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海と電車と「千と千尋の神隠し」

小さな駅に降り立つと、潮の香りがする。小樽から札幌へ帰る旅の途中で、銭箱という駅で下車した。駅の前にはお店がたった三軒だけ。

その一つはは、小さなネパールカレーのお店で、海に面した板木のテラスに木の椅子とテーブル、そして日除けのパラソルが置いてある。見渡す限りの海。手を伸ばせば届きそうな距離だ。その海が見渡せるテラスの端に腰掛けてビールとカレーとタンドーリチキンを注文する。

海風に吹かれながら、目の前に大きく広がる波の静かな水面を見る。
客は少なくて、とても静かだ。波の音も静かで、その合間に海沿いを行く列車の音が聞こえる。ちょうどカーブにあたるのか、電車が汽笛を鳴らす。そのピーっという音が静かな波の音に混ざって、幻想的な雰囲気を醸し出す。

それは「千と千尋の神隠し」で観た、水の上を滑るように走る列車のシーンだ。千尋と顔なしが二人並んで列車に腰掛けている。窓からは見渡す海。
あのシーンを思い起こすようなそんな錯覚にとらわれていると、鉄板の上でジュージューっと音を立てるタンドーリチキンが運ばれてきた。そしてよく冷えたビール。

インド風のカレーも実においしい。この店はネパールのカレーの店なのだけれど、北インド風のカレーとどう違うのかはわからない。とにかくカレーもガーリックナンもおいしい。

札幌に旅行に来ていて、気まぐれに寄った小さな町「銭箱」は思いもかけぬほど静寂な気持ちにさせてくれる。海水浴と海を見ること以外、することはない。何にもしない。ただただ静かに時が流れていく。

時にはこんな旅もいいものだ。


画像引用:千と千尋の神隠し





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