名詞の不可算・可算(単数・複数)⑥-3:pair複数形1(数え方)
副題:可算不可算の理想と現実(英文法の理想と現実)
名詞の不可算・可算(単数・複数)[UC(SP)]の深掘り版8
「単複で混乱が生じる英語の名詞」深掘り、今回は数が混乱しがちな「pair複数形名詞」2回目(普通のネーミングとはやや違うかもしれません)。今回も基本は名詞の不可算・可算(単数・複数)問題で、日本語と英語の数え方問題にも少し踏み込んでみます。さらに、英語の不可算可算(単複)の本質は何かという視点での整理も必要。
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今回の検証内容
❶ pair複数形とは?(前回記事⑥-2「常時複数形1」の下位項目)
☆英文法解説(改訂三版)[江川 泰一郎(著)]では「常に複数形の名詞:対になっている衣類・器具」(事実をそのまま表現)
☆表現のための実践ロイヤル英文法[綿貫 陽,マーク・ピーターセン(著)]では「常に複数形の名詞:2つの部分から成っている道具や衣類」(事実をそのまま表現)
☆総合英語Evergreen/Forest[墺 タカユキ(編集)/石黒 昭博(監修)]では「必ず複数形で用いられる名詞:複数扱い(1つのように見えるものでも、2つの構成要素が組み合わされてできているものは複数形で用いる)」(中高生向けにアレンジ)
☆Wikipedia等では「絶対複数」の一部(大げさ過ぎ)
※このように、それなりに知名度が高いテーマですが、定番説明とは少し違う視点から見ていただけるようお手伝いできたら幸いです。
❷ 単数形は存在しない? 必要ない? 1つはあり得ない?(単語それぞれの事情)
❸ 英語ではなぜこんなに単複(可算不可算)の混乱が起こるのか?(各自で検証)
❹ 『英語の名詞は「数える・数えない」のシンプルな2分類』という理想論で説明を済ませて良いのか?
※数ある英文法項目の中でも整理が難しくて混乱しやすい分野なので、その点は予めご了承ください。
★pair複数形リスト★
binoculars, forceps, glasses, gloves, goggles, jeans, pants, pliers, scissors, shoes, slacks, socks, tongs, trousers, tweezers, etc
(このリストにある単語は定番説明と同じ:他にもまだあるので各自で検索)
復習&応用問題1:pair複数形をさらに分類+数え方の特殊性
① 上記リストのpair複数形を単語ごとに文法的に分類すると、それぞれ以下のどれに該当? 幾つのグループに分類できる?(主観で判断するのもアリ)
(a) 普通の可算名詞複数形
(b) 少し変な可算名詞複数形
(c) 可算名詞複数形かどうか疑問
(d) 不可算名詞
(e) それ以外
② chickenという英単語は、可算名詞「鶏(ニワトリ)」ならone chicken, two chickens … と数え、不可算名詞「鶏肉(トリニク)」ならone piece of chicken, two pieces of chicken … と数えます(「不可算名詞は数えられない」と信じている人は、現実逃避しないように)。さて、pair複数形の数え方はどっちに近い?
(a) 可算名詞「鶏(ニワトリ)」に近い
(b) 不可算名詞「鶏肉(トリニク)」に近い
(c) どちらとも言えない
(d) どちらとも違う
※前回記事の復習かつ深堀り。
復習&応用問題2(⑥-2):「手袋(例えば軍手)」・「靴下」と「メガネ」について
① 「手袋」は英語でどう数える?【知識問題】
② 「靴下」は英語でどう数える?【知識問題】
③ 「手袋」は日本語でどう数える?【意外と知らない日本語】かつ【和英共通点】
④ 「靴下」は日本語でどう数える?【意外と知らない日本語】かつ【和英共通点】
⑤ 「手袋」・「靴下」と「メガネ」、明らかに違う点は?(英文法では同じカテゴリーに整理されがちですが、ポイントは「本物か偽物か」)
※前回記事の復習かつ深堀り
※再掲示:高校英語を普通に学んできた人は、この問題で何を問われているのか理解できないかも。
※このカテゴリーの名詞が難しいのは、意味が違う単数形が存在するモノ(glassがその実例)もあるから。それが原因で少し変な可算名詞程度の理解に留まってしまう人が続出するのですが、例えば単数形glassが「メガネ」の意味になることはなく、「メガネ」は何個でも必ずglasses。単複変化が起こらないという実に不思議な単語。
※この語群を「pair複数形」と呼ぶ理由がお分かりいただけるでしょうか?
応用問題3:以下の表現は文法的にアリかナシか? アリなら人数は何人(1人か2人か4人か)? それとも、使わないほうが良い表現?(twin[双子]人数問題でpair複数形をさらに深堀り、結局pairの数はいくつ?)
① "a twin"
② "two twins"
③ "a pair of twins"
④ "a set of twins"
⑤ "two pairs of twins"
※実はネイティブ間でも個人差がある模様
※日本語の助数詞の英語版という見方で整理してみると少しは分かりやすくなるはずですが、それでも現行の英文法の中で「助数詞・単位」は整理が不十分
さて、今回のpair複数形の深堀り(英語での数え方のごく一部)、これも「不可算可算の理想と現実」問題の典型例で、考えるべきポイントは「可算か不可算か?」「単数か複数か?」「どう数えるのか?」「(名詞の見た目ではなく)実際に数えられるのか数えられないのか?」に加えて、「本当のところは数はいくつ?」(まるで英語名詞の抱える問題のほぼ全てが集約されているかのよう)。これが英語では大問題(日本語では何の問題も発生しないのに)。
他にも考えるべきポイントは、総合英語Evergreen/Forestの表現を借りれば、「1つのように見えて本当は2つ(複数形で正解)」なのか「実際は誰が見ても1つなのに人為的に2つと考える(複数形では無理がある)」のか? 手袋や靴下が2つなのは和英共通ですが、眼鏡やハサミが「1つに見えて本当は2つ」ですと言われて納得? この論理は「一本でもニンジン」と同じか違うか?(もちろん完全に同じではありませんが、「言葉遊び」というレベルでは同類)
さらに、『英語の名詞は「数える・数えない」のシンプルな2分類』という理想論と「実際の数え方は日本語の助数詞・単位なみに複雑」という現実の姿との大きなズレという視点での整理も必要。日本語と比較することで、英語名詞には可算不可算&単複という区別が存在し(「区別があるほうが凄い、ないのは残念」なのではなく、あくまでそれぞれの言語の都合)、それを実に巧妙かつ多様に駆使しているという点がご理解いただけたでしょうか。
いわゆる学校英語や学術英語で整理しきれていない部分を考えてもらうための教材、英語の「名詞の不可算・可算(単数・複数)の理想と現実」問題が少しでも伝われば幸いです。
授業ではちゃんと解説しますが、一般公開はここまで。あちこちにヒントを散りばめてあるので、非受講生の方は辞書を引いたり自分で調べたりして考察してみてください。
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