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アカガエルの春

 アカガエルはまだ雪の残る1月から3月に越冬場所から出てきて,水田やため池で産卵します.メスは産卵後に再び冬眠しますが、オスは水辺でメスを待ち続けます。1999年に私が大阪府立大学に赴任して初めての学生の研究テーマがニホンアカガエルでした.卵塊は比較的大きくて浅瀬に産むので見つけやすいので,昼間卵を見つけておいて夜にでかけます.特に雨の降る夜に多数のカエルが水辺に集まり,妖精のような声で鳴きかわします.

ニホンアカガエル
ヤマアカガエル(Wikipedia)


 アカガエルは背中の色が赤茶色いカエルで,大阪にはニホンアカガエル,ヤマアカガエルが生息しています.以前はトノサマガエルやウシガエルなどもアカガエル属(Rana)に含まれていましたが、今は別の属にされました.でも、アカガエル科に属していますRanaはラテン語でカエルのことなので,アカガエルの仲間はヨーロッパでも最も普通のカエルなのでしょう.日本でも身近な生き物だったようでかつては薬として利用され,「赤蛙」という小説(島木健作)もあります.

 ニホンアカガエルとヤマアカガエルは似ていますが,背側線がニホンアカガエルではまっすぐなのに対して,ヤマアカガエルでは目の後ろ後方で曲がっていることから区別できます.また,ニホンアカガエルの卵塊は産卵されて間もないときには手ですくい上げても崩れないのに対して,ヤマアカガエルの卵塊は指の隙間から流れ落ちてしまうことからも区別できますが,日数がたつとニホンアカガエルでも流れ落ちるようになるので注意が必要です.

 大阪府ではヤマアカガエル、ニホンアカガエルとも府の2014年レッドリストで絶滅危惧II類(VU)に指定されています.それ以前はヤマアカガエルのみが準絶滅危惧種だったので、より危機が深まったということでしょう。ヤマアカガエルの分布は主に北摂に限られ,ニホンアカガエルは生駒山系や泉北丘陵から河内長野市にかけて多く,分布がわかれています.

 おたまじゃくしは水田や用水路,ため池の中で育ち,5月から6月に小さなかえるになって上陸します.上陸すると水辺を離れ,樹林の中や林縁で虫などを食べて暮らします.

 また,名前はアカガエルではありませんが,近縁で姿形が似ているタゴガエルは山の中に生息し,渓流の岩の隙間や伏流水に産卵します.卵は黄白色でおたまじゃくしは何も食べずに卵黄の栄養だけで成長して小さなカエルになります.北摂や金剛・和泉山系で普通にみられます.

 日本各地でアカガエルの仲間が減少しています.その主な原因は,都市開発や水田の乾田化,用排水路のコンクリート化や暗渠化です.生息場所そのものが失われるだけでなく,道路や都市によって分断されると,鳥のように飛べないカエルにとっては絶滅の脅威が高まります.また,丘陵地や台地の入り組んだ水田(谷津田)が耕作放棄されて,乾燥した草地や藪になってしまうことも大きな脅威となっています.アカガエルが生息するためには,森と日当たりのよい水辺がセットになっている必要があり,谷津田は最も適した環境なのです.

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