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主役(利己)と脇役(利他)を行ったり来たり。

先日、こんなツイートをみました。

“ やりたいことを突き通したくて、利己的に振る舞っていたら手を差し伸べてもらい、やりたいことが実現し始めると今度は、手を差し伸べることに喜びを感じておせっかいになって結果的に利他的になったりする。” 

なんとなく、身に覚えのある感覚でした。


利己な自分と、利他な自分。
主役な自分と、脇役な自分。

その両側を行ったり来たりするうちに、「どっちがホントの自分なんだろう?」と思うことがありました。



− 利己とは・・・

自分の利益を最優先にし,他人や社会全般の利害など考えようとしない態度。身勝手な考え方。エゴイズム。自己主義。(weblio辞書 より)

利己的=自己中?
あまり良い意味で使われる言葉ではなさそう。


では、少し見方を変えてみます。
こんな瞬間に出会うことってないですか?

脈絡も分からずアイデアが出てくることがある。思いつきと紙一重だが、なんだかとてもワクワクするし確証らしきものも見える。本当に大丈夫なのかと思って、いくつかのネガティブなシナリオを考えてみても、それなりに行けそうに思える。それは妄想かもしれないが、「行けそう」という自信が揺るがない。

ある日突然ビビッときて、根拠のない自信と希望が溢れちゃって居ても立っても居られないような瞬間。

僕は、何年かに1回こういう瞬間に出会います。たとえ人に迷惑をかけてしまったり嫌われてしまったりしてもやってみたい、と体が先に動いてしまう。

いま挑戦している リヤカー行脚 は、まさにそう。


ある夜にいつもと同じ帰り道を歩いていた時、ビビッと思いつきました。街灯の少ない暗い夜道を走って帰り、近くにあったノートに思いついた全てを書き留めました。

ここからは自分のことと思いついたイメージを現実にすることだけを考えてきました。「これやったら誰かに迷惑かけちゃうかなあ。」と思うようなことも、心の中で「ごめんなさい!」と叫びながらやってきた。わからないことは聞いて、できないことは頼ってきた。

そんなワガママなやり方を「それってどうなの?」と言う人がいる一方で、面白がってくれる人もたくさんいました。


思いついた当初のこと。

バァーッと勢いに任せて準備を進めていると、もう10年以上会っていない小学校時代の友人が突然連絡をくれました。そして、このnote. というブログサービスから支援金を送ってくれました。

「同級生が頑張ってるのは、いい刺激になる。実現できるといいね。頑張ってください ♪ 」


別の友人は、僕の壮行会を開きたいと言ってくれました。その友人が書いたブログを読むと、昨日のことのようにあの素敵な空間を思い出せます。

その壮行会には、たくさんの方が応援に集まってくれました。みんなは「頑張れよ。」と肩を叩いてくれて、カンパもくれました。


壮行会のあと、リヤカー行脚の出発地になった本州最南端・鹿児島県へ。ここでは大崎町の シェアハウスキイト に住み、たくさんの出会いと思い出に恵まれました。

そのシェアハウスでリヤカーを作り始めると、鹿児島で知り合った友人たちは組み立てや塗装を手伝ってくれました。


鹿児島県の阿久根市では、炭火料理と田舎蕎麦を提供するお店『潮音の丘』のご主人に出会います。リヤカー行脚の話をすると、1週間住み込みで働かせていただけることに。その間、炭や火の扱い方を教えてくれたり同級生の皆さんやお客さまからカンパを募ってくれたりしました。


そのご主人はど素人の僕が作ったリヤカーを見かねて、近所の板金屋さんを紹介してくれました。「このリヤカーなんだけど、もう少し使いやすくできないかねえ。」と相談してくれて、リヤカーがめちゃくちゃ使いやすくバージョンアップ!


ほとんど知り合いのいないまま飛び込んだ福岡でも、本当にたくさんの方々に助けていただきました。短期滞在させていただいた リバ邸天神 でお世話になった方々、台風が通り過ぎるまで寝る場所を用意してくれた方、心が折れそうになるほど痛かった足を治療してくれた方、などなど。


ラジオの生放送で取材していただくことも。放送があった次の日、歩いているとすれ違う人が「昨日ラジオ聞いたよ。頑張ってね!」と声をかけてくれて、嬉しかったです!


