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【マルチビタミンをオススメしない理由】

マルチビタミンって結構色々な企業が出していて、D〇CとかA〇ahiやF〇NCL、大〇製薬と誰でも聞いたことがある会社ですよね

タイトルに書いたように、「マルチビタミンを飲まない方が良い」という話もよく聞くと思うのですが、何がいけないのか?


「大企業が出しているのだから大丈夫だ!」なんて思っている人は、これ以降読まないほうが良いです

知らない方が幸せな事もありますからね…


そもそも病院に行かず、ひとつのサプリで健康が維持できるなら、そんな楽なことはないんですけど…
人生そんな甘くないんですよね

勉強や筋トレと同じように、健康も真面目にコツコツが基本なので、「一粒飲めば毎日元気!」みたいものは存在しません


では本題ですが、根拠のない陰謀論とかではなく、ちゃんといつものように第三者機関の論文ベースで書いていきます


最初に伝えたいのが、どんなサプリメントでも、個人の不足栄養素を検査によって確認しないと、完璧に白黒付けるのは難しいです


そのため細かくマルチビタミンについて書いていこうと思います


①そもそも、マルチビタミンで長生きできるのか?という事なんですが…
結論から言ってしまえば、今のところマルチビタミンで長生きできることを証明した研究はないです

・29,361人の男性を対象にした観察研究では、複数の栄養をサプリでまとめてとっても癌リスク低下には関係しない

※参考文献

・18の先行研究をまとめた2018年のメタ分析では、マルチビタミンと心疾患リスク低下には相関が認めらない

※参考文献

https://www.ahajournals.org/doi/full/10.1161/circoutcomes.117.004224

・21の先行研究をまとめたメタ分析では、マルチビタミンと総死亡率低下に何も影響がない

※参考文献

これらは観察研究がメインとはいえ、複数のメタ分析からあらゆる疾患との相関を否定していて「現在はマルチビタミンで長寿になる」というちゃんとした証拠がないですね


では、逆に「マルチビタミンは安全なのか?」ってポイントを調べてみると、こちらもまた判断が複雑な感じになっています

まず基本的なデータから紹介すると、

・マルチビタミンと総死亡率の関係を調べた2018年のメタ分析では

※参考文献

「マルチビタミンが寿命を縮める可能性は低い」と結論づけています

・21の研究を調べたメタ分析でも

※参考文献

「マルチビタミンには意味がないが、それで寿命が縮まることもない」との結論です


つまり安全性には問題がないとの結論です


ただここには大きな注意すべきポイントがあり、「RDAを守ったマルチビタミンでしか安全性は確認されていない」っという前提があります

RDAは各国政府などが定める推奨栄養所要量で、いわば「健康を守るためには最低限これぐらいの栄養が必要ですよ!!」ってのを定めた数値です

つまり日々の健康を維持するための最低ラインという訳です

これはかなり大事なポイントで、“多くのマルチビタミンは、RDAをはるかに超える成分をふくんでるケースが非常に多い”ですよね
(特に海外のサプリはRDAの10倍とか100倍レベルが入ってるケースが普通にあります)


特に高用量のビタミンB6、B12、ベータカロテン、ビタミンEなどは発癌率の上昇と相関が確認されおり

※参考文献

この点を考えると、やはりマルチビタミンを勧めるのはかなり難しいところなんです

次ッ!!

②マルチビタミンで脳やメンタルの機能は改善するか?
そもそも知性や感情がうまく働くには適切な栄養が必要なので、うまくすればマルチビタミンが効果を発揮するような気がしますよね

