【雑記】ハキリアリと農業
ハキリアリというアリがいる。
南米に生息するアリで、葉っぱを切って巣に運ぶという特徴がある。切った葉っぱをかかげるように進む行列がかわいらしい。
ハキリアリの主食は葉っぱではない。葉っぱを苗床にして栽培したキノコである。ハキリアリは自前の農場を持ち、食料を生産する「農業アリ」なのだ。
しかもこのキノコは自然界ではハキリアリの巣にしか存在しない。
おそらく、ハキリアリが進化の過程のどこかでキノコと出会ったとき、自然界にも同種のキノコが存在したはずだが、時間が経つなかで自然界のキノコは絶滅して、ハキリアリが巣で栽培しているものだけが残ったのではないか。
キノコのほうでもハキリアリが栽培しやすいように変わっていった(育てにくいキノコは放置されたか、栽培していたグループが全滅した)のかもしれない。
ハキリアリとキノコの関係は、人の農業と変わりがない。
農業とは、農作物を変化させ利用価値を高めていくこと、といえる。いかに人が農作物を変化させていったかは、スーパーにならぶ野菜や果物の原種をみるとよくわかる。
こんなに変化した!かつての果物や野菜と今のものを比較したのビフォア・アフター
現在の農作物は、原種より生産性も味も栄養価も良くなっているだろう。
農作物の原種といえば、こんな記事がある。
野生のイネ・ムギ、絶滅危惧種に 除草剤の使用で
作物の野生種では、イネ25種中3種、ムギ26種中2種、ヤムイモ44種中17種が、それぞれ絶滅危惧種になった。森林伐採や過剰な放牧、除草剤の使用などが脅威になっているという。野生種の遺伝子は、病気や害虫に強い作物への品種改良に役立つため、食料安全保障の面からも保全が必要と指摘している。
人が手を加え品種改良した農作物は世界中に広がっているのに、元になった「野生種」が絶滅しようとしている。これは人の手が加えられたかどうかの差によるものだろう。人が育てやすいように改良されていった農作物は、人に守られて広がっていけるからだ。
自分達に都合のよいものを選んで伸ばしていくということはエゴであるが、農業では一方的な搾取ではなく、農作物の生存や拡大を助ける互助的な関係にあるといえる。
ちなみにハキリアリは東京の多摩動物公園で見ることができる。