GIGAスクール構想と新学習指導要領の関係4 ~課題探究的な授業の考え方~
《読了6分》
前回の振り返りを少し。
探究は課題解決のための学習方略の一つですが、特に、高度な探究になると「必ずしも一つの答えではない」ことが出現します。あるいは、最終的には一つの答えに到達したとしても、生徒一人一人が、そこまで辿ってきた道のりは様々だと考えられます。
これが、「探究の過程を振り返る」ことだと考えます。
そうだとすると、「探究の過程」はどのように見取るとよいのでしょう。
今回は、「課題探究的な授業の作り方」として、課題探究的な学習の構成要素について述べます。
【課題探究的な学習の構成要素】*新学習指導要領対応
□学習課題は、生徒が設定する(あるいは、課題に必然性を持たせる)
*動機づけのための授業導入が鍵となる
*導入で用いる現象・事象に対する「問いから学習課題を設定する」
*学習課題の共有は、題材によって「個人の課題」「集団の課題」と異なる場合がある
*「教師が一方的に与えた課題ではない」ことが、学習の動機づけとして重要
□学習課題によっては、条件制御を加味した仮説をたてる場合がある
*「仮説」と「予想」のちがいに留意する
□課題解決のために「見方・考え方」を働かせる
*新学習指導要領において「働かせるべき見方・考え方」を整理する(伝える)
*学習指導要領の各教科の解説参照
□教師の指導スタンスは「指導者ではなく支援者」「考えさせるための支援」
*教師は指導的・説明的発言を極力避ける
*教師は生徒が思考に没頭する際の「沈黙の時間」に耐える
□課題解決のために「過去の学習の振り返り」が用いられる
□課題解決のための「個人の試行錯誤(途中で修正、見直し、再実験など)」がある
□課題解決のための「他者との協働(交流・傾聴)」がある
□最終的な課題解決は、極力生徒の言葉を大切にして全体共有する
□授業時間の制約はあるものの、必ず「生徒にゆだねる時間」を確保する
□扱う題材にもよるが、ひとつの課題探究的な学習に2~4時間あたりの時数を想定する
(学びの連続性、継続性を勘案すると、週あたりの最大授業時数が適当と考えられる)
□年間指導計画のなかで、どの領域で、何コマ使うかをあらかじめ決める。
課題探究的な学習が成立するために、もっとも重要なのが授業導入での「動機づけ」です。
これは、先生方はきっと経験しているはずです。曰く「今日は、生徒のクイツキがよかった」「生徒が熱中していた」という経験があるはずです。
おそらく、その授業は、動機づけが生徒の実態とベストマッチしていたはずです。そして、その授業では、指示的教授的な教師の発言は少なかったはずです。これは、多くの教育学及び教育心理学論文でも重要なエビデンスとして認知されています。
質のよい導入によって、生徒はつぶやきも含めて、発言が多い場合は動機づけが成功したと考えていいと思います。
動機づけによって、生徒は多種多様な発言をするでしょう。
その多くは直感によるものが多く、非常に素朴な問いから生じる発言です。
教師から見ると「単なる思いつき発言」であったとしても、それは間違いなく動機づけからの応答なのです。
間違いなく生徒はその授業にまさに主体的に手を伸ばそうとしている瞬間なのです。
たとえ取るに足らない素朴な問いでもきちんと向き合って、少しずつ合意形成を行いつつ、本時の学習課題の設定につなげることができると、残りの8割くらいは上手く行きます。
余談ながら、私は、理科授業実践研究団体に所属しています。この組織の重要な活動に「課題探究的な学習」の授業の実践交流があります。公開授業後には、【課題探究的な学習の授業イメージ(理科の例)】(前述)に沿って、討議が行われます。この討議の場で「課題探究的な学習がうまく機能した授業」を見たあと、参会者の発する言葉の中に「オートパイロットに入った」とか「自動操縦に切り替わった」という喩えを使うことがあります。
これは、「課題探究的な学習」の授業で「動機付け」がしっかりと根付いて、授業導入からの課題設定が子ども一人一人に内在化された結果、教師の支援が無い状況でも「子どもたちが主体的に学習を進めている状況」のことをいいます。
教師の立場を航空機パイロットに見立て、「学習者を指導する(つねに操縦桿とエンジン推力を駆使して飛行機を飛ばす)」のではなく、「授業導入(離陸)時の動機付けや課題把握に十分留意した結果、学習者は主体的に課題解決に向けた学習を開始(巡航高度でのオートパイロット)する。そして、授業終盤で教師は課題解決の支援を行う。(着陸時はオートパイロットをOFFにして、風向きなどの気象状況に合わせます)」
つまりは、学習者(子どもたち)自身が飛行機をコントロールして飛ぶ感覚を身につけていることのメタファー(隠喩)です。
まれに、「課題探究的な学習」の一場面で教室が静まりかえることがあります。
これは、課題解決の場面で、子ども自身が事象・現象の解決の糸口に気づき、思考に没頭する姿だと思われます。この時、教師は「声をかけない」ことにどれだけ耐えられるか、というのも大事なことです。我々現場の教師は、ついつい喋りすぎます。ですから、沈黙の間に耐えられず、つい言葉を発声します。このような状況に耐えることも教師にとっては大切なことです。
これで、「GIGAスクール構想と新学習指導要領の関係4~課題探究的な授業の考え方~」を終わります。
ここまで読んでいただいたことに感謝いたします。
次回は、「GIGAスクール構想と新学習指導要領の関係4~課題探究的な授業を作る~」として、課題探究的な授業の作り方について具体的に述べたいと思います。