写真集:地方都市とニューカラー(栃木県 宇都宮)
コロナ禍に北関東へ移住して早数年。生活環境には満足している一方、ストリートスナップを撮るという側面では物足りなさを感じます。人が集まる都心は同じ道でも常に変化があるのに対し、地方だとスナップ的に「面白い」ところが固定化してしまい、季節とか天気とかの外部要因に頼らざるを得ない感じ。これが最近悩んでいる「マンネリ」の原因だと考えています。
そんな「外部要因」の1つに、富士フィルムの「フィルムシミュレーション」を使っています。私の愛機 X-T5には「ノスタルジックネガ」という設定があり、クラシックネガに続いて最近のお気に入り。70年代に出てきた「アメリカンニューカラー」のような表現を目指しているそうで、HPを引用すると「独特の諧調表現がハイライト部を柔らかくアンバーに描写する一方で、シャドウ部はディテールを残したままノリの良い色味を実現し、叙情的に切り取ることが出来ます」とのこと。
この「アメリカンニューカラー」とは何なのか。調べてみるとStephen ShoreやWilliam Egglestonという名前と一緒に、70年代アメリカの片田舎の写真が色々出てきます。写真に「色」がついたことで新たな表現を手に入れた写真家が、色を求めてあちこち巡りシャッターを切り続けていた事が想像されます。
国や時代は違えど「都心から離れた場所」という意味では、欲しい何かがそこにありそうなスナップ写真。地方故に古い写真集を手にできないという現実にも色々感じることはありますが、ならばと思いせっかく最新機種に入っている「ノスタルジックネガ」を使って、改めて自称北関東最大都市・宇都宮の中心街を撮り歩いてきました。
設定をちょっとイジっていて、カラー設定を少し強めてとグレインエフェクトを最強にしています。アンバーはもちろんシアンまで強く出る色味に、フィルム写真かとも思わせる粒状感。ピーキーな設定で撮影する餃子の街はどのように映るのか。
郷土玩具である「黄鮒」の影響か、昭和レトロな雰囲気が残っているのか、ビビッドカラーが多めな事に改めて驚かされます。夜スナップ等で光を求めることはあっても、色を求めて写真を撮ることはあまりなかったので新鮮に感じます。ちょっとカラーはやりすぎたか? いやこれはこれでアリな気はする。
広角単焦点レンズ1本でスナップしてきたのですが、最近50mmよりこれくらいの画角の方が落ち着くようになってきました。X-T5にはクロップ機能もあるので、広い分には困らないというのも尚良し。何ならもうちょっと広くても良かったかもしれません。
WBがオートだったのでアンバー寄りを調整しようとした結果なのでしょうけど、暗いところに近づくとシアンが強く出るのは表現として面白いと思いました。夕暮れや街灯が前進色なので、アクセントとしてちゃんと目を惹いています。
アメリカンニューカラーといえばクラッシクなアメ車。見たところそれらしいアメ車は見られませんが、JR宇都宮駅前の駐車場はお気に入りスポットなのでついでに寄ってきました。ただでさえアンバー寄りな設定とやり過ぎというくらい赤い街灯に照らされ、Velviaで撮影しても面白い場所です。撮影したときは失敗したと思ったブレブレタクシーも、こういう作風だと逆にアリだと思います。
新しい試みとして「色」を探す撮影をしてみました。彩度の調整はちょっと必要かもですが、「アメリカンニューカラー」という分野はもうちょっと深堀りしたいですね。
ただどこに行っても写真集の現物が見当たらない。新宿か秋葉原・神保町辺りまで行く機会があればワンチャン。ついでに目黒の写真展にも寄りたいし。これが地方の情報格差というやつですね。インプットが足りない。
【撮影情報】
カメラ:X-T5
レンズ:XF 18mm F2 R
撮影場所:栃木県宇都宮市
撮影日:2024/03/29
おまけ