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名詞の不可算・可算(単数・複数)⑥-8:単複同形名詞2(特殊な可算名詞:発展版&英語史)
副題:可算不可算の理想と現実(英文法の理想と現実)
名詞の不可算・可算(単数・複数)[UC(SP)]の深掘り版25
単複で混乱が生じる英語の名詞の深掘り、前回の単複同形名詞1回目がほぼ定番説明の紹介だったのに対して、今回の2回目は発展版。基本は名詞の不可算・可算(単数・複数)問題ですが、英語史の視点や独自の視点を加えて整理し直してみます。
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★これまでの検証内容(いずれも「単複混乱」がキーワード)
⑥-1:集合名詞
⑥-2:常時複数形1
⑥-3:pair複数形1(数え方)
⑥-4:常時複数形2(どう数える?)
⑥-5:pair複数形2(特殊な数え方)
⑥-6:常時複数形3(さらに特殊な数え方)
⑥-7:単複同形名詞1(特殊な可算名詞:定番説明)
1. 集合名詞とは?:集合名詞[collective nouns]の3型(定番説明)
2. 常時複数形名詞とは?: 「常に複数形の名詞」(「絶対複数」)
3. pair複数形とは?(通常は「常時複数形」の下位項目に分類):
「対に(2つの部分から)なっている衣類・道具(器具)」
「1つに見えても2つの構成要素が組み合わされてできているもの」
4. pair複数形の特殊な数え方:pairの片方だけをどう数える?
5. pair複数形以外の常時複数形:学問名など
6. 常時複数形の単数問題:単数形はある・ない? 必要ない? 1つはあり得ない?
「1つ」はどう数える?:単語それぞれ事情が別
7. 常時複数形のさらに特殊な数え方:
単数形が存在しない名詞で、"pair"も使わずに「1つ(単数)」をどう数える/表す?
8. 単複同形名詞とは?:定番分類&説明
◉ 英語ではなぜこんなに単複(可算不可算)の混乱が起こるのか?
◉『英語の名詞は「数える・数えない」のシンプルな2分類』定番説明は理想論
不可算U・可算C(単数S・複数P)の理想 vs UC(SP)が曖昧な名詞も多い現実
※一部は日本語でも難しい表現なので英語で難しくても当然、という視点も必要
★今回の⑥-8検証内容
❶ 単複同形名詞とは?:発展的な分類&説明
❷ 可算名詞が単複変化しなくても問題ない/困らない?:単複同形名詞が日常的にこんなに数多く使われているのなら、他の可算名詞が単複変化しなくなっても実は困らない?(そもそも単複変化する必然性は?)
❸ 英語ではなぜこんなに単複(と可算不可算)の混乱が起こるのか?:何度も繰り返して強調するに値する重要ポイント(各自で検証)
※今回は意外と見落とされがちな単複同形名詞をご紹介。定番説明とは大きく違う視点から見ていただけるようお手伝いできたら幸いです。
★単複同形名詞の定番分類&説明【前回の復習】
①群れをなす生物(英文法解説改訂三版では「群居性の魚や動物」)
②語尾が-s/-esの名詞で発音が[s]や[z]で終わるもの
③国民を意味する名詞で発音が[s]や[z]で終わるもの
④外来語
⑤語尾が-craftの名詞
★単複同形名詞の発展的な分類&説明
⑤特殊な単位
a. 一部の通貨:他にも探せば見つかるかも
yen:日本の通貨「円」の英語表記(前回は外来語としても紹介)
euro:EUの通貨「ユーロ」
yuan:中国の通貨「(人民)元」の英語表記 (Chinese yuan, renminbiとも呼称)
won:韓国の通貨「ウォン」の英語表記
b. 一部の単位:他にも探せば見つかるかも
percent:パーセント(%)
意味を考えたら単複変化するほうがおかしい単位
percentage「百分率」との使い分けにも注意
hertz:ヘルツ(Hz)(語尾の発音が[s]で終わるという条件を満たす)
⑥単複同形代名詞(非公式な造語):一部の代名詞も実は隠れた単複同形
二人称のyou:昔からある用法で、学校英語でも常識
三人称のthey (he/sheの代替で単数):男女の区別を忌避する近年の用法
⑦数字の桁
ten, hundred, thousand, million, billion, trillion, etc.
