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#11 対話は続くよ、どこまでも〜わたしたちの民主主義/『選挙活動、ビラ配りからやってみた。「香川1区」密着日記』特別企画
対話型の街頭演説「青空対話集会」で、市民とのコミュニケーションを行う立憲民主党の小川淳也さん。衆院選が終わってからも続く対話集会の様子を、和田靜香さんがコツコツ記録していきます。対話の先に何が見えるのか?『選挙活動、ビラ配りからやってみた。「香川1区」密着日記』とあわせてお楽しみください。
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4月1日(金曜日)晴れ @石神井公園駅前編
毎週どこかで(主に有楽町駅前)衆議院議員、小川淳也さんが開いている青空対話集会。4月最初の日は、東京練馬区の石神井公園駅前で夕方5時半から行われた。司会は地元選出の衆議院議員、山岸一生さん。空は青いけど冷たい風がビュービュー吹きつけて寒い中に7~80人ほどの人が集まって、とっても活発な質問が寄せられた。私も久々にリアルで現地参加した。
それで質問です。
1 4月1日の本日から「わいせつ教員対策法」が施行されたが、小学校~高校までがターゲットで大学が含まれていないので検討してほしい。
(注:児童生徒にわいせつ行為をして懲戒免職となった教員に対し、失効した免許を再交付しない権限を都道府県教育委員会に与える新法)
2 先日の地震の後で東京電力が「電気が足りないから停電します」と脅してきていると感じる。原発を再稼働したいんじゃないかと危惧している。
3 ネットの支持率調査で、立憲民主党は日本維新の会に負けている。ネット対策を強化したらいいのではないか?
4 参議院選挙では与党に対してどんな対立軸を築こうとしているのか?
5 小川さんは執行部入りしてから発言が大人しい。もっと暴れてほしい。
6 小川さんは民主党政権時のことを謝りすぎ。反省しすぎはよくない。
7 ①「重要土地調査規制法」をどう考えるのか?
(注:防衛関係施設、海上保安庁の施設及び原子力発電所など重要インフラの周辺区域や国境離島等を「注視区域」に指定し、その区域内の土地及び建物の所有者、賃借人の氏名、住所、国籍等や利用状況を国が調査する権利を持つ)
②米軍への「思いやり予算」(在日米軍駐留経費負担)をどう思うか?
③野党共闘を協定を結んでしっかりやってほしい。
8 国土交通省での統計不正の新たな不正が見つかったことの進捗を伺いたい。コロナ・ワクチンハラスメント救済シンポジウムに参加したが、副反応に関して問題意識を持っている。ヒアリングなどして考えてほしい。
9 子どもの教育費を大学まで無償化してほしい。また消費税をなくしてほしい。山本太郎さんはよく考えてらっしゃるが、なんで小川さんは考えられないのか?
10 権力を批判するため、軸足をしっかり持って欲しい。
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原発廃炉と再エネ構築のロードマップを!
まずは質問2の「先日の地震の後で東京電力が『電気が足りないから停電します』と脅してきていると感じる。原発を再稼働したいんじゃないかと危惧している」という質問。
これに小川さんは、「脅しをかけてきたと感じてしまうのはこれまでの東電の福島、柏崎原発での事故対応から見ても当然」だとしつつも、「それでも現場は真面目に働いていることも知っています。悪意を持って発信しているとは思えないんです」と話した。そのうえで、まずは「必ず原子力と化石燃料から卒業したいという立場を明確にしたい」と言い、拍手が起こった。さらに、
「必ず原子力、化石燃料から卒業していくことを明確にしたうえで、子どもだましではなく再生可能エネルギーに本格的に入れ替えていく。もちろん、それには2~30年かかると思っています。その間の電気の安定供給には負の側面があることを理解したうえで説得説明をし、いかに安定供給していくかを伝えながら、どうやって再エネにきれいに転換していくかの明確なビジョンとタイムテーブルをきちんと描くこと。これが何より一番大事です」
とも話した。思うに、立憲民主党など野党は「原発反対」を言うなら、なにより廃炉までのロードマップと、再エネ構築のロードマップを同時に丁寧に描いて私たちに提示すべきだと思う。そうすれば、原発を今後も新設し、推進していこうとする自民党との差を見せることができるんじゃないか?
