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”専門・特化・限定”と”汎用”の間にあるちょうどよいところのおはなし

今週からおいかぜは自宅リモートワークを解除し、通常の働き方に戻りました。つまり事務所勤務とリモートワークの併用。みんなが事務所にいると”あぁうちって会社だったんだな”って、今更ながら再確認します。組織としての身体性を取り戻している、そんな感じです。やっぱりみんながひとところに集まるのはとても良い。ちょっぴり新しくなった事務所、フリーアドレスという新しい試み、これらはボクたちの組織をより有機的にしてくれているように感じます。

ハードウェアや仕組み・制度という外的要因が、はたらく人の内的なところにうまく影響しているってことなんじゃないでしょうか。まだしばらく試行錯誤の日々は続きそうだけれど、ボクはこの景色がとても気に入っています。そしてボクはさらにもっと良い景色が見たくなっていて、それは経営者の性なのかボク自身の性なのかはわからないけれど、いつまでたっても・どこまでいっても終わりの無い旅みたいなもんなんだろうとしみじみ考えたりもしています。

今回の事務所のあれこれは大阪・野江内代のミクロコスモスの飯坂くんと一緒にやっています。ミクロコスモス は設計・施工はもちろん、ボクたちのいろいろな課題を大工仕事で解決してくれる新しくってハイブリッドな会社です。ボクは彼に課題をぶつけて、そこからどんな提案で返ってくるかがいつも楽しみ。彼の提案には「これかっこいいでしょ!」「これつくりたいんです!」って想いが溢れていて、ボクはその想いに乗っかるかたちで、誤解を恐れず言うと一緒につくっている感覚だったりします。

そんな彼と、今回の施工の期間中に面白い会話をしました。それはたわいもない”会社ってどうやっていったらいいすかね?”みたいな経営の少し先輩と後輩の会話みたいなもの。ミクロコスモス の仕事ってすごく丁寧だし、お客さんが変われば仕事のやり方がかわるから、時間と労力がかかるように見える。それってビジネス視点で考えると、わりハードなんだろうなと想像していたり。もっと効率良く商売やる方法ってないのだろうかねぇ?みたいな話でした。

結論から言うとそこに答えはなくって、汎用的なものを大量生産して販売すれば何かが変わるかもしれないんだけれど、それってボクたちのやりたいことじゃないんすよね、ってことでした。ボクもそれに対して、うんうんその通りだよなぁ、でもそれだけだと続けていくのが大変だよねぇ、ってどっちつかずの答えを返したりしていました。

ボクはその会話の中で彼と話したことをきちんと言語化したのが、今日書きたい「”専門・特化・限定”と”汎用”の間にあるちょうどよいところ」というおはなし。ボクにとっては確実に、たぶん彼にとっても気付きの多い時間たったんじゃないかなって思います。

今回事務所のデスクをゼロからつくりました。本当にゼロから。汎用的なモノは一切使わず(ネジなどは汎用パーツですが、まあどこまでを汎用というかはちょっと置いておくとして)上半身が大工文脈で下半身が家具職人文脈なデスクです。オフィス家具的で汎用的なものを買って済ませるという手もあったんですが、ここはミクロコスモス に課題を投げてみようと思って、相談をしたわけです。

ボクがオーダーの時に伝えたことは以下の通りです。

・事務所を軽やかにしたい。
・ちゃんとしたワークチェアが使いやすいようなデスク。
・いずれ移転するから引っ越しの時にばらせるようにしたい。
・木でつくってほしい。
・いろんなレイアウトに対応できるようにしたい。

ボクが思うミクロコスモス の良いところは”専門・特化・限定”というキーワードにあると思います。たぶん彼は言語化していないだろうけれど、とにかく目の前の課題に対して、アイデアとデザインと技術をミックスさせて濃縮させてフォーカスしたときに最大限の力を発揮しているように感じます。まさにハイブリッド。

ボクはそんなオーダーを出しながら、頭の中で一つの言葉を思い浮かべていました。それは”汎用性”。つまり”専門・特化・限定”とは対義語です。

ボクがミクロコスモス にオーダーを出す時点では”専門・特化・限定”、つまりは今この世にないものをつくってほしいというお願いです。彼がそのオーダーを受けて、ボクたちおいかぜにフィットするものをつくろうとした時点で、実は少しだけ”汎用”の方に針が振れているはずです。おいかぜで使うときの自由度と制約のバランス。なんとも当たり前の話なのですが、”専門・特化・限定””汎用”の間にはグラデーションがあって、この世の中に存在するものは全てこのグラデーションの中にあるはずです。

ボクはその少し”汎用”の方に振れた針を、さらに”汎用”の方に、つまりは”おいかぜにフィットするもの”から少しはみ出すようなディレクションをしてみました。結果的にボクは今おいかぜで使っているデスクは売り物にできるなぁというところまでたどり着いていると思っています。販売するための費用計算まではできていないから、そこはもう少し工夫が必要だとは思うけれど、ボクが意図した”専門・特化・限定””汎用”の間のグラデーションの良いところに着地したと思っています。もっとわかりやすく言うと”オリジナリティがあるんだけれどけっこうみんな使いやすいんじゃない?”くらいのニュアンス。

つまるところ、ボクはミクロコスモス に”専門・特化・限定”で何かをお願いすることで新しい・ボクなりの”汎用”をつくりたかったんだと思います。ボクは完全にオリジナルであるとか、一点ものみたいなことへの憧れや執着はなくって、むしろ自分自身で”新しい汎用”をつくりだしたかったんだということに気付きました。

よくよく考えるとボクが日々おいかぜでやっていることと変わらないんですよね。経営やビジネスをする上で、いきなり”汎用”を目指すのではなく、”専門・特化・限定””汎用”につながっていくような思考というのは、ボクはとても大事だと思っています。”汎用”がつまらないということではなく、いきなり自分たちから離れた、よく見えていない大勢を喜ばせる方法を考えるのではなく、目の前の人たちのことを喜ばせるために考えたことが少しずつ拡がっていくような汎用性。そう書くと少し伝わりやすいでしょうか。

おいかぜのお仕事の仕方は”専門・特化・限定””汎用”を目指してお手伝いさせていただくことが主です。それはデザインだったりエンジニアリングだったりブランディングだったり、どんな領域においてもお客さんの課題やオーダーにフォーカスを合わせてお仕事を進めていきます。

ボクの創業当社から、頭の片隅に・心の中心に据えている”おいかぜの商品って何なんだろう?”という"問い"、これって実は”汎用”をどう作っていくかということなんですよね。ボクが最初に"おいかぜの商品はこれだ!”って決められなかったのは「いきなり”汎用”を目指すのではなく、”専門・特化・限定”が”汎用”につながっていくような思考”からくるのだと、この文章を書きながら気付きました。

そして、この”専門・特化・限定”と”汎用”の間にはグラデーションでの位置取りが、ある取り組み・ある人・ある会社・ある集団のおもしろさになるんだろうなって思います。少なくともボクはそういうフワフワした位置にいる人やモノや取り組みが好きなんだと思います。

株式会社おいかぜが目指したいのは”専門・特化・限定””汎用”の間の良いところ、風のようにフレキシブルで愉快なところ、世の中のいろんな人が抱える自分ゴトに向き合って、みんなゴトになるように”おいかぜになる”そんな存在になりたいと思っています。

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