生きづらさの正体を『花束みたいな恋をした』『すばらしき世界』に観る
「学生たちはね、ある限られた箱の中で、個性をだせって言われているようなものなんですよ」
表参道の昼下がり。オープンカフェで、まだ肌寒い青空のもと、大学のキャリアセンターで特任教授をされている方と、コーヒーを飲みながらそんな話をしていました。
ふっと『花束みたいな恋をした』と『すばらしき世界』のことを思い出しました。
生きずらさの原因はなんだろう
「『ゴールデンカムイ』を読んでも、ぜんぜん頭にはいってこないんだよ!」
と、なげく『花束みたいな恋をした』の麦くん。
「はははぁ、似てますねぇ」
と、同僚スタッフをバカにする先輩スタッフたちに同調する『すばらしき世界』の三上さん。
異なる映画の主人公たちが馴染もうとしている世界は、ぼくらが生きている世界です。
ふたりの姿は切ない。それは、ぼくらのなかに、麦くんも三上さんもいるから。だれもが、文字どおり『一所懸命』に生きているのに、その場所でむくわれているとはいいがたい。
カッコつきの自分らしさ
2本の映画と、冒頭の話を聞いて、ある仮説が浮かびました。
「自分らしく生きていいんだよ」とぼくらは言われたし、言うかもしれない。
けれど、
「自分らしく生きていいんだよ(まぁ箱からはみ出さない条件で!それが社会で生きていくってことだから)」
と、カッコつき。
それは、無意識のうちにぼくらのなかに刻み込まれてしまっている。だから、誰もが、なんとな~く生きづらい。
自分らしく生きるヒント
「先生、ぼくらの世界は、初心者の書く物語に似ていますね。社会の側に、自分を合わせてしまうような」
初心者の作品は、ストーリーにそって登場人物たちを動かしてしまいがちです。話は進みますが、登場人物の魅力が乏しい作品になります。
シナリオでも、小説でも、魅力的な作品は登場人物のキャラクターが生き生きと描かれています。
なによりも大切なのは、キャラクターです。
そういうと、教授は
「ホント、そうかもしれませんね」
といったまま、コーヒーを飲む手を止めて、
「であれば、この日常を自分らしく生きるヒントは、シナリオ術のなかにあるんじゃないですか」
「たしかに……」
ぼくは、冷めてしまったコーヒーをぐいッと飲み干しながら、来年度、大学で学生のキャラクター主体のキャリアプランの授業を作れないだろうか、と思うのでした。
▼まえにこんなことを、大学でやったのでした▼
▼映画『花束みたいな恋をした』公式サイト▼
▼『すばらしき世界』▼
映画を観た帰り道、真心ブラザーズの『素晴らしきこの世界』を無性に聴きたくなりました。
シナリオ・センターは、1970年に優秀なシナリオライター・脚本家、プロデューサー、ディレクターの養成を目的に創立。
ジェームス三木さん、内館牧子さん、岡田惠和さんなど700名以上の脚本家、小説家を輩出するの学校です。地味にすごい。今年、51年目。
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