出版社の目録を読もう
過去に、出版社に目録を請求する際の手がかりになるページをまとめた記事を書いた。
ありがたいことに、今でもちょいちょいいいねがつく。Google検索で「出版 目録 送付」などと調べると、どうやらこの記事がかなり上の方に出てくるらしい。お役に立てているようで何よりである。
しかし、よくよく考えてみると、そもそも出版目録とは何なのかをあまり書いていない。当該記事には僅かに説明を記載したが、出版目録のこと自体知らないという方も多そうだ。
そこで、この記事では「出版目録とは何なのか」について、グダグダと書き散らしてみたい。皆さんも出版目録を読もう。
出版目録とは?
出版目録は、一つの出版社(合同の場合もある)が刊行した書物に関する情報をまとめた一覧である。
個人や団体が所蔵する書物を一覧化したものは「蔵書目録」であり、これらをまとめて「図書目録」と呼ぶが、本筋からは逸れるのでこれ以上は言及しない。
内容は「文学」や「哲学・思想・宗教」など、本のジャンルごとに分かれている(区分は出版社毎に異なる)。
また、文庫や新書、選書・叢書レーベルは、それだけで発行点数が膨大であるため、それぞれ独立した目録が発行されていることが多い。
文庫の場合は、国内作家と海外作家、或いは文庫内のレーベル毎(角川文庫と角川ホラー文庫、ちくま文庫とちくま学芸文庫、ハヤカワ文庫の各レーベルなど)に分かれていることが多い。
新書や選書・叢書の場合は、基本的に刊行された順につけられた通し番号に沿って並んでいる。
どの目録にも索引がついており、書名もしくは著者名から書物を探すことが可能である。
また、一部の出版社は品切れ一覧を掲載しており、絶版となったタイトルも探すことができる。但し、それらの書物に関する詳細な書誌情報は掲載されていないことが殆どである。
何が載っている?
出版社毎に違いはあれど、概ね以下のような書誌情報が記載されている。
書名
著者名
価格
発行年月
簡単な内容紹介
(文庫・新書・叢書なら)分類番号
ISBN(書物1点につき1つ与えられる、10桁か13桁の番号)
中には書影(表紙の画像)が掲載された目録も存在する(実業之日本社文庫など)。
また、書名に☆や*といった記号がついていることがある(記号は出版社毎に異なる)。これらは在庫僅少の本を表す記号であり、そう遠くないうちに品切れ・絶版となる可能性を示している。気になる本にそういった記号がついていた場合は、早急に購入することをお薦めする。
ISBNは、国別コード(「4-」もしくは「978-4-」)か、それに出版社コードを加えたもの(岩波書店なら「4-00-」もしくは「978-4-00-」)が省略されていることが多い。多くの場合は巻頭の注意書きにその旨が明記されているので(だいわ文庫は何故か注意書きがないが)、適宜補完して読むことが求められる。
値段は?
出版目録とひとくちに言っても、軽いブックレット的なものから、1cm以上の厚みを誇るものまで存在するが、それらは基本的に無料である。
多くは書店店頭のレジ横などに置かれ、余程明記されていない限り、自由に持ち帰ることができる。出版社によっては送付までしてくれるのは、別記事に記載した通りである。
同じコーナーには出版社のPR誌が置かれていることもしばしばあるが、ここでは省略する。
有料のものにはどんなものがある?
上に「基本的に」と書いた通り、有料の目録も存在する。その一つに「角川文庫解説目録2020」がある。
角川文庫の70周年を記念して刊行されたものであり、人気作家12人によるエッセイが収録されたのが、有料である主な理由となっている(過去の目録なので当然絶版、電子書籍は現在も無料)。
上記は特殊な例だが、他にもそのレーベルで刊行された書物を全て掲載した目録には、有料のものが多い。代表的なのは岩波文庫と岩波新書の解説総目録である。
これらは、目録制作当時に刊行されていた全ての岩波文庫・岩波新書の書物を全て網羅している。
他にも、サンリオSF文庫や創元SF文庫、ハヤカワ文庫(SF・JA)といったSF小説の文庫レーベルには、全作品を網羅した有料の解説総目録が存在する。マニアが多いジャンルならではの傾向と言えそうだ。
終わりに
以上の通り、簡単にではあるが出版目録について書き散らしてみた。
私は出版目録のことがかなり好きであり、馴染みのない出版社のものでも片っ端から持ち帰っては、初めのページから読んで気になるタイトルをメモしていくことを趣味としている。そこまでしろとは言わないが、書物との出会いの場として、出版目録はかなり有効なツールであるということを知っていただけたら大変嬉しい。
この記事が出版目録を読むきっかけになり、何かのお役に立つことができれば幸いである。