060構図のはなし3(いい写真とは9)
卒業アルバムと学校写真のエキスパート 一級写真技能士の田賀谷浩です。今回もお目通しいただきありがとうございます。分割構図の3回目にして、いよいよこの話を語る時が来ました。
黄金分割
四角形には2本の対角線があり、1本の対角線に対して残りの2角から垂線を2本ずつ引く事が出来ます。図解すると下図のようになりますね。
二つを重ね合わせると、このように4つの交点が出来るわけです。
交点のいずれかに主要なモチーフを配置する画面の分割法を黄金分割と言います。もちろん縦位置の場合も同様です。
ラス・メニーナスに見る実例
絵画の中の絵画と呼ばれる ベラスケス作の「ラス・メニーナス」。私自身も仰せの通りと頷ける、とても大好きな絵になります。なぜそれだけ高い評価が為されるのかを語る場では無いので、黄金分割に限って触れましょう。
さてこの絵は誰を主体として描いているのでしょう?パッと見では中央に居るマルガリータ王女に見えますし、にしては上半分まったく無駄な空間に見えてしまいます が、対角線と垂線を引くと一目瞭然…。
マルガリータ王女の父にして当時のスペイン国王フェリペ4世その人が正面の鏡に映っているではないですか!この絵の主体は鏡の中に小さく、しかもぼんやりぼかして描かれている国王陛下だったのです。こうして見ると上半分の空間があってこその構図であると分かります。
用いられている構図は黄金分割だけではありませんが今回はここまで。
実はこれも黄金分割でした・・・
ということで前回触れた飛行機の窓からの景色
何を主体としたかったか と言うと・・・
黄金分割の位置にある積乱雲の雲間に輝く夕陽 だったのです。
夕陽を主体としながら、水平線とシルエットになった陸の部分とを使って画面をそれぞれ1:√3で分割しての画面構成での撮影でした。(他には翼と燃料タンクとで縦と横に2等分割も作ってますけど)
一見すると下は要らない部分じゃないか、横長で撮ればいいんじゃないかと思われますが、積乱雲と飛行機の翼との大きさの対比や縦長の窓から見た景色というシチュエーションを考えるとこれで正解に思えますし、画面に入る水平線の位置に分割構図の意味を持たせる事も出来ます。
ということで雲間の夕陽だけをズバッと拡大して撮ったカットよりも、画面からより多くの言葉が語られているんじゃないかと、手前味噌ながら思っている次第です。
私自身 黄金分割の構図が好きなこともあって、スナップ撮影する折でも主体を交点のいずれかに持っていく画面構成にしたがります。そうすることでのメリットとして一見無駄な余白に思われる画面の空きが必要な空間として処理する事も出来るわけです。
ちょっとした応用として
ただファインダーを覗いて対角線と垂線の交点を意識するのはとても難しいですよね。実は比較的容易に似たような結果を導きやすい方法があります。
それは画面を3分割したときに出来る交点を用いる方法です。
縦横に3分割線を引くと交点が4つ出来ますね。それと黄金分割の交点とを対比すると・・・
微妙にはズレますがそこそこ近い場所であることが分かりますね。なので主体となる被写体を画面の1:2に分割した箇所に配置して撮ると黄金分割を意識出来るような意外といい結果が出るのです。
この手を業務の場でよく用いるのが、例えば運動会の組体操で一人演技をしている場面とか、遠足のお弁当などで他の子と離れ一人でいる状態を撮らざるを得ない時とかのように否応なしに周囲に余白が出来てしまうが何とか意味を持たせられないかという場合ですね。よろしければ是非お試しになってみてください。
ということで分割構図の集大成として大好きな黄金分割をご披露して今回を締めたいと思います。お読みいただきありがとうございました。