ドラマ「モテキ」
最近Netflixでドラマ「モテキ」を見た。前々から見たいと思っていた。森山未來が好きだし、とにかく内容が私好みだ。
もうめちゃくちゃ面白かった。なんだあのドラマは!最高だった。フィクションに頼るところに白々しさがない。むしろ全体的にリアリティたっぷりで生々しいし、そこには経験済みの感情がかなりある。見てるこっちが苦しめられるほどに。
主人公の藤本幸世はこちらを苛立たせるほど情けなくだらしがない、通称ヤレないヤツ。彼なりに努力している様子は見受けられるが、タイミングが悪いのでだめ。そしてときにタイミングとかどうしようもできないことのせいにならない程クズな言動を見せる。でもそれらは皮肉にも、彼の長年培われてきた劣等感の産物なのだ。惨めである。そして、悔しいが同情できる。私もそうだ。子供の時こそ自信があって、というか自信あるとかないとか、考えたこともなかった。しかし大学、就職と段階を踏むごとに自分がダメ人間であることに気付いた。というかダメになっていた。急激に襲いくる劣等感。臍を曲げる心。今、小学生時代にしつこくやらされたQ-Uテストをやったら個人面談確定だ。話が逸れた。
しかし彼は、1話目から最終話まで、立ち直るための救いを常に携えていた。音楽である。毎回複数の好みのいい音楽が割としっかり尺を保って流れる。時に歌詞まで字幕に出る。エンディングにはちゃんと紹介される。面白い。音楽で立ち直ることは多くの人がやることである。だから行動そのものは珍しくはない。ただ、ドラマにおけるBGMの扱いとしては珍しい。BGMが主人公と強く結びついている。それは彼の気分、趣味、生活を映し出していて、30分の放送時間以上の彼を知ることができる。すごいなぁ。こういうドラマなら飽きずに見続けられるのに。
最終話で流れたイースタンユースの曲、なんとなく検索したら佐伯祐三の絵がジャケ写だった。最近見に行った東京ステーションギャラリーの展示でこの絵を見たばかりだ。佐伯祐三の短すぎる生涯。そこにあった若い葛藤、命の熱量を投影したらしい。最後の最後で、アート好きな心までがっちり奪われてしまった。恐ろしいドラマだ。
モテキは映画版もある。こちらのヒロインはなんと長澤まさみ。"セカチュー"コンビ!こちらも期待大だ。