起業家へ出資する番組の落とし穴
『令和の虎』や『メイクマネーサバイブ』など、新ビジネスを企画する起業家が投資を集める番組がある。起業家たちが資金調達をかけてピッチバトルを繰り広げるもの。これは米国の大ヒット番組「シャーク・タンク」の二番煎じで、ところが、もっともその大きな違いは利益配分だ。
「シャーク・タンク」でも、起業家のプレゼンが受け入れられれば資金が融資される。大きく違うのは、その場でビジネスの評価額と投資額、利益分配の割合までが同意されることだ。
投資額だけではなく、利益の分配率まで決められる。それがなくては、資金調達してもらったものの、利益の大部分を投資家に持っていかれてしまうこともでてくる。
利益分売が『令和の虎』や『メイクマネーサバイブ』ではどうなっているのだろうと調べてみたけれど、出てくるのはヤラセ番組だの、「令和の虎は終わった」みたいな記事ばかり。
一番大切な評価額の設定や利益配分が、公表されて事前に同意されることなしに、パートナーシップや投資事業は語れないのではないか。
毎回『メイクマネーサバイブ』の冒頭にはいるアナウンス、"Deal or Break"(取引か決裂か)は、その英語の発音が悪くて、アメリカ人の友人は聞き取れない。しかも、『メイクマネーサバイブ』は英単語を寄せ集めただけの造語であって英語としては正しくない。
日本株への世界の投資家たちの注目が高まっている中、どうせならもっと海外の投資家を募れるだけの土台があってもいいのではないか。
参考までに「シャーク・タンク」の平均的な取引額はいくらなものか。ハレ・テクコというエンジェル投資家(そして超ファン)が、2009年以降の全エピソードの極めて詳細なデータを何百時間もかけて収集し、その成果をThe Hustleと共有している。
その結果によると、222の放送回、895のピッチ、499のディール、1億4380万ドルの投資資金、10億ドル近い企業評価額ということらしい。
そして56%の出場者が取引に成功しているらしい。
ところがどっこい、統計的に女性の割合が低く、取引額も小さい。
アメリカでもそうなのだから、性差異の小ささがG7で再開の日本はなおさらだろう。
女性の出場者は、男性の出場者よりもはるかに小さな取引を要求し、受け取り額も少ない(214,000ドル対324,000ドルで女性の平均受取額は男性の平均受取額の2/3しかない)。また、より多くの株式を犠牲にし(30%対26%)、そして23%低い評価額で立ち去る。
これは、よく言われる(そしてほとんど否定されている)、男性と女性のビジネスパーソンの間の「自信の差」によるものだと考える人もいる。
どちらにしても、投資家が資金を出すのはもちろんリターンを求めるからであって、それなのにリターン分配の約束がディールがあった時点で行われていないのは不思議だ。それこそがビジネスの肝ではないのか。