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もう一度、夢がほしい。
この記事をご覧いただきましてありがとうございます。
さて、ミュージシャンである馬場俊英さんの「君の中の少年」という楽曲があります。
かつて放送していたバラエティ番組「内村プロデュース」のメンバーが出演する映画「ピーナッツ」の主題歌として書きおろされ(歌っているのは出演した内Pのメンバーです。)馬場俊英さんもセルフカバーとして、自身のアルバムに収録しています。
私が中学生くらいのころに、親父がどこで知ったのか馬場俊英さんを聴くようになり、車でもよく流していたので、私も自然と聴いていました。
馬場さんの楽曲は主に中高年向けだと思います。当時はまだ子供だったので、きっと大人になれば分かってくるんだろうなあって思いながら聴いていました。
高校を卒業し、就職してしばらく経ち、日常でいろいろな音楽を聴いている中で、なんとなく昔聴いていた馬場俊英さんを聴こうと思い、ベストアルバムをレンタルしました。
その中で、この「君の中の少年」にとても衝撃をうけました。
今でもこの曲が好きで聴いていますが、聴くたびに、学生時代の思い出がよみがえってくるのです。
私は小学生のときにソフトテニスを始め、中学、高校と部活に打ち込んでいました。
小学生の頃から全国大会に出場することが目標でしたが小・中では叶わず、高校は県内でも強豪だった学校に進みました。
電車で1時間かけて通い、毎日遅くまで練習に明け暮れていました。
精神的にも肉体的にもかなり追い込まれるくらい厳しい練習で心折れかけたことも何回もありました。
それでも、絶対に辞めるわけにはいきませんでした。
というのも、高校3年生の年に地元でインターハイが開催されることが決まっていて、高校に入学した時点から、地元のインターハイに出場して活躍することが夢でした。
それまでの成績でいけば、県内でトップではないとはいえ、大会で常に上位に入っていたため、このままいけばインターハイ出場も夢ではありませんでした。
*
3年生の年のインターハイ予選。県予選で上位8組(ベスト8)に入ればインターハイに出場できました。
私のペアはトーナメントのシード権を持っていて、夢のインターハイ出場に向けて並々ならぬ想いで大会に臨みました。
“息を呑み込んだ 一瞬の静寂 見上げた空の色”
今振り返れば、想いが強すぎて力が入っていたのでしょう。まさかの4回戦で敗退してしまい、インターハイ出場はなりませんでした。
翌日の団体戦も、上位2校がインターハイに出場できるところを準決勝で敗退し、インターハイ出場への道は完全に閉ざされました。
そして、わたしの長年の夢は、このとき終わってしまいました。
悔しくてたくさん泣きました。
そして、今までテニスに割いた時間はなんだったのか、
目標を失ったことへの失望感から、しばらくは何をするにもやる気が起きませんでした。
*
予選が終わって数ヶ月後、8月に入り、インターハイが開幕しました。
地元開催ということもあり、大会期間中は毎日観に行きました。
地元県勢でインターハイに出場するほとんどの選手達は、以前の大会や練習会で交流があり面識があるため、会場で選手と会話をしたり頑張ってと声をかけたりしました。地元県勢の選手が試合に入るときには、観客席で応援していました。
もちろん、地元選手のことは応援していました。
でも、心の奥ではこう思っていました。
「俺もほんとはこの会場でプレーをしていたはずなのに、なんで人の応援をしているんだろう。」
大観衆の中全力でプレーする地元選手たち。たくさんの声援。
インターハイ期間中、選手の活躍が地元新聞で大きな記事になり。
翌日に勝ち残ればテレビカメラに意気込みを述べて県内ニュースで流れる日々。
全てが、わたしにとって苦痛でした。
”あの青春の輝きに 追いつけなくて苦しかった“
こうして、苦い思いを残したまま、部活動を引退しました。
*
高校卒業後も、地元のクラブに入りテニスを続けています。勝たないといけないプレッシャーから解放された今では、練習も大会も楽しくプレーをしています。学生時代とは環境が違うため週に一度練習するのがやっとですが、あの頃みたいにまた全力でプレーしてみたいなと時折思うことがあります。
”ボールはまるで行き場所の無い 情熱の塊のように“
母校の部活に顔を出したり、後輩の大会の応援に行っていた時期もありました。後輩が活躍している姿は見ていてとても嬉しいです。
しかし、全力でプレーや応援している姿を見ていると、つい当時のことを思い出してしまいます。いい気持ちになるか、少し哀しくなるかといえば、後者です。
”あの青春の輝きが この頃は憎たらしかった“
先に紹介した「君の中の少年」に衝撃をうけた理由は、私の経験とあまりにもリンクしていたからです。
部活動に全力で取り組んだ人達は、必ずしも全員が夢や目標が叶ったわけではないと思います。私やこの歌詞みたいに、未だに後悔として残っている人もいると思います。
”汚れた壁はいくつもの 破れた夢と哀しみの跡“
この「君の中の少年」を聴くと、まるで自分のことを歌っているのではと思ってしまいます。おそらく、馬場さんもこういった経験や心境を理解しているうえでこの楽曲を製作されたのだと思います。
ただ、この楽曲は、夢が破れた者の心境だけでなく、かすかな希望を与えてくれます。
”まだ 間に合うかもしれない“
”グローブの中で汗ばんだ手が 今 何か つかもうとしている“
”この街の どこかに今も あの日の夢が眠らせてある“
”暗闇の向こう側から 少年の瞳が 僕を見つめている“
未だに当時の悔しさを思い出すことがあります。ですがそれ以上に、夢に向かって全力で情熱を燃やした日々は、何事にも変えられない一生の思い出です。
夢は叶わなかったとしても、夢に向かって全力になった日々の情熱が、自分の中にあったことは確かです。今も決して消えたわけではなく、まだ自分の心の奥底に眠っているだけなのだと思います。
何気なく過ごす毎日に次第に退屈感を覚えてきた中で、またあの頃のように情熱を燃やすことがあるのかもしれない。
何かに夢中になれるのは、べつに学生時代だけではない。年をいくつをとろうがおじさんになろうが、それは仮に同じ野球やテニスでなくても、あの頃のように夢中に、全力になれることはきっとあるはずだ。
この曲を聴くと、そういった根拠のない小さな自信を持たせてくれます。
*
私も今はしがないサラリーマンですが、心の中で大なり小なり漠然とした夢を常に抱いています。もし、今後の人生でその夢を叶えようと思うときまで、心の奥にあのときのような情熱を眠らせていようと思います。
”もう一度 夢が欲しい“
そう、思うときまで。