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香りの形 ツバキ

 良い匂いのことを「香り」という。「香り」の多くは植物から得ることができ、その正体は植物がその体内で合成した有機化合物の分子である。
 このnoteでは、様々な「香り」の形(分子の形)を紹介しようと思う。


冬に咲く花 ツバキ

 ツバキの花が咲き始めた。冷たく澄んだ冬の空気の中で咲くツバキは、春や夏に咲く花の元気なイメージとはまた違った生命力を感じさせる。ツバキはサザンカとよく間違われるが(どちらも常緑広葉樹のツバキ科ツバキ属)、花の形、花糸の形状、散り方、そして香り、と様々違うところがある。

ツバキは、花が立体的で、花糸の根元がくっついているのが特徴

 冬の屋外でゆっくりと花の香りを楽しむ人は少ないし、そもそもツバキの香りは強くはないため、その香りをすぐに思い出せる人は多くはないだろう。 

ツバキの香気成分組成 

リナロール、リナロールオキシド、他

ツバキの種類によるが、ツバキの香気成分は主にリナロールとリナロールオキシドで構成されている。
 以下資生堂の論文によると、水吉、祝の盃などのツバキはほぼ100%がリナロールである。初嵐、しま紫などは、リナロールオキシドが9割となっている。
 リナロールは、ツバキだけでなく、ラベンダー(約40%)ネロリ(約40~50%)、ローズマリー、バラ、ジャスミン、キンモクセイなどにも広く存在する香りの分子である。

リナロール単品の香り

 リナロール、リナロールオキシド共に、花から抽出することは可能であるが、上記のように分子の構造が分かれば、人工的に合成できる。化学の力である。
 リナロールはエッセンシャルオイルとして購入可能なため、注文して香りをかいでみた!

 香りを言葉で表現することは難しい…が、甘くない、さわやかな、透き通った済んだ香りである。リナロール単品ではツバキの香りそのものではないが、冬の冷たい空気を想像させる媚びない香りである。また先に述べたように、どこかラベンダーやローズマリーの気配も感じられる。
 もう一つの香気成分であるリナロールオキシドは残念ながら販売されていないが、リナロールと混合するとツバキの香りに近くなるのだろう。

 読んでいただきありがとうございました。


参考文献


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