見出し画像

Tübingen

今日はチュービンゲン(Tübingen)の写真を投稿します。仕事がある夫をシュトゥットガルト(Stuttgart)に残し、10年前の夏、一人で出かけた街です。写真はで全てRolleiflex 2.8FとPRO400Hで撮影しました。

チュービンゲンには1477年に創設された古い大学があり、その昔、私の古い友人がこの大学に留学していました。
「チュービンゲンってどんなところ?」
「すごい田舎だよ。けっこう方言がきつくて、大変だった」
かつてそんな言葉を交わしたことを、シュトゥットガルトから乗った列車に一人揺られながら懐かしく思い出しました。

街の広場に面した書店では、100年ほど前にヘルマン・ヘッセが働いていました。10年前も残っていたその書店で地図を買ったあと、それを片手にこれといった当てもなく、小さな旧市街を一人歩き回りました。時折パラパラと小雨が降る蒸し暑い日でした。この時撮った写真の色合いは少しいつもとは違うようで、その湿度が写り込んでいるような気がします。歩きながら、かつてこの街で暮らした友人のことを考え続けました。「へえ、こんなところで勉強していたんだ」とか「どこに住んでいたんだろう」とか。その都度、足を止めあたりを見回したりしました。

旧市街南辺に沿ってネッカー川が流れており、この川を下ると同じく古い大学がある都市、ハイデルベルク(Heidelberg)へ至ります。川には緑豊かな中洲があり、沢山の学生が三々五々と腰をおろして熱心に言葉を交わしていました。そんな姿を見て、羨ましいなあと思ったものです。とはいえ、当時はまだドイツに移住してさほど時間は経っておらず、猛烈に忙しかった仕事を退職し予定のない毎日を心底満喫していた私は、この時ドイツの大学に進学してみようなどと考えることはありませんでした。そんな10年前の私に「10年後はあなたも大学生やってるわよ」と声をかけたら、一体どんな顔をするでしょうか。
実際のドイツでの私の大学生活は、この時羨ましいと思った青春を謳歌するようなものではなく、例え誰かに「ドイツでの大学生活、どんな感じ?」と聞かれたとしても、「毎日毎日ひたすら本を読んでいる」としか答えようがないのです。大学生活とは本来こうあるべきなのででしょうか、それともちょっと寂しいと感じるべきなのでしょうか。

当時撮った写真を見ながら、もしかしたら、「ドイツの大学で学ぶこと」がボンヤリと頭の中に入り込んだのは、チュービンゲンで目の前に見た学生たちの姿がきっかけだったのかもしれないなどと、ふと思いました。それが具体的な姿をとり表面に出てくるまで、まだあと7年の時を経なければならないのですが。