あの時の一瞬の思いつきに導かれるまま、突き進んできました。

まるで自分が何かの物語の主役であるかのように。

そんな身勝手で自分勝手なこの物語には、ここに書ききれないほどたくさんの方々がその手を貸してくれました。その胸を貸してくれました。


そのことを思うと、感謝の気持ちや愛にも似た気持ちが心から溢れてくる。そして、思いました。

『自分も、誰かの役に立ちたい・・・。』


自分のために突き進んできた僕を支えてくれる方々に出会ってきて、今度は僕も頑張っている人の力になりたいと思うように。



− 利他とは・・・

自分を犠牲にしても他人の利益を図る態度・考え方。愛他主義。(weblio辞書 より)

ずっと利己的だった僕の心は、だんだん逆側(利他)に振れ始めました。


ちょうどその頃、岡山で ゲストハウス を営む大学時代の友人と連絡を取っていました。「冬の間はどこかに滞在して資金を貯めようと思ってて...」と相談すると、「うちのゲストハウスで ヘルパー しない?」と言ってくれました。

その後、ゲストハウスでは清掃・リフォーム、ブログやSNSの更新などをお手伝いしました。これまでは自分が旅人としてお世話になってきたゲストハウスで働き、今度は旅人やスタッフの皆さんの力になれていることが嬉しかった。


そのあと、ゲストハウスを出て、みかん農家での季節限定アルバイト に参加するために愛媛へ来ています。

80歳にもなるみかん農家さんのお宅に住み込んで、毎日ご夫婦と一緒にみかん山で働いてます。そばで見ていると、高齢になるお二人は身体のいたるところに痛みを抱えていて、毎日の作業も大変そう。

まだ元気だった頃の自分のおじいちゃんとおばあちゃんの姿と重ね合わせ、なんとかお二人の力になれればと思いながら、日々一緒に山へ出ています。


つい最近まであんなにも自分のことばっかりだったのに、いつの間にか他人を支えることに喜びを感じ始めていました。


利己的から利他的に。主役から脇役に。



− 利己な自分と利他な自分の共存

桜林直子(サクちゃん)さんは『世界は「夢組」と「叶え組」でできている』 / note. でこう書いていました。

 “ 夢中になる能力がある「やりたいことがある人」を「夢組」だとしたら、やりたいことがない人は「叶え組」だ。 このふたつはチームになるといいと思う。仕事でも夫婦でも、「夢組」と「叶え組」はお互いに力になれるし、自分にはない能力を持っている相手を大事にできる。”

ここで言う「夢組」は多少利己的になってでもやりたいことがある人、「叶え組」はそんな人を利他的な心で支える能力がある人、かな。そうすると、人ぞれぞれどちらかの適正を持っていて、そのポジションに置かれた時に最大限の力を発揮できるんだろうとイメージできます。

でも、僕はこのどちら側になるのか、まだ自分でははっきり分からずにいます。これまでの僕はやりたいことがある時期もあれば、誰かのやりたいことを応援したり支えてみたくなる時期もあって、その両側を行ったり来たりしていたから。


一方で、平野啓一郎さんは “分人主義” という概念を説いています。

私たちは、日常生活の中で、当たり前のように多種多様な自分を生きている。勿論、妄想的に、勝手に分裂するのではない。常に、相手次第、場所次第である。職場の上司といる時と、気の置けない友達といる時とでは、決して同じ人間ではない。(『私とは何か---「個人」から「分人」へ』著者:平野啓一郎 ~諸悪の根源は「個人」~ より)
一人の人間には、色々な顔がある。つまり、複数の分人を抱えている。そのすべてが〈本当の自分〉であり、人間の個性とは、その複数の分人の構成比率のことである。(『私とは何か---「個人」から「分人」へ』著者:平野啓一郎 ~諸悪の根源は「個人」~ より)

この “分人主義” においては、人間は複数の性格や人格のようなものが絡み合ってできていると考えます。対面した相手や場面に応じて、それらが表に引き出される。だから、その人の1つのキャラクターだけを切り取って「これがあなた!」とは言い切れない。

そう考えると、利己な自分と利他な自分は1つの体の中に共存していて、その2つのキャラクターは自分自身がコントロールしているというよりも周りの環境や対面した相手によって引き出されていると言える。


いまの僕はこの感覚に近い。利己な自分と利他な自分がいて、利己ターンと利他ターンが交互にやってくる。そのターンごとにやってくる波に合わせて、スイッチを入れ替えている感じ。

そう考えると、『利己な自分と、利他な自分。主役な自分と、脇役な自分。どっちがホントの自分なんだろう?』という疑問の答えははっきりします。

そのどちらとも、ホントの自分なんだ。

むしろ、その2つが共存して成り立ってる。



− 最後に

利己な自分と利他な自分。
主役な自分と脇役な自分。

いま思えば、その両側における経験はまったく別のものというわけではなく、互いに作用しあっていました。

利己ターンで学んだことが利他ターンで生かされたり、利他ターンで一緒に何かを目指してきた人が利己ターンの時に支えてくれたり。

一見すると正反対に見えるこの両者(利己・利他)は、実は無意識のうちに心の中で共存しているのかもしれない。


軸に縛られず、ブレを恐れず。
まだまだ見える世界を膨らませていきたい。


− end −


最後まで読んでくださり、ありがとうございました!

手作りのミニ囲炉裏(火鉢)をリヤカーに積んで歩いています!


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