GIGAスクール構想と新学習指導要領の関係7~そもそもGIGAスクール構想とは~
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前回は、新学習指導要領での「課題探究的な学習」における主体的な学びに、ICT機器がどのように位置づけられるかについて述べました。
ICT機器のメリットである「検索(検索エンジンGoogle、yahooなど)」「記録、読み取り(QRコード、静止画、動画)」「聞く、聴く(音楽、音声)」「創作(デジタル描画、プログラミング、ワープロ作文、動画編集、画像加工)」「伝える(プレゼンテーション、動画・静止画の配信、オリジナル音声・音楽)」「交流する(メール、SNS、クラウド上のグループ協働作業、オンラインコミニュケーション)」これらの機能のほぼ全てが「探究的な学習」における、「課題解決」のひとつのツールとして生徒が「主体的に」用いることができると考えています。
今回は、「そもそもGIGAスクール構想とは何か」について述べます。
そもそものきっかけになったのは、日本の教育機関でのICT活用が世界で最低水準であることがOECD調査で明らかになったことから、2019年の「学校教育の情報化の推進に関する法律」を基に「教育の情報化の手引き」が制定されたことにつながっています。以下、GIGAスクール構想につながる関係法令・施策について整理します。
1 学習指導要領
学校教育には、子供たちが様々な変化に積極的に向き合い、他者と協働して課題を解決していくことや、様々な情報を見極め知識の概念的な理解を実現し情報を再構成するなどして新たな価値につなげていくこと、複雑な状況変化の中で目的を再構築することができるようにすることが求められている。(出典:平成29年告示の学習指導要領の第1章総説1改訂の経緯及び基本方針(1)一部抜粋)。
特に「様々な情報を見極め知識の概念的な理解を実現し情報を再構成するなどして新たな価値につなげていく」という文言に、現代社会に溢れる膨大な断片的な情報を再構成して、新たな価値を見出すような学びを読み取ることができます。
2 学校教育の情報化の推進に関する法律(元文科初第402号 令和元年6月28日)3条基本理念
①情報通信技術の特性を生かして、児童生徒の能力、特性等に応じた教育、双方向性のある教育等を実施
②デジタル教材による学習とその他の学習を組み合わせるなど、多様な方法による学習を推進
③全ての児童生徒が、家庭の状況、地域、障害の有無等にかかわらず学校教育の情報化の恵沢を享受」
④情報通信技術を活用した学校事務の効率化により、学校の教職員の業務負担を軽減し、教育の質を向上
⑤児童生徒等の個人情報の適正な取扱い及びサイバーセキュリティの確保
⑥児童生徒による情報通信技術の利用が、児童生徒の健康、生活等に及ぼす影響に配慮
3 教育の情報化の手引き(学校教育の情報化の推進に関する法律から作成)
新学習指導要領においては、初めて「情報活用能力」を学習の基盤となる資質・能力と位置付け、教科等横断的にその育成を図ること。そして、育成のために必要なICT環境を整え、それらを適切に活用した学習活動の充実を図ること。さらに、情報教育や教科等の指導におけるICT活用など、教育の情報化に関わる内容の一層の充実が図られています。この手引きは新学習指導要領のほか、現時点の国の政策方針・提言、通知、各調査研究の成果、各種手引、指導資料等に基づき作成され、現行の手引の内容を全面的に改訂・充実するとともに、「プログラミング教育」「デジタル教科書」「遠隔教育」「先端技術」「健康面への配慮」などの新規事項も追加し、各学校段階・教科等におけるICTを活用した指導の具体例を掲載しています。
4 新時代の学びを支える先端技術活用推進方策(文科省令和元年6月25日)
これから到来するSociety 5.0 時代を見据え、文部科学省において、昨年11 月に学校教育の中核を担う教師を支え、その質を高めるツールとして先端技術を積極的に取り入れること等をまとめた「新時代の学びを支える先端技術のフル活用に向けて~柴山・学びの革新プラン~」(以下「柴山・学びの革新プラン」という。)を公表した。
この柴山・学びの革新プランを踏まえて、文部科学省初等中等教育局に「学びの先端技術活用推進室」を新設し、子供の力を最大限引き出す学びを実現するために、ICTを基盤とした先端技術を効果的に活用するための具体的な方策について検討し、令和元年3 月に「新時代の学びを支える先端技術活用推進方策(中間まとめ)」を示した。
これらの法令や方策が「GIGAスクール構想」の理念につながっています。
【GIGAスクール構想】
