ヨーロッパ文化教養講座(2019年イギリス映画「彼女たちの革命前夜」)
2023/07/10
個人的採点は、★★★
(★★★は、再び観たいとは思わないが、退屈せず、観ていた時間は楽しめた作品)
Filmarks: 3.5 (533レビュー)
1970年の実話に基づいた女性解放運動の物語。
原題の「misbehaviour」は、「不正な、邪悪な、あるいは非道徳的な行為」という意味だが、この映画の中の女性たちによる抗議活動が、この時代の「常識」では「misbehaviour」と見なされたという意味なのかなと思った。
コメントと感想:
1.今やジェンダー平等に関しては、世界の最低レベルである我が国だが、1970年ごろは、イギリスでも男性中心の家父長制が当然のごとく存在し、それに対して疑問に思う女性たちによる抗議活動(ウーマンリブ)が起こっていたということがわかる。
2.19世紀末から20世紀初めの「メリーポピンズ」や「ダウントンアビー」の女性参政権獲得運動時代(サフラジェット)を第一次ウーマンリブといい、
ベトナム戦争後の時期に世界で起こった、この映画の時代の女性運動を第二次ウーマンリブというようだ。
日本でも1970年ごろのウーマンリブ運動は結構ニュースでも取り上げられ話題になったのを覚えている。
それが、1986年の男女雇用機会均等法に繋がったのは、間違いないところだろう。
3.苦労して大学の入学を認められた、サリー(演:キーラ・ナイトレイ)が、ゼミの時間で自分が「女性という」マイノリティとして教授や男子学生からも低く見られていることに確信し怒り、過激な女性解放運動の団体に参加して、1970年ロンドンで開催された「ミス・ワールド」の開場で抗議活動をし、逮捕される。
という話を主筋にしながら、
「ミス・ワールド」に参加したほうの、優勝した非白人のグラナダ代表や、アパルトヘイト批判をかわすため、南アフリカ黒人代表として連れてこられた女性たちの思いも描いている。
さらに、「ミス・ワールド」の女性も含む関係者の発言や、世界中から来た代表に対する態度によって、女性を商品としてしかみていないことを描いている。
監督の一貫した、男女差別、人種差別に対する批判の目が感じられる。
4.ただ、実話を忠実に描こうとしたのであろうか、「ミス・ワールド」当日の抗議活動が比較的大人しくインパクトに欠け、フィナーレが盛り上がりに欠けたと思った。
また、小生には主役のキーラ・ナイトレイのシックなビジュアルが良すぎて、ミス・ワールド候補者の派手な衣装も豪華に見えなかったので、主役は他の女優の方が良かったのかもしれない。
5.主役サリーの母親で出演した、「ダウントンアビー」で家政婦長ミス・ヒューズを演じた、フィリス・ローガンを久しぶり見られたのが嬉しかった。
6.WIKIの英語版では、「ミス・ワールド」の歴史の項目中に、
「1970年、ロンドンでのコンテストは、小麦粉爆弾、悪臭爆弾、インクを装填した水鉄砲で武装した女性解放デモ隊によって妨害された。
1970年のコンテストは、南アフリカが2人の出場者(1人は黒人、1人は白人)を送り込んだことでも物議を醸した。」
という記述がある。