2階の高さの竹馬
僕が通っていた幼稚園は一階が幼稚園で、
二階は隣の小学校の校舎となっている不思議な造りをしていた。
昭和最後の時代、僕の通う幼稚園では一輪車なんて洒落たものはなく、遊具は高壁(成人男性程の身長の高さがあり、それによじ登って反対側に越えていく木の平べったい遊具)と、竹馬、縄跳びが主流で、後はひたすらドッチボールで遊ぶ毎日だった。
竹馬も今では考えられないが高さが異常だった。
立てればゆうに建物の二階まで届くであろう高さであり、乗るときは当然ジャングルジムの上からといった体だった。
乗れば二階の高さ、二階は小学校の校舎、僕らは少し大人なその校舎内を竹馬を上手く操りながら覗いてみるのが楽しみだった。
誤解がないように言っておくと、何も僕の身体能力が高かったという自慢話ではない。僕の幼稚園では男児は普通にやっていたのだ。
ある日、いつものようにプールの屋根から飛び乗った竹馬で、隣にいたO君が背中から落下した。
それは、竹馬から落ちたという表現よりも「落下」したがしっくりくる、そんな高さだった。
彼はあまりの驚きと痛みで泣くこともせず、その場にうずくまった。僕は落下したことによって生まれる恐怖を友達伝いに知ることになったのだ。
一度、恐怖を覚えた遊びは幼心に避ける道を選ぶ。
僕たちも例に漏れず、その日を境に竹馬はただの棒になり、ドッチボールにのめり込むきっかけとなった。