見出し画像

12月を歩く

「2024年の写真」という記事を投稿することにより、今年の写真生活は締めたつもりでした。しかし、先日1日中濃い霧と霜に覆われた日があり、「これは撮らなければ」と予定変更してRolleiflex片手に森へ写真を撮りに行きました。

ところで、毎年この時期になると必ず思い出す立原えりかの短編小説があります。擬人化された12月が、暮れも押し迫った夜の街を歩くのです。まだ年が明ける前に、酔っ払って「あけましておめでとう〜」と声をかける人に、「まだ12月は残っていますよ。この時間を大切にしてください」と12月は答える…、そんな話だったと思います。どの物語にもヨーロッパの雰囲気がそこはかとなく漂っていた(少なくとも当時少女だった私はそう感じました)立原えりかの短編集を次々と夢中になって読んでいたのは小学生も低学年の頃ですから、この短い物語のタイトルはもちろんのこと、はっきりしたことはもはや思い出せません。それでも、12月の残すところあと2日とか1日とかになると、ついつい次の年のことを考えてしまう私に、毎年どこかから「まだ12月は残っています」という12月の声が聞こえるような気がして、それとともにこの物語を思い出すのです。

先日の、霧と霜という凍てつく美しい冬の風景も、「過ぎゆく12月という、この時間を大切にしてください」と12月がもたらしたものだったのでは。そんなふうに考えたりしています。