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映画『コーダ あいのうた』と『エール!』からみるディテールのたいせつさ
シナリオ・センターのあらいです。
今年の米アカデミー賞は、なにかと話題が豊富した。
「こりゃ、感動するわいなぁ」と思いながら観た『コーダ あいのうた』。アカデミー賞作品賞を受賞されたとか。おめでとうございます!
で、『コーダ あいのうた』は、2015年にフランスで製作された『エール』のリメイク版だということで、昨日『エール』をアマゾンプライムで観てみました。
と言っても、どちらがいいとか、そういう野暮なことではなく。
この作品を見比べることで、シナリオ・センターの受講生の方が、つまずきがちな『テーマ』『モチーフ』『素材』について整理したいと思います。
そうすると、作品の肝が、ディテールだってことがよくわかると思うのです。
『コーダ』と『エール』のテーマとモチーフ
当たり前ですが、リメイクなので、両作品のテーマとモチーフは、一緒です。簡単に整理すると、
『コーダ』『エール』のテーマ 人生をふみ出す勇気の大切さ
じゃないかと思います。細かい、言葉のニュアンスでなんとでも言えると思いますが。
『コーダ』『エール』のモチーフ 聴覚障害を持つ家族 歌の才能
モチーフというのは、テーマを肉体化するものと、新井一さんは言っていますが、ちょっとむずかしい。
・その物語のキーになるもの
もしくは、
・打合せとかで、「次は、○○の話でいきましょう」の○○
もしくは、
・タイトルなしで、「あの、ほら、男子校生のシンクロの話だよ」とか
「スイングバンドをやる女子高生の話だよ」とか言ってわかるもの
でしょうか。
で、『エール』と、そのリメイク版『コーダ』は、テーマとモチーフまでは一緒なわけです。
違いは、そう『素材』にでます。
2作品を『素材』から比べてみる
作品の『素材』は、天地人で整理してみるとわかりやすいと思います。
『コーダ』の素材
・天 現代
・地 アメリカの港町
・人 家業の漁師を手伝う女子高生のルビー
ルビーの家族
ルビーの友達、先生 など
『エール』の素材
・天 現代
・地 フランスの騒擾
・人 家業の農業を手伝う女子中学生のポーラ
ポーラの家族
ポーラの友達、先生 など
まず、『地』が異なります。『コーダ』は港町で、『エール』は農場。そのため、『承』で、主人公やその家族に襲いかかる障害が異なります。
『人』の部分では、登場人物の配置などはあまり変りませんが、『コーダ』では兄弟が兄になることで、『エール』にはない、兄妹間の葛藤と絆が強く描かれます。
『人』の部分で言うと、主人公のルビーとポーラは、それほど違いがないように思います。どちらも家族思いで、自分に自信が持てず、引っ込み思案です。
そう言った意味では、主人公を取り巻く『人』と、『地』による障害のバリエーションによって、この二つ作品は、シーンそれぞれのオリジナリティを担保しています。
ディテールって、シーンのこと
と言うことは、作品のオリジナリティって、どこにあるのかというと、ずばりシーンです。
変わったテーマや、変わったモチーフを探しがちですが、シナリオでのオリジナリティは、シーンによって生まれます。
モチーフの目新しさが必要になるのは、企画の段階です。企画書では、「今までにない切り口」という言葉で、モチーフが探されます。
そのせいか、シナリオを学ぶ中でも、変わったモチーフを探しがちですし、そこが作家性みたいに思われがちですが、シナリオの上達を考えた時に、モチーフ探しに手間取るよりも、ディテールの描写に時間を使った方が断然いいわけです。だって、本来、シーンを描く力が脚本家には求められるのですから。シーンのオリジナリティこそが、脚本家の力だと思います。
そこがなければ、よいモチーフが浮かんでも、いいシーンを描けないわけですから。
だから、シナリオ・センターでは『20枚シナリオ』を何作も書くわけです。それは、シーンを描く力を磨くためです。
『コーダ』と『リトル・ダンサー』を比べてみて
時間がある方は、『コーダ』と『リトル・ダンサー』をぜひ、比べてほしいです。それも、『コーダ』で主人公が
「歌っている時、どんな気分だい?」と音楽講師に聞かれるシーンと、
『リトル・ダンサー』で主人公が、
「踊っている時、どんな気分だい?」と面接官に聞かれるシーンです。
なぜ、この二つなのかというと、実はこの2作品は、『テーマ』は一緒で、『モチーフ』は歌か、ダンスかの違いで、家族になかなか認められないと言うのは、同じなのです。
で、『素材』が違うだけで『構成』もほぼ、一緒です。
でも、上記のシーンでの主人公のセリフ、振る舞いは全く異なります。だからこそ、自分にとって大切なものについて聞かれた時の、主人公のリアクションに注目してほしいのです。
神は細部に宿る、と言いますが、シナリオの場合は、神はディテールに宿る、って言ってもいいのではないかと思います。
シナリオ・センターのあらいでした。
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