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物流2024年問題振り返り


総括

年、比較的最初から最後まで世間の関心を集めた物流2024年問題。
業界に身を置くものとしての関心は高かったが、
結論としては、「大きな問題めいたことを感じることができなかった」
いくつか原因を列挙し、並行して捉えた別の課題を提示し、2025年以降の関心事項として継続観察していきたい。

一年を通して荷物の滞留があったのか?

この点に関して、現在一企業の担当をしているからか、多くの情報を入手できなかった。もちろん自社の現場でも「車が手配できない」的な話はよく聞いたし、多くの関係者が「荷待ち時間」というワードを口々にしていた。
※荷待ち時間=空っぽのトラックが倉庫などの拠点について、運ぶ予定の荷物を積み終わるまでの時間や、荷台に運ぶ荷物満載で目的地についた後、倉庫などに着車着岸させてもらい、荷物を下ろし終わるまでの時間のこと。
現状は荷待ち時間は2時間以内という努力目標が謳われているが、今まで放置されていたこの非効率性にメスが入ったことが、年間を通しては足りない走行時間の捻出に繋がったのではないか?

ドライバーさんの働き方改革は実現したのか?

この点も運送業を直接していないこともあって、確かな情報は入手できていない。昨年冬の段階では拠点に出入りする多くのドライバーさんが、残業代での稼ぎが目減りすることとなり、生活不安に近い話を立ち話でよくしていたのは記憶している。
一方で、たまたま自分が拠点の採用担当をしていて、数十社の人材会社と商談及び情報収集をする過程で、ドライバーさんの転職がそこまで逼迫していた印象はなく、むしろフォークリフトオペレーターの方が人手不足かつ転職が活発で(トラックドライバーと比して非正規率が高い)、推測だが2024年問題を機に退職してしまったドライバーが多かった分、転職市場が思ったほど活発化しなかったのではないか?

業界内の効率アップの施策は驚くペースで進んでいる

職種柄、毎日のように業界ニュースをおっかけた一年だったが、各業界のリーディングカンパニー、とりわけ寡占化というより業界大手が明確化しているような業界(ビール業界等)は、業界内での協力が進んでいる印象だった。また大手物流企業は、それぞれに得意分野を見出し、多くの効率化施策を実装したり、実証実験をしていた。
また無人フォークリフトなどの実証実験が盛んになるだけでなく、その実用性の向上にも目を見張るものがある。既に多くの拠点で無人フォークリフトは走っているが、昨今は画像解析のAIの進化がすさまじいので、数年後には物流倉庫で無人フォークリフトが居ても特に不思議ではない感覚となり、3年~5年もすればルンバレベルで当たり前となり、倉庫内の平らな床ではない、道路や工場敷地内等のアスファルト上でも、無人フォークリフトが縦横無尽に走る光景が当たり前になると予想する。
この先「人間もロボットも適材適所で適切投資」できる賢い企業と、「巨大投資」ができる超大手企業や、その投資設備の中で人を手当する企業のみが生き残り、従来型の荷主も自社も中堅どころ以下、あるいは地域特化などの競合にさらされづらい企業は投資機会や適切な導入を学ぶ機会を逃して、一気に淘汰されるのではないか?と予想する。
既に物流業界でもMAが盛んになっているが、今後MAを含めて「大きな資本を少ない人間の意志決定で回す」のが物流業界での勝ち筋になる予感がある。

結論

図らずも自分の観測範囲では物流2024年問題が、そのまま物流危機や崩壊を予見させるような事象は見かけなかった。むしろピンチをチャンスに変えたり、これを機に悪しき慣習にメスが入ったことも大きいように思う。またマスコミが相変わらず世間に誤解を与えているようだが、今回の2024年問題=残業時間の上限の厳格化で、影響が懸念されていたのは幹線輸送といわれる長距離を走るパターン(一気に走れない)や、スーパーなどに毎日届け続けるコールドチェーン(特殊設備なのでもともと余力がない)であり、主にAmazonが独自の物流網を多くの個人事業主で賄うECの宅配や、JP・ヤマト等が行ういわゆる宅配便は問題ではない(荷物の個数なのか手間なのか走る距離なのか基準は難しいが宅配の重要度は20%程度で、かつ個人事業主は対象外)。
逆にいうと物流業界は相変わらず情報非対称性=つまりみんなが誤解している業界で、そこを突くことでまだまだ飛躍的な改善の見込める業界であることを、2024年の多くのビジネスモデルや業界スキームのアップデートに感じた。






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