見出し画像

アナログゲームと非認知能力。

ハブラボでは学童遊びの中心にアナログゲームを置いています。
所謂、ボードゲームやカードゲームですね。
それを、一押ししているわけです。
何故かと言えば、一つ目の理由は
「ただ単純に楽しい!」ということが挙げられます。

■アナログゲームは楽しい!

子どもたちが楽しく遊んでいる姿を見るのは嬉しいですし、
その子どもたちの輪に大人も一緒に入れるのは良いものです。
また、子どもたちの試行錯誤しながら
攻略を考えている姿や工程が見られるのも楽しみの一つですね。

中には、運の要素も左右するゲームもあり、
大人だって負けるときは負けます。
子どもが大人に勝てて「やったー!」と思える経験も、
アナログゲームならでは。

逆に、負けても「くやしー! でも、面白かった!」が
得られるようになれば、その子の情緒が安定して
健やかに伸びていくことにも繋がります。
総じて「アナログゲームって楽しんいんだ!」ってことが
根本にあるからこそ、ハブラボでは押しているのです。

■その中から・・・非認知能力を伸ばすことにつながれば・・・。

最近、非認知能力という言葉を聞くことが増えてきました。
簡単に言えば、テストでは測れない(数値化できない)能力のことですね。喜びや怒りのコントロール技術であったり、
計画性や行動化、体現化の技術であったり、
他者との交渉やコミュニケーション技術であったり。
そういった、社会を生き抜くために重要な
数値化できない要素のことを、非認知能力と呼ぶようです。
ハブラボでは、アナログゲームを押す二つ目の理由として、
この非認知能力の向上を考えています。

■いつの間にか非認知能力も上がった気がする、を目指す。

非認知能力は数値化できないという特徴があります。
そのため、どのように伸びているのかは、明確な指標がありません。
しかし、児童の世界に居て、
毎日子どもたちとアナログゲームをしていると、
少し変化があったなと気づくことがあるのです。

例えば、ある小1の女の子の事例です。
負けてしまうと泣いてしまって
次のゲームに参加できなくなる子が居ました。
人に負けて悔しいのでしょうか。
自分の不甲斐なさに怒っているのでしょうか。
失敗して恥ずかしいのでしょうか。
心の中までは分かりませんが、泣いて体が固まり、
動けなくなってしまっていたのです。

その都度、職員はあやして、空気を入れ替え、時間を使い、
またアナログゲームに誘います。
そういったことが数カ月。すると、その子に変化が表れてきました。
その子が泣いて固まる時間が短くなったり、
泣いて固まる頻度が減っていたりすることに気づいたのです。
そのうち、負けても泣く回数が減り、
笑顔で「もう一回!」と言えるようになってきました。

■「楽しみながら」ができるのが、アナログゲーム!

決して「悔しい!」「悲しい!」と思うことが悪いことではありません。
けれど、悔しかったり悲しかったりしたときに、
動けなくなっては勿体ないですよね。
「次にどのようにすれば、勝てるようになるだろうか?」という
気持ちの1歩を踏み出すには、
「もう一回!」と言えるのは強みになります。
上記の事例の女の子は、決して数値では測れない非認知能力の一つが
上がったと考えることができます。
そして、非認知能力を上げるという行為を
「敷居を低く」「楽しみながら」できるのがアナログゲームなのです!

■学習ではない。「ここを伸ばそう」ではなく「ここが伸びた」と気づく。

非認知能力が伸びるというのであれば、大人心(親心)的に
「この子は、これが苦手だから、ここを伸ばしてあげたい」と
思いがちですが、そうなってくると
学習面が強く出てしまうことがあります。
すると、楽しさよりも別の壁が前に立ち塞がることになり、
子どもは楽しくなくなってしまいます。

例えば、ある小2の女の子の事例です。
女の子は計算が苦手で、必ず指を使って足し算や引き算をしていました。
そんな女の子に「ぴっぐテン」という足し算カードゲームを
促して遊ぶことにしたのです。
職員はぴっぐテンで遊ぶ間、その子に「指を使わずに計算してみようか」と
問いかけて遊んでいたのですが、その子は全然楽しそうではありません。
ゲームに勝つと嬉しそうにはしているのですが、
根本的に「遊んでいる」ではなく
「勉強している」風になっていたのでしょう、
その子から「ぴっぐテンで遊びたい」という言葉は出ませんでした。
そこで、職員側が考えを改め、
その子には「指を使って数えても良いよ」と促すようにしました。

・・・と、言いますか、
むしろ普通にカードゲームとして遊ぶようにしたのです。

すると不思議なことに、その子がぴっぐテンで遊ぶ割合が少し増えました。更に、いつの間にかぴっぐテンで遊ぶときに
指で数える回数が減っていました。
おそらく、何回も遊んでいるうちに簡単な計算は、
式と答えを丸ごと覚えてしまったのでしょう。
もちろん、大人が「ここを伸ばしたい」と思うことは大切で、
それに見合ったアナログゲームを選んであげることは重要ですが、
そこに注視し過ぎてしまうと「お勉強」になってしまうんですね。

この時に職員が得た教訓は「ここを伸ばそう」としなくても、
そのうち伸びていくもの。
そこから「全体を見て伸びたことに気づくこと」こそが
大切だということでした。

■些細な事だから、大切なこと。

私たちハブラボの職員が
子どもたちと一緒に余暇を過ごすうえで大切にしていることは、
アナログゲームを通して
「いつの間にか成長している些細な一面」に気づくことです。

そして、それは非認知能力に繋がっているということです。
明確な変化ではなく、些細な変化です。

「商売ゲームで相手にお札を渡すときに、
いつもお札を投げて渡していた子が、いつの間にか投げなくなっていた」

「負けそうになると、いつも駄々をこねていた子が、
交渉でどうにかしようとするようになった」

「アナログゲームの片付けの時間になると姿を消していた子が、
片づけを手伝うようになった」

といった、本当に些細な変化であり、ほんの少しの成長なのです。
そして、その些細な変化の積み重ねが
大きな成長に繋がれば良いなと考えています。

その中心にアナログゲームがあり、
「ハブラボに行けば、楽しいボードゲームがある!」と
子どもが言ってくれたら良いなと思いながら、
今日も子どもたちが学校から帰ってくるのを待っています。

いいなと思ったら応援しよう!