『一般人間学』第01講まとめby森章吾
■ 第01講全体を貫く視点
第01講は序論として、教育を霊的世界との関連で捉え次のような内容を語っている。
・この教育が霊的視点から物質主義を超えていくものである点
・教育行為を霊界と結びつけるためのマントラ
・ヴァルドルフ学校設立者エミール・モルトに働きかけた霊への感謝
・霊的歴史観からの教育への問題意識
・死後を意識するか、誕生前を意識するか
胎教は無意味
・誕生前の人間存在、誕生、誕生後の呼吸の霊的な意味での重要性
・睡眠と覚醒の交代を正しく育てる
・教育者としての霊的成長の重要性
■ 基礎づけ:霊界とのつながりは新たな教育の前提条件(1~2)
▲《主知的・情緒的とモラル的・霊的》-物質主義と霊学(1)
シュタイナー教育の課題は、単に知識や感じ方を育てるだけではなく、最高度の意味で霊的な視点からのモラル的行為までも育てることにある。
--->「霊的とは」
それには霊的諸力との協働が欠かせない。そこで天使やその上位にある高次存在に向けての一種の祈りとなるマントラを与えた。
イマギナチオーン的:アンゲロイ(天使)
インスピラチオーン的:アルヒアンゲロイ(大天使)
イントゥイチオーン的:アルヒャイ(人格霊)
【参考】修行と祈り
共に地上と天上を結びつけるために行われる。修行は人間の側が昇っていくことで天上とつながり、祈りは天上を地上へと呼び下ろすことで両者がつながる。
▲《世界秩序の祝祭的行為》(2)
学校設立とは《世界秩序の祝祭的行為》であり、学校設立へとエミール・モルト氏を導いた時代霊へ謝辞が送られた。
■ 第五文化期の教育課題:物質主義とエゴイズムの克服(3~9)
▲時代の状況と時代からの要求(3~6)
シュタイナー教育では後アトランティス第五文化期にふさわしい課題を遂行していかなくてはならない。それ以前の文化期とその主な特徴は次の通りである。
アトランティス期(地球紀に入って4番目の大区分)
後アトランティス期(さらに各2160年の7つの文化期に区分される)
第1文化期:古インド文化期、意識はほぼ霊界にのみ向いている
第2文化期:ペルシャ文化期、霊界から得た力で地上に作用
第3文化期:エジプト・カルデア文化期、感覚界に目覚め霊界と交流
第4文化期:ギリシャ・ラテン文化期、物質への傾倒とその過剰
第5文化期:(ゲルマン文化期)、物質主義の克服
さらに第6,7と続く。詳しくは『神秘学概論』参照。
過去のものである物質主義がまだ支配的で、人類の現代の課題を見つけられないでいる人が多い。しかし、教師は目覚めている必要がある。
▲現代の底流であるエゴイズム(7~8)
現代文化は精神生活に至るまでエゴイズムに陥っている。
シュタイナーは言及していないが、これも物質主義の帰結だろう。なぜなら、私たちの物質的身体はたとえば「食べる」ということにおいてもエゴイズムが必然である。その「自己の存続」を死後にまで望むようになっている。このエゴイズムを克服するためには、死の対極である誕生に意識を向ける必要がある。
【参考】誕生前の人間存在
死後、そのほとんどを削ぎ落とした人間は、それが最高度に達すると再び地上へ受肉しようとする。そのときには人間の霊的部分である自我(さらに詳しく見れば霊人、生命霊、霊我)だけの存在である。それが受肉の準備のなかでまず魂(意識魂、悟性魂、感受魂)と結びつく。そしてこれがエーテル体と肉体を纏おうとする。具体的には、この霊+魂は人間の受精卵に受肉しなくてはならない。海水に入り込んでも地上で生きることはできない。
こうした誕生前の霊的な営みを教育は受け継ぐのであり、そのことへの意識は重要である。
▲誕生前教育?(9)
誕生前の人間存在は高次存在たちに守られている。胎教の作用がその高次存在たちの働きかけを上回ることなどないので、胎教は無駄である。妊婦がモラル的、知的に正しい生活をすることが一番よい。
■ 霊・魂と身体の結びつきとしての誕生(10~12)
▲霊・魂と身体との結合(10~12)
誕生とは霊+魂が地上的なものと結びつくことである。
霊+魂側
霊:霊人、生命霊、霊我
魂:意識魂、悟性・感情魂、感受魂
地上側
体:アストラル体、エーテル体、物質体
外界:動物界、植物界、鉱物界
これらの区分についての詳細は『神智学』第1章:人間の本質を参照。
--->「エーテル体、アストラル体とは」
■ 二つの教育的課題:呼吸を教えることと睡眠を教えること(13~18)
▲呼吸、および人間と外界の関係(13)
子どもでは霊魂的なものと地上的なものがきちんと結びついていない。その結びつきを構築するにあたっては呼吸が最も重要である。したがって、正しい呼吸を学び取らせる必要がある。
▲呼吸と代謝作用(14)
血液循環と呼吸は外界から取り込まれた物質を身体全体に運ぶので、代謝系と関係する。
▲呼吸と神経感覚系の営み(15)
吸気では脳水の圧力が上がり、呼気では下がることを介し呼吸は神経感覚系とも関連している。しかし、子どもではこちら側に調和ができあがっていない。
▲呼吸の営みと発達(16)
呼吸を神経感覚系の営みと調和させることが、子どもの教育の課題である。
▲睡眠と覚醒の交代(17)
【参考】大人における睡眠と覚醒の交代(この状態を目指す)
覚醒時(4構成体が結合) 睡眠時(2+2に分離)
自我 自我
アストラル体 アストラル体
エーテル体 --分離--
物質体 エーテル体
物質体
睡眠時の自我+アストラル体は昼間の体験を霊界に持ち込む。
すると高次存在がそこに作用し、発展させたかたちに人間に返す。
人間は翌日それを地上に持ち込む。
子どもはよく眠るが、上述の地上界と霊界の橋渡しの作業は未熟である。
教育ではこれができるように導く。
▲呼吸と眠りについてのまとめ(18)
吸気(睡眠)と呼気(覚醒)の正しい交代を教育することが最重要課題である。教育者は、個々の教育活動が受肉的か離肉的かを把握していなくてはならない。
【参考】受肉的か離肉的かの一つの指針
1.年齢にふさわしく興味深い知的な教材、たとえば算数を教える。
2.メルヘンを語り聴かせる。
1.は目覚め的、受肉的、2.は睡眠的、離肉的である。1.の後、子どもの手はやや冷たく、2.の後では逆に温かい。
■ 教師の自己教育(19)
▲教師の自己教育(19)
・何を教えるか
・どのように教えるか
・教師がどのような存在か
教育において上述の三つは重要であるにしろ、最も重要なのは最後の「教師がどのような存在か」である。そしてこれは、教師自身が霊的世界とつながりを持つか、あるいは持とうとするかで変わってくる。
表面的な嘲笑に負けずに、存在としての自分を磨く。
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