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女らしさの神話、その欺瞞を表した「女性の第二の性」


男は女を「抱く」と言うけれど、女が男を「抱く」とはまず言わない。女は男に「抱かれる」という言い方をする。この違いはなんだろう。行動する側と待つ側。能動と受容。両者の立ち位置は平等ではない。

高度経済成長期、社会がどんどん豊になっていくその過程で、男たちは仕事に没頭し、女性たちは取り残されたように悶々とした気持ちを溜めていった。家父長制の社会において「働く戦士たち」である男を支えるべく、女たちは常に家庭を護る役割りを与えられてきたのだ。 

そんな性分担のアンバランスに声を上げたのがアメリカのベティ・フリーダンだ。女性のハーバード大学と呼ばれる名門スミス・カレッジを優秀な成績で卒業したのに(当時はハーバード大学では女性の入学が許可されていなかった)、夫を支える役割を選ばずにはいられない社会的なプレッシャーの元に結婚していったんは専業主婦となった。

けれども卒業から15年、同窓会で久しぶりに会った同窓生のほとんどが、自分と同じように郊外に住む専業主婦で、しかも自分が置かれている状況に不満を感じていることを知った。その日を皮切りに、自分の内なる声を社会に打ち出そうと決心する。

受けた教育や能力を活かすことができないまま、経済的にも精神的にも夫に依存し、社会によって課された主婦・妻・母としての「女の役割」を演じることにむなしさや不安、不満を感じている女たちが多いことを知ると、フリーダンは、他者承認、自己実現などに対するあこがれを「名前のない問題」と名付け、1963年、研究・調査結果をまとめた『女らしさの神話』(原題:”The Feminie Mystique")(邦題『新しい女性の創造』)を発表する。本は13か国で翻訳され瞬く間にベストセラーとなった。

女らしさ」という既成概念(神話)とその欺瞞を暴いたその著作は、女性たちに家庭以外に自己実現の場や生きがいを求めるよう促した。は米国において19世紀末の女性参政権運動に匹敵するウーマンリブ運動(第二波フェミニズム)の引き金となり、1966年、フリーダンは女性の地位に関する第3回全米委員会会議において他の27人の女性たちと共に全米女性機構 (NOW) を設立。初代会長に就任し、政府に女性の権利・地位向上、雇用機会、賃金、昇進に関する男女差別の解消、人工妊娠中絶の自由化などを呼びかけた。全米女性機構は「驚異的人数の会員を獲得し」、1973年には約600の支部、24の全国的な対策委員会が設置された。

全米女性機構の活動で、当時、最も大々的に取り上げられたのが、1970年8月26日に女性参政権獲得50年を記念してニューヨーク市および全米各都市で一斉に行われた「平等を目指す女性たちのストライキ」だ。ニューヨーク市ではマンハッタンでフリーダンを先頭に数万人の女性たちが、「今夜は夕食を作らない、夫に餌を与えない」、「鉄は熱いうちに打て (Strike while the iron is hot)」をもじった「ストライキが熱いうちはアイロンをかけるな (Don't Iron while the Strike Is Hot)」などのスローガンを掲げてデモ行進を行った。

アメリカのフェミニズム運動の重要な指導者となり、女性解放運動の中心的なフィギュアとなったベティ・フリーダン。彼女の主な功績と社会への影響を簡単に記すと以下のようになる。

  1. 「女性の第二の性」(The Feminine Mystique)の出版:フリーダンは1963年に『女性の第二の性』という著作を発表。専業主婦であることが女性の生活の目標とされている現状を批判し、女性の個人的な幸福と成就感を求める権利を主張した。この本はベストセラーとなり、広範な読者に影響を与えた。

  2. 全米女性団体(National Organization for Women, NOW)の創設:フリーダンは1966年に全米女性団体(NOW)を設立し、初代の議長となる。NOWは、女性の社会的、経済的、政治的地位向上のための活動を展開し、ジェンダー平等を求める重要な組織となった。

  3. ジェンダー平等への闘い:フリーダンは女性の労働市場での平等な権利、男女の賃金格差の解消、性別に基づく差別の撤廃など、ジェンダー平等を求める活動を積極的に行った。そのリーダーシップと活動は、女性の社会的地位向上のための重要なキャンペーンや法的な変革を促した。

  4. フェミニズム運動の啓発:フリーダンの著作や活動は、女性の権利やフェミニズムの重要性についての啓発を産む結果となった。彼女の存在と主張は、多くの女性が自己実現を追求し、社会的な制約に立ち向かう勇気を持つきっかけとなった。

  5. 法的な変革の推進:フリーダンは、ジェンダーに基づく差別を撤廃するための法的な変革を推進した。彼女のリーダーシップの下、女性の地位向上、雇用機会、賃金、昇進をめぐる男女差別の解消、人工妊娠中絶の自由化などを政府に呼びかけた。


フリーダンが広めていった活動は1960~1970年代のことだが、現代の日本でも、上のような漫画が読まれていることを悲しく思う。セクハラやレイプ事件と取り組む人も増えている現代、私たちは性差についてきちんと考えていく必要があると考える。そうしないと一部の人間が作り上げてきた嘘と欺瞞の世界に飲まれていくことになりかねない。

最後に「女性の第二の性」の要約と重要な点を上げる。

  1. 幸福と充足感の追求:フリーダンは、専業主婦であることが女性の唯一の目標とされたその時代に、女性が個人的な幸福や充足感を求める権利を奪われていると主張そた。女性は家庭に留まるだけでなく、個人的な才能や興味を追求する自由を持つべきだと訴えた。

  2. 「女性の神秘」の批判:フリーダンは、当時の文化やメディアによって創造された「女性の神秘」というイメージに対して批判的だった。この「女性の神秘」とは、女性が家族と結婚し、子育てと家事に専念することを選ぶべきであるというイデオロギーに関連する。フリーダンは、このイデオロギーが女性を抑圧し、自己実現の機会を奪っていると主張した。

  3. 個人のアイデンティティの重要性:フリーダンは、女性が結婚や家族によってのみアイデンティティを形成する必要はなく、自己の才能や興味を追求することが重要であると主張した。さらに女性の教育や雇用の機会の拡大、家事労働の共同分担などを提案し、女性の個人的な成長と自己実現のための道を開拓した。





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