この問題については、「マルチビタミンと健康」よりもデータ数が少ないものの、2013件のメタ分析では

※参考文献

RCTを含む先行研究から8件を抜き出したもので、最低でも28日ほどマルチビタミンを使ったらメンタルにどんな影響があるかをチェックしてくれています

その結果、問題がない成人にマルチビタミンを投与すると、主観的な不安、敵意、ストレス、疲労、および思考の明瞭さがちょっとだけ改善する事が確認されました

しかし、「うつ病の改善については統計的に有意ではなかった」という事です

この研究をみる限りは、結構前向きな結果のようにも見えます


ただ、分析に含まれたデータは、正確にはマルチビタミンを使ったものではなく(ビタミンB群+ミネラルが多い)、いくつかのデータは、サプリメーカーから資金提供を受けており、なんとも正確な判断がしづらいところではあります


そもそもマルチビタミンの盲検化が難しいので(尿の色が変わりやすいから)、プラセボ効果が強力に出ている可能性が高いです

ここらへんの問題は結構大きく、今後の追試では結論がひっくり返ってもおかしくはないかな…と思うところです

また、上記のメタ分析が出た後でもマルチビタミンとメンタルについて調べた研究はいくつもあるんですが

※参考文献

※参考文献

※参考文献

結論がバラバラで、現在はやはり手放しでオススメできない感じですね(メタ分析で確認された効果量もかなり低い)


次ッ!!

③高齢者にマルチビタミンは効くのか?
人間は歳を取るほど栄養が足りなくなる傾向があります(特にビタミンDやビタミンB12など)

高齢者の研究を見てみると…

・160人の高齢者を対象にしたRCTではマルチビタミンで血圧は改善しなかった

※参考文献

・5947人の高齢者を12年かけて観察した研究では、マルチビタミンは脳機能に影響しなかった

※参考文献

・56人の高齢女性を対象にした研究では、マルチビタミンでワーキングメモリがちょっとだけ改善する可能性はありつつも、全体的には大した影響がなかった

※参考文献

といった感じです


あまりにも栄養が足りない高齢者であれば、「ひょっとして意味があるかも?」とは思うものの、現時点では病院で不足した栄養素を処方された方が無難かと思われます


次ッ!!

④マルチビタミンが役に立つケースはあるの?
全体的に見ればマルチビタミンを手放しでオススメできるだけの証拠はないんですが、なかには「こういう場面なら使ってもいいかも?」というケースもあったりします

1、極端な食事をしている場合
ヴィーガン、マクロビ、グルテンフリー、激しいカロリー制限といった極端な食事をしていると、必要な栄養が足りなくなりがちなのはほぼ間違いなく、そもそも不健康な食事なので意味は出てくるかと思います

※参考文献

※参考文献

※参考文献

宗教やアレルギー等でなければ「普通の食事しないさい!」というところですがね… 


2、妊娠中の場合
妊婦さんにとって栄養不足は深刻な事態なので、マルチビタミンが効く可能せは十分にあります

実際、2017年のメタ分析なんかでも良い報告が出てまして、98,926人分のデータをまとめたところ

※参考文献

「先進国の妊婦は、マルチビタミンを使うことで胎児の神経管、尿路、心血管系、四肢の未発達リスクを低下させる」との結論になっています

ただし、このデータについては全体に実験デザインが微妙なものが多いので、個人的にはまだオススメしません


またこのメタ分析でマルチビタミンに有利な結果が出たのは、「葉酸のおかげじゃない?」と考えられてたりもします

葉酸の重要性については昔からよく言われており、こちらの方がデータの質は高いです

※参考文献

なので、マルチビタミンの前に葉酸の使用を考える方が先かなーとも思います

ここらへんは産婦人科医の先生方がよくアドバイスされている通りかと…


これらの話をまとめると

よほどの偏食で栄養が足りてない場合を除き、マルチビタミンで健康になれる可能性は低い(というか体に良くない可能性もある)

メンタルに効く可能性はありますが、なにせ効果量が小さいので、コストに見合ってる気がしない…


なのでマルチビタミンが役に立つケースはほとんどなく、「健康のために普段からマルチビタミンを飲む!」はちょっと違うかなーと思います

(※糖尿病やセリアック病みたいに栄養不足になりがちな疾患もありますが、今回は除外)



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しげ@学生時代の落ちこぼれを引きずる30代パパ
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