【SCO GROUP Today#1】あなたが思っているよりはるかに怖い「歯周病」
私の感覚ですが、「歯周病って聞いたことある?」と質問をして、聞いたことないと答える人はほぼいません。
ほとんどの人が聞いたことがあると答え、なんならちゃんと漢字で「歯周病」と書くこともできる。
テレビCMの効果もあってか、「日本人は歯周病が多い」ということもわかっている人が少なくありません。
しかし
「歯周病って、どんな病気?」と聞いて、正しく答えられる人は
残念ながらほとんどいません。
「虫歯...みたいなやつ...」「なんか歯茎から血が出るやつ...」「口が臭くなるやつ...」
全然違う、とは言わないまでも、歯周病の本質をどれも答えていません。
日本人の30代においては3人に2人が歯周病と言われているにも関わらず
ほとんどの人がその本質や、怖さを知らないのです。
言い換えれば、自分が持っているかもしれない病気を
「大したことない」と思っていると言っても言い過ぎではないでしょう。
しかし、もし歯周病を大したことのない病気だと思っているならば
それは大きな間違いです。
アメリカには”Floss or Die”(フロスか死か)という言葉があります。
"歯ブラシやデンタルフロスをきちんと使い、お口の中を健康に保って長生きしますか?それとも、それを怠けて病気にかかって早く死にますか?"という意味です。
「歯磨きを怠けて歯周病になることはわかるけど、まさか死にはしないでしょう? 」
と思われるかもしれませんが、実は歯周病が心臓病(心内膜炎、狭心症、心筋梗塞)や脳卒中、肺炎などの全身の病気の発症と関係があることがわかってきました。
歯周病を甘く見ていると死に至る。
決して大袈裟ではありません。
だからこそ「歯周病」というものを正しく理解してほしい。
そう思います。
1.歯周病とはどんな病気か
歯周病とはどんな病気なのか?
「歯茎に病気?」
間違いではありません。
しかし、もう少し正確にいうと「歯を支える組織(歯茎や骨)の炎症によって引き起こされる病気です。
そう、この「病気である」ということを皆さんに意識してもらえると嬉しいです。
そして歯周病は段階が進んでしまうと、歯茎で炎症が起こり、出血、さらに進んでいくと、歯茎の中の骨(歯槽骨)が破壊されてしまい、歯を支えるものが次第になくなってしまいます。さらには歯がぐらつき始めて、ある日抜けてしまう。そんな病気なのです。
しかも歯周病は「サイレントキラー」とも呼ばれます。虫歯菌と違って、歯周病菌は歯を溶かしたりすることはありません。ですから今説明した段階の進行の過程で、痛みが発生することはほとんどないのです。
ですから気がつかないうちに何年もかけて進行し、若いうちは問題ないように見えて、ある日ぽろっと歯が抜けてしまうのです。
それゆえに日本における歯を失う原因の第一位に「歯周病」が君臨し続けているのです。
歯周病は痛みがない、とお話ししましたが、痛みが伴う時もあります。
それは歯周病後期。歯槽骨が破壊されてしまい、食事をするたびに歯がぐらつくようになってくると、激しい痛みを感じる人も少なくありません。
しかし、この段階になると残念なことに、もはや手遅れ。壊された骨が再生することはないので、歯科医院に行っても、入れ歯を作るしかありません。しかも、骨が残されてないので、ぴったりと合う入れ歯を作ることができず、すぐに、外れてしまうような入れ歯になってしまうのです。
そして
これだけで終わってくれるのであれば、「死にいたる」なんて書き方はしません。
体のさまざまな場所で歯周病菌は害を撒き散らしている。
ここからが歯周病の本当に恐ろしいところです。
2.歯周病は全身疾患、恐ろしい病気に結びついていく
糖尿病、早産・未熟児出産、関節リウマチ、誤嚥性肺炎、細菌性心膜炎(心臓病)、脳梗塞、心筋梗塞、末梢動脈疾患、アルツハイマー、骨粗鬆症、胃炎・大腸炎、湿疹、鬱、肥満
これらは歯周病が関連していると言われる病気です。
正確にいうと
・歯周病の「炎症」が作る病気:糖尿病、早産・未熟児出産、関節リウマチ
・「歯周病」も原因となる病気:誤嚥性肺炎、細菌性心膜炎(心臓病)、脳梗塞、心筋梗塞、末梢動脈疾患、アルツハイマー、骨粗鬆症、胃炎・大腸炎、湿疹、鬱、肥満
・歯周病との関連が示唆されている病気:骨粗鬆症、胃炎・大腸炎、湿疹、鬱、肥満
という分け方もできます。
歯周病自体も問題ですが、歯周病を入り口にして、これだけの病気に広がっていきます。
全てを細かく説明することは大変なのでかいつまんでお話ししますが
例えば、糖尿病と歯周病は非常に密接な関係があると言われています。
糖尿病の患者は通常の2倍も歯周病になりやすくなると言われていますし、糖尿病が悪化すれば歯周病の進行もより進みます。
さらに歯周病が進行すると糖尿病もより改善が難しくなり、合併症のリスクもより高まることがわかっています。
逆に歯周病が改善すると糖尿病も改善していくことが認められるなど、どちらの病気にとっても無視することのできない関係なのです。
もう一つ、早産や未熟児出産などに与える歯周病の影響も知っておいてほしいところです。
そもそも妊娠中は女性ホルモンの影響で唾液の分泌量が減り、歯周病になりやすいと言われていますが
妊娠している女性が歯周病に罹患している場合、早産や未熟児出産につながるリスクは通常の7〜8倍を超えると言われており、アルコールやタバコよりもはるかに高い数字だと言われています。
また肥満についてもそうです。
歯周病と肥満。一見すると結びつかないような感じがしますよね。
本当に関係あるの?とピンとこない感じがありますよね。
しかし最近は特に「歯周病から肥満を引き起こす」ことが明らかになってきています。
歯周病は細菌感染が主な原因ですが、その細菌が出す毒素(LPS)や炎症により出る化学物質が全身の脂質代謝に影響を及ぼします。
マウスの実験では、LPSを皮下に埋め込むと、肝臓や脂肪組織に脂肪の沈着が起き、体重も増加したとの結果が出ていたりもします。
つまり何が言いたいかというと
皆さんは歯周病の本当の怖さをほとんど正確に知らないということです。
「歯周病を予防しましょう」「お口の中を清潔に健康に保ちましょう」
そう言われてもなかなか習慣が変わらなかったり、危機感を感じないのは
その結果引き起こされる病気をイメージできていないから
その病気によってどのように生活が変わってしまうかがイメージできていないから
歯周病は治らない病気ではありません。
しかし場合によっては手遅れになってしまうこともあります。
一度抜けてしまった歯や健康は取り戻せません。
取り戻せるものを取り戻せるうちに、なんとかしたいものですよね。
まずは知ることから始めていきましょう。