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静かなプラハを旅する
欧州の冬休み。国によって事情は異なると思いますが、少なからずの国、特にカトリックが優勢な国では1月6日まで続くところが多いようです。この6日は、例えば英語ではEpiphanyと言う公現の祝日で、キリストの誕生を祝うためにMagiと呼ばれる東方の三博士がベツレヘムを訪れたことを祝う日なのです。
数年前、年始から1月7日までヴェニスに滞在したことがあります。この時、1月5日までは観光客であふれており狭い道を立ち止まらずに真っ直ぐ歩くことが出来なかったヴェニスが、1月6日には驚くほどガラガラになりました。この一夜の変化はかなり衝撃的で、この時に私は気付いたのです。
「欧州の名だたる観光地に来るなら、1月6日以降が狙い時なのかもしれない。」
その後間もなくコロナウィルスが来襲し、しばらくこの件についてはすっかり忘れていましたが、去年冬休みの旅行の計画をしている時にふと思い出しました。見どころ盛りだくさんの欧州にあって、その筆頭に数え上げることができる超有名観光地(すなわち、いつ行っても大混雑)のプラハへ1月6日から行ってみよう!更なるプラスポイントはこの6日が月曜日であったことです。欧州世間一般的な冬休み終了直後の平日なら間違いなく空いている、空いているに違いない。
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結果を最初に述べてしまうと、「空いているプラハをゆっくり歩きたい」、この思惑は見事に実現しました。見てください。このプラハ城入り口。これをガラガラと言わずして何と言おうか。
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プラハには何度も来ていますが、名だたる観光名所はいつも大混在。チケット購入とか入館待ちなどで並ぶ観光客の列は容赦なく年々長くなっていくため、例えば名所の筆頭に上がるであろうプラハ城やストラホフ修道院などを見学することは、長い間ありませんでした。しかし、今回は実に観光客らしい観光をすることができました。プラハ城のチケットを購入する広いホールに私たち2人以外誰もいないことを目にした時は、思わずバンザイが出そうになりました。まさに「思惑大当たり」という感じです。
一番最後の写真はストラホフ修道院内の写真です。奥に人影がありますが、彼らは有名な図書館を見るために立ち止まっている人たちです。一度ここを訪れたことがある方ならお分かりになると思いますが、この人数は実に画期的に少ないのです。10年ほど前の夏にここを訪れた時は、この図書館の前は身動きができないほどの人だかりができていて、館内は蒸し風呂状態。当該図書館は人の頭の間からチラ見するのが精一杯でした。それを思い出すと、その当時なら想像もできなかったくらい空いています。今回はこの廊下を行ったり来たりしながら、好きなだけ何度も美しい図書館を堪能することができました。
また、どこを歩いても人が少ないため、「他の方の邪魔にならないように」とその動きを気にすることなく、ゆっくり写真を撮ることができた。ついついシャッターを押す回数も増えて、今回はわずか数日間で16本も撮影してしまいました。途中フィルムが足りなくなってしまい、プラハの写真店に駆け込み追加購入する一幕も。その山のように撮った写真を、これから何回かに分けて少しずつここに投稿していこうと思います。
…ところでこの時期の中欧の旅行、実は良いことばかりではありません。今回はたまたま運良く比較的気温が高く(最低気温が-1℃とか-2℃で収まった)天気も安定している時期に当たったので最高の旅行となりましたが、実は出発の2日前は滑走路凍結によりフランクフルト空港発の飛行機の大半がキャンセルされました。ですから、出発まで日に何度もお天気アプリを見るという落ち着かない日々を過ごしたのです。降雪も大変ですが、この時期中欧ではさほど珍しくない路面凍結は更に危険です。場合によっては道路がスケートリンクのようにツルツルになってしまうからです(この状態を適切に表す形容詞としてspiegelglatt、すなわち「鏡のように滑らか」というドイツ語の単語があるくらいです)。実際、私の夫の同僚は昨年のこの時期、凍結した路面の上で滑って腰を強打し、長期間療養しなければなりませんでした。路面凍結に慣れていない私は、こうなると最早うまく歩くことができないので、凍結している間はなるべく外に出ないようにしています。
幸い旅行出発日の気温は前日までと比較すると高く、私たちのプラハ行きの飛行機は定刻でプラハに到着しました。それでも数日間のプラハ滞在のうち、いつ天候急変するかわからないため、簡易アイゼンと出歩けなくなった日に読む本を何冊か持参して乗り込みました。
このように冬の旅には不確定要素もたくさんありますから、この季節に中欧や北欧へのご旅行を検討される場合は、事前に十分にこの要素を織り込んでください。特に天気が悪い方向へ転んでしまった場合は、歩き回るのが困難になったり、交通機関に多大な影響が及ぶことも少なからずありますので。