給自足の増大が重大な課題であり、食料の自給自足は個人だけではなく、国や自治体レベルで取り組むべきテーマだといえます。国は平成27年4月に「都市農業振興基本法」を制定し、地方公共団体やその関係者と相互に連携を図り協力することを推進しました。ここでは、自治体や都市で現在行われている活動を紹介します。

〔公共の場への果樹植栽〕
一部の自治体では、公園などの公共の場に果物や実のなる木を植え、食糧不足に備えるとともに、住民にも自宅での果樹栽培を奨励しています。神戸市では公園や市有地に「エディブルパーク(食べられる公園)」を設け、実験を始動しています。

〔空き地の農地転用〕
岐阜県関市では、ボランティアの力を借りて空き地を農地に変える事業が進められています。これにより、緊急時の食料供給を支える体制を整えています。

都市農業には、食物輸送による排出ガスの削減、水質の浄化、ヒートアイランド現象の緩和といったメリットがあります。
居住する自治体に対して市民として提案することも、活動のひとつでしょう。

みなさんは「パーマカルチャー」という言葉をご存知でしょうか。
パーマカルチャーとは、パーマネント(永続性)、アグリカルチャー(農業)、カルチャー(文化)を組み合わせた造語で、永続可能な循環型農業を基に、人と自然が共に豊かになる関係性を築くデザイン手法を意味します。この考え方に則ることで、自然と人間が搾取し合わずに共存できる社会システムを目指すことができます。「パーマカルチャー」の基で庭やベランダでもできるアイデアを紹介します。

〔コンパニオンプランティング〕
互いに相性の良い植物を一緒に植えることで、病害虫を自然に防ぐ・成長を促すなどの効果があり、農薬などを減らすことにつながります。例えばトマトは、バジル・コリアンダー・マリーゴールドなどが良い組み合わせといわれています。

〔マルチング〕
土壌の表面を落ち葉(有機物)などで覆うことで、水分の蒸発を防ぎ、雑草を抑制します。

〔レインウォーターキャッチメント〕
雨水を貯めて、植物への水やりに利用します。これにより水資源の節約が可能です。


<イラスト・画像素材>
PIXTA



江戸時代の武士の生活は、自給自足を基盤としたもので、食生活の面では庭先で野菜や果樹を育て、食料を自ら調達していました。この歴史的背景を現代にも活かし、家庭菜園や都市農業の推進が行われています。特に、公園など公共の場に果樹を植える取り組みや、空き地を農地に転用するプロジェクトは、食料不足や災害時への備えとして有効です。みなさんも庭やベランダで野菜や果実をつくってみてはいかがでしょうか?自給自足という観点だけではなく、植物を身近に感じ五感で楽しむ良いきっかけになるかもしれません。野菜や果樹は、各地の気温や天気、土壌によって育て方が異なります。みなさんの地域の特性を調べながら自給自足にチャレンジしてみてください。
もちろん周りの人や友人、家族と話し合って、現代ならではの新たなアイデアを出すことも大切です。わたしたちも、みなさんも、サステナブルな意識を常にもって行動し続けていきましょう。

※本来、【自給自足】とは「必要とする物を他に求めず、すべて自分でまかない足りるようにすること。自分で自分に供給し、自分を足らせ満たす意から。」とあります。武士が家庭菜園で野菜や果物をつくっていても、米や味噌、魚は自給自足ではなかったかもしれません。今回は参考文献を基に「自給自足」という言葉を用い、コラムを作成しています。


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