★軽く問題演習
問題1:通貨は単複変化が必要か不要か?
「ドル」は、one dollar, ten dollars, etc.と単複変化する
「円」は、one yen, ten yen, etc.と単複変化しない
※通貨は数えるモノか否か?
復習問題1:以下の日本語を英訳(過去記事で何度か出題)
a. 100ドルは大金だ。(one hundred, dollar, a lot of を使って)
b. 100ドルはこのカメラを買うのに十分ではない。
(one hundred, dollar, enough を使って)
※be動詞現在形が単数isか複数areか?(主語と動詞の単複一致問題)
問題2:money「お金」は可算か不可算か?【学校英語でも定番の話題】
※改めて、100ドルとmoneyはほぼ等価と見なせるか否か? 100ドルの可算不可算とmoneyの可算不可算は関連があるか否か?
※違う視点:1万円札は何かを1万回数えるのか1枚の紙切れか?(1万か1か?)
問題3:文法的に正しい表現を選択【同じ番号の中からどれか一つを選択】
1. 一万ドル
a. ten thousand dollar
b. ten thousand dollars
c. ten thousands dollar
d. ten thousands dollars
2. 数千ドル
a. thousand dollar
b. thousand dollars
c. thousands dollar
d. thousands dollars
e. thousand of dollar
f. thousand of dollars
g. thousands of dollar
h. thousands of dollars
※数字は単複同形名詞(可算)か不可算か? そもそも数字は独立した名詞なのか?
問題4:二人称単数のyouと二人称複数のyouを実用上どう区別?
問題5:性別を考慮せずに使える三人称単数のtheyを容認できるか否か?
実用的に頻出する代名詞にも単複同形が存在するのが英語の現実。代名詞の単複の区別は元からなかったのか、区別していたのに途中から必要なくなったのか? 私が参考にさせていただいている堀田先生(慶應義塾大学文学部教授)の英語史の視点からの考察も、以下のリンクから是非ご一読ください。
◉ youに関する英語史的考察
◉ theyに関する英語史的考察
私の問題意識を追加させてもらうと、学校英語で重要性を叩き込まれる名詞の単複変化は、英語(ネイティブ)にとっては時に無視できる程度の位置付けでしかないのか?
単複同形名詞の記事もこれで2回目。「可算不可算の理想と現実」問題、「不可算U・可算C(単数S・複数P)の理想 vs UC(SP)が曖昧な名詞も数多く存在する現実」。考えるべきポイントは、「単数か複数か?」、「可算名詞が単複変化しなくて困らないのか? 単複変化しない単複同形名詞でも可算名詞で通用するなら単複変化は必要か? 他の可算名詞が単複変化しなくなっても問題ないのか?」。さらには、「単複変化する名詞="countable nouns"か?」。
英語の不可算U・可算C(単数S・複数P)の本質は何か、『英語の名詞は「数える・数えない」の2分類でシンプル』で済ませて良いのか、という視点も継続。英語ではこうした諸々の点が大問題(日本語では何の問題も発生しないのに)。英語名詞の可算不可算&単複(英語の都合)と日本語名詞の違い、ご理解いただけたでしょうか。
いわゆる学校英語や学術英語で整理しきれていない部分を考えてもらうための教材、英語の「名詞の不可算・可算(単数・複数)の理想と現実」問題が少しでも伝われば幸いです。
授業ではちゃんと解説しますが、一般公開はここまで。あちこちにヒントを散りばめてあるので、非受講生の方は辞書を引いたり自分で調べたりして考察してみてください。
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