「Global and Innovation Gateway for All」の略で、「多様な子どもたちを誰一人取り残すことなく、公正に個別最適化され、資質・能力が一層確実に育成できる教育ICT環境を実現する」ために、創造性を育む教育を全国の学校現場で持続的に実現させることを目的にしたもので、以下を柱として教育分野のICT化を推進するものである。
(1)国公私立の小・中・特別支援学校などの学習者用パソコンの1人1台配備を目指す
(2)クラウド活用のできる高速校内通信ネットワーク環境を整備する
これらは、実はCOVID-19感染拡大以前に記述されています。
2020年のCOVID-19によって、日本全国の学校の休校措置によって、オンライン学習や授業の必要性に迫られることにより前倒し実施となり、ここから、「GIGAスクール構想」という名称が周知されるようになってきました。
文部科学省と経済産業省の強力なタッグチームは、「GIGAスクール構想」のために、まず、子どもひとりあたり5万円の端末の配付。そして、各学校の高規格インターネット回線構築のためのインフラ工事と堅牢な無線アクセスポイント設置のための膨大な国家予算が投じられました。
これによって、ICT機器(以降、「タブレット端末」とします)を「学校単位で使う・使わないの選択」では無く「使う前提」となりました。
そして、すでに述べたとおり、これからのICT活用は「授業で教師が活用する教具」ではなく「授業で児童生徒が活用する文具」が前提となりました。「GIGAスクール構想」の受益者は児童生徒なのです。
しかしながら、公立学校では日本初の試みであって、日本中の公立学校(一部中等教育学校をのぞく)で誰も経験していないことから、各自治体の教育委員会や各学校では「産みの苦しみ」を経験することになります。
教師は授業の中で、タブレット端末を活用する児童生徒にどのような学習支援を行うのかが問われています。
ここで気をつけて頂きたいのは、「教師がタブレット端末を生徒に使わせる」という、教師が主語の文章では無く、「タブレット端末を使う生徒への学習支援」という部分がポイントとなります。
教師が授業のために教室に入ると、目の前でタブレット端末を起動させた生徒がいます。(教科書やノート、筆記用具を机に置いているのと同じ感覚で)
このような生徒に対して、学習支援を行う教師がどのようなスタンスで、生徒に対してどのようなフィードバック(広義の評価)を行うかが問われています。
タブレット端末導入当初は、これまでの授業で用いたワークシートなどの資料(授業資産)のそのまま利用できないので、苦労することは間違いないでしょう。
しかしながら、中学校の場合、新学習指導要領全面実施と同時となるので、新教科書導入初年度であることから、多かれ少なかれ新しい授業資産を作ることになると思います。
この時、気をつけたいのが、これまで通りの教材資料作りでは無く(例えば、パワーポイントプレゼンの改定や変更ではなく)。ICT機器や「生徒が端末を使うことを前提とした授業資料作り」が重要になります。
このことは、学校現場の教職員にも「より効果的なICT活用」を促すものであり、今まで、ICTを敬遠してきた教員への意識改革を促すものだと考えます。これだけの大規模予算が投入された以上、国や地方自治体は、その効果を定期的に調査測定することになると思います。(おそらく、端末のログ履歴が残るので、紙面調査では無くデータ解析の形式で、使用時間や教科まで明らかになることでしょう。使用していない学校どころか、使用してない教師まで特定されるかもしれません)
以上に記したのは、「GIGAスクール構想のネガティブな捉え方」です。
本稿で伝えたいのは、「端末を活用することで、子どもも伸びて、教師の働き方改革につながる」という、「端末活用が普通になった将来像」を伝えたいのです。
当然ながら、新たな挑戦や改革には、当初の苦労が伴います。それでも、これが「日常」になったとき、「気がついたら楽になった。」という姿を想定しています。
COVID-19感染拡大状況では、リアルな「対面型グローバル化」は難しくなりましたが、COVID-19がオンラインコミュニケーションを加速させ、休校時のインタラクティブな学習支援を可能とします。
通常なら話を聞けないスゴイ人物とオンラインで話が聞けたりもします。
10年後の職員室は変わる気がします。
GIGAスクール構想は、「働き方改革」も促すと思います。これについては次回以降にします。
これで、GIGAスクール構想と新学習指導要領の関係7~そもそもGIGAスクール構想とは~を終わります。
お読みいただき感謝いたします。
「課題探究的な学習」と「GIGAスクール構想」のベストマッチングが、やがて「働き方改革」にもつながることを願っています。
次回は、GIGAスクール構想と新学習指導要領の関係8~1人1台端末使用の授業像~について述べます。
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