十二月・三月・八月
或る構図
隣人は薔薇園へ
学徒は鈍行列車へと
夫人は洋裁教室へゆき
皆悉く焼かれき、日にて
:
立日差
鼠の死骸の干乾び
舗装路に
轢き躙る
自動車の列なりて町
黒死病の町
橋梁の足
月曜の銀行
暗室
藍青の鶏冠もて通るナチズム
戦勝の化粧して
けばけばしき母へ
白燐弾は
焼夷弾ならざるか
瞠れセム・ヤペテの仔等を
敗戦の前夜
母焼く
姉焼く
妹に
奔馬性結核のおとうとと鳥
:
喀血の容にひろごりやまず点々とうろくづのはね展ばして 展翅