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個性的な教育長 池田町 教育大綱#2

長野県池田町の教育大綱の基本理念はシンプル

子どもがまんなか
未来を拓く
ひとづくり

この教育大綱を練り上げたのは竹内延彦教育長。

1、各地の教育長

教員経験はないが、フリースクールなど主に民間団体で教育に携わった経験を生かし、公教育が「画一一斉」から「個別最適」へと転換期に入った今、強い信念を持った個性的な教育長たちが全国の先進的な教育現場を引っ張っている。

竹内教育長のように、国家公務員や民間出身者の教育長は全体の約1割にとどまる。一方で近年、地域や経歴にとらわれず抜擢された教育長の活躍も目立つ。

広島県の平川理恵教育長は、民間企業や横浜市の公募校長を経て、教育長に就任。全寮制の県立中高一貫校や、オランダのイエナプラン教育を行う全国初の公立校など特色を打ち出している。

文科省出身の熊本市の遠藤洋路教育長は、昨年のコロナ禍での休校中にいち早くオンライン授業を実現した。

2、教育大綱だけでは意味がない、学校現場は・・・

実際に池田町の学校現場はどう受け止めたか。昨年度まで高瀬中の校長は「本当に追い風になった」と振り返る。

もともと生徒の主体性を引き出す取り組みを進めていたが、従来の宿題を大幅に縮小して自分の好きなことを学ぶ「自学ノート」には懐疑的な教員もいた。これが定着したほか、教員の都合で物事を決めず、生徒との対話を重視するように。秋山さんは「先生たちが前例踏襲を問い直し、新しいことを提案するようになった」と強調した。

この変化こそ、竹内教育長の狙いでもあった。大綱策定中の2019年秋に町内の3小中学校で最上級生との対話の会を実施。「先生が意見を聞いてくれない」と言う児童生徒の声を取り入れた。子ども中心の視点は、画一的な公教育の制度から漏れ落ちた生徒をフリースクールなどで支えた経験の中で培われた。

「何のための学びなのか、誰のための学びなのか、30年間、問い続けてきた」と竹内教育長。長野県職員として自然保育に関わった8年間でも思いを強くした。そこに舞い込んだのが、「一人一人を大切に個性を伸ばしていく時代に、今までのひとくくりの教育でいいのか」と考えていた町長からの誘いがあった。

就任当初はよそ者として見られることもあったが、町民や教員との地道な対話を続けた。成果が見えたのは、昨年の新型コロナウイルス禍による休校後。教員たちが学校の存在意義を捉え直す機会となり、以降は行事の再会時などに子どもの声を取り入れる意識が高まったという。

竹内教育長は強調する。「『子どもがまんなか』は抽象的で哲学的。だからこそ議論や対話が始まる。大綱の策定はゴールではなくスタートで、イメージを共有し、一人一人が行動に変えていくことが、人づくり、地域づくりとなる」(中日新聞より抜粋)

「文科省の答申」や「自治体の教育大綱」などプロパガンダは立派でも、実際に学校現場がその内容で機能しないことには意味がない。

このような自治体が行う、子どもたちの教育環境を良い方向に変えていくチャレンジを、全ての教育者が共有し、「今までの教育のままでいいの?」という思いを持つ人が増えれば、前例踏襲に終止符を打ち、大きなムーブメントを作ることができるのではないか。


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