日本の「怖い話」を英語で語ろう!【#6:けっきょく怖い話のコツは5W1R。これを練習すればその他の話題の会話にも効く!】
前回までは自己紹介と、このマガジンで使っていく参考文献の紹介をさせていただきましたが、いよいよ今回から、本題の「怖い話を英語で語ろう!」の具体的な話題に入っていきますね。
なお今回から、古今東西のいろんな「怖い話」の実例が出てきます。
画像とか動画は入っていませんが、「『そこに白い服の女が立っていた』というようなコトバを文章で読んだだけでもイヤになるくらいに、その手の話は苦手!」という方には、ちょっとドキっとする話も増えてきます。
まぁ、そこまで怖いモノが嫌いな方は、このタイトルのマガジンに最初から入ってきてはいないだろうとは思いつつ(笑)、一応、ご注意を、、、!
本マガジンの基本テーマ、「怖い話の練習はすべての会話力の向上に効く!」
このマガジンの主張は、以下のようになっています。
「いわゆる怪談や怖い話は(ショートストーリーであるがゆえに)5W1Rがハッキリしている」
「そこで、気に入った『怖い話』を見つけたら、5W1Rに分解して、分析してみよう!」
「5W1Rを取り出して、そこを正確な英語に訳して記憶しておけば、その他の部分はナンチャッテな英語になったとしても、なんとかなる(笑)!」
「さらに言えば、5W1Rのパターンをたくさん英語で暗記しておけば、怖い話以外の話題を英語で即興でしゃべらなければいけない時も、きれいなストーリーで英語が出てくるようになる!」
さらにいえば、これは英語に限らず、日本語で「物語性のある話題」を語る時にも効く上達メソッドと、自負しています。
5W1Hならぬ、5W1Rとは?
さて、5W1Rの具体的な紹介をしていきましょう。
「本当は5W1Hじゃないの?」と思っている方は多いと思います。
誰が・いつ・どこで・なぜ・なにを・どうやって(How)
を明確にしようというやつですね。
これはプレゼン術のいろいろな本でも、基本として出てきます。
有名ですね。
ただし、私が「怖い話」を分析していた時、「5W1H」の[H]だけが、どうにもしっくりいかないことに気づきました。
考えてみれば「怖い話」って、主人公が「わけもわからず巻き込まれる」ケースが多いし、出てくるバケモノの類も正体不明であることが大半なので、[How]という疑問詞が不適切なのですよね。
そういうとき、5W1Rという別のバリエーションがある、ということを聞きました。この場合、最後のRは、Result、つまり「結果はどうなったか」を表しています。
怖い話にあてはめると、
「それで私は怖くなって、その家から引っ越してしまいました」とか、
「その写真を神社でお祓いしてもらうと、怪奇現象は止まりました」とか、物語の骨格に関わる、大事な情報がここに入る。
たとえ「けっきょく、あれはなんだったのか、いまだにわかりません」というオチの話だとしても、「わけがわからない現象だった」というのは怪談のオチとしては立派な「結果情報」です!
怖い話の整理には、5W1Rがシックリくる!
この発見以降、私は気に入った怖い話を5W1Rに分解してメモっておき、後で英語に直しておく、という習慣をつけ、それで英語力がグンと上がったという体験があるのです。
実例でやってみましょう:耳なし芳一の場合
ここまでで述べたことをおさらいした上で、ひとつ実例をやってみましょう。
まず、おさらいから。
「怖い話」の5W1Rは、以下のように整理できます。
WHO(誰が?)
WHEN(いつ?)
WHERE(どこで?)
WHAT(何が現れた?OR どんな怪奇現象が起こった?)
WHY(なぜ?(何をしたせい? 何の因果のせい?))
RESULT(その怪奇現象の後、けっきょくどうなった?)
続いて実例をやってみましょう。
有名な怪談として、ラフカディオ・ハーンの『耳なし芳一』をあげてみると、以下のようになっています。
WHO: A blind man named Hoichi (芳一という名前の盲目の男が)
WHEN: Some centuries ago(今から数百年前の昔に)
WHERE: At Akamagaseki(赤間関(山口県下関市の旧地名)で)
WHAT: Ghosts of Taira clan(平家の亡霊たちに)
WHY:Because of his excellent skill in recitation(琵琶の弾き語りスキルが気に入られたため)
RESULT:He survived but lost his ears.(耳を失ったが、命は助かった)
この分析の楽しいところは、こういう事例をたくさん集めていくと、5W1Rに関わるボキャブラリーがどんどん蓄積できること。
この一例だけでも、別の話題で「今から数百年前のことですが」と日本史の話をするときに言葉に詰まることがなくなる、という次第です。
もっとわかりやすい事例:"Old house on the railway tracks"
もっと短い都市伝説や現代怪談にあてはめると、5W1Rはさらに強力です。
例として、前回紹介したTara Devlinさんの"KOWABANA"に収められている、"Old house on the railway tracks"を分解しましょう。このストーリーはとても短い話なのにやけにインパクトがあり、私も大好きなハナシになっています。
以下が分解例です。
WHO: This happened to the younger brother of one of my mother's friends. (これは私のお母さんの、ともだちの、弟さんに起きた話なんだけど・・・)
WHEN: About 20 years ago.(今から20年くらい前のことでね)
WHERE: A small old house by the railway tracks.(線路わきに借りた小さな古い家でね)
WHAT: An old man missing the lower half of his body appeared a few metres away from the window of his house. It's crawling across the gravel at night.(夜にその家の窓から数メートルの砂利の上を、下半身のない老人がはい回っているのを見ちゃったんだって)
WHY: There was an old man who was hit by a train and killed.(その近くに昔、電車事故で亡くなったおじいさんがいたんだって)
RESULT:But as it did little other than crawl around, the younger brother continued to live there for another two years. Because the house was extremely cheap.(でもその老人は結局、外を這い回るだけで何もしてこなかったので、彼は二年間もそこに住み続けたらしいよ。だって激安の家だったらしいからね、、、)
本当はもう少しふくらみのある話なのですが、これだけ語ってもそれなりに怖くて面白い話になっちゃっていますよね?(私はこの「住み続けたのかよ!」というツッコミを喚起するオチが大好きです)。
上の5+1=6部分を英語で覚えておけば、あとはナンチャッテでも伝わるので、とりあえず、この物語を英語で語れるようには、なれる、というわけです!
まとめ:このアプローチの面白いところ
1~2例だけでは、あまりインパクトがわからないかもしれませんが、この分析事例をたくさん集めていくと、英単語の丸暗記とはまた違ったアプローチで、「話せる領域が広がっていく」のが実感できると思います。
それだけでなく、この分析をやっていると、
ある「怖い話」が、実は古くからある別の怪談の、時代と場所を取り換えたバリエーションだということに、突然気づいたり、
地域によって好まれる主人公(「友達」なのか「親戚」なのか)の傾向らしいものが見えてきたり、
オハナシの分類としても、いろいろな発見があって面白いです。
次回からは、さらにいろいろな事例をこの調子で分解し、怖い話の世界(怖い世界ではなく!)を楽しみながら、英語のボキャブラリーを増やしていきましょう!
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