なによりそれこそ、私たちの安心につながる。
小川さんは「これが一番大事です」って言うが、それはまったくその通りで、それならば、そのビジョンとタイムテーブルを一日も早く見せてください~と、ペコリお願いしたい。
「立場上」なんて言ってないで国会で大暴れしてほしい
それから駅前広場に笑いの渦が巻き起こったのが質問5。ズバズバとおっしゃいます。
「話まとまるか分からないけど話します。小川さんが日本を変えたいとおっしゃってることに私は期待していますが、それには政権とっていただかなきゃならないですよね。でも、自分の周囲の声を聞いていると、『立憲はもうダメ、なくなっちゃうんじゃないの?』ぐらいで。そんな中で、山本太郎さんはすごいですよね、パワーがあります。でも、小川さんにも、そういうパワーがあると思っています。
でも、政調会長になってからの小川さんを拝見していると、これまでと言葉があれ?ということが多くなってます。何故かな?と思ったときに、たぶん党議拘束とか足並みを揃えないといけないこともあるんでしょう。
小川さん最近よく「立場上」という言葉を使うんですよね。なんですけど、それは、小川さんが直していかなきゃといつも言う「昭和モデル」そのものだと思います。
「立場上」って言葉を使わないでいただいて、暴れてほしいんです。山本太郎と小川さんが国会で大暴れするのを楽しみにしていたのに、なんか、すごくお行儀のいい小川さんで。対話集会では割とはっきり言ってくださるのに、メディアではお行儀のいい小川さん。周りをよく見て気遣う小川さんで。それだとアピールができませんよね。
立憲全体としても優秀な方々が多く、お行儀のいい党と分かるんですが、それだと埋もれていきますので、暴れてほしいです。とにかく「立場上」という言葉、ほんとに止めてほしいです。その言葉は若い人たちを苦しめていますから。うちの娘も会社で、その言葉に苦しんでるんです。
小川さんはずっとスポーツやってきていますから、脳みそが筋肉になってるんじゃないですか。キン肉マン。マチズモって言うんですか? その辺、娘さんとか、和田さんとかに聞いて、変えていってほしいです」
なんとなんとなんと! 私の名前まで出てきた、この指摘! 厳しくもユーモアにあふれ、小川さんも身体を折り曲げて笑ったり嘆いたり。おもしろかった!
小川さんはこれに「ありがとうございます。まぁ、いいご指摘でした、言いにくいことを全部おっしゃっていただいて、ありがとうございます」と笑った後に、
「しかしです、私は(立憲民主党の)代表選挙に勝てなかった。(代表の)泉(健太)さんに仕え、支えないといけない。その立場を、あっ、立場って言っちゃいました。他の言葉で言うとなんですかね? 役割? 責任? それを負ってるのも事実です。
最近よく言われるんです。『小川さん、立場ができて歯切れ悪くなった、言いたいことを口ごもってる』と。ほんと、もうしわけなく思ってる。党内における役割責任と個人的な信条の両方を、バランスとって果たしていくのもまた務めでして、もう少々ご辛抱いただきたい。ただこう見えて相当に頑固でして、私の考えてることや感じてることが、日に日にずれていくことは絶対にありません。絶対に変わりませんから。これだけはご信頼いただきたい。それを桜満開のごとく、いつか花開かせるよう、必ずみなさまと一緒に作りたいと思っております。娘さんにもよろしくお伝えください。がっかりせずに、もうちょっと長い目で見守ろうと、お帰りになったらお伝えくださいませ」
おそらくこういう対話は政治記者と政治家のような関係性では、なされないんではないか? すごくぶっちゃけて正直、本音でガツーンだ。初めて会うのに、ここには信頼がある。こういう生き生きとした会話があること、とても素晴らしいと思った。生き生きとした当事者意識こそが、民主主義につながるんですよね?
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短い対話で生まれた誤解を解くことの難しさ
それから質問7は、具体的な法律、法案に関するもの。ちょっと難しい。質問、ほぼ全文を書きます。
「昨年の6月に『重要土地調査規制法』が通りました。これは自衛隊の基地周辺1キロに住む人たちを国が調査対象にするものですが、練馬区には朝霞と北町に2つの自衛隊があります。とりわけ朝霞駐屯地には陸上自衛隊総体司令部があり、米軍も常駐しています。その周辺1キロは国が区に命令して、住民を監視対象にします。これを立憲民主党はどう考えているんですか? 賛成したはずですが?(★1)
もう一つは、米軍の「思いやり予算」。1兆5百億円、今後5年間払うと約束しました。払わなくてもいい金です。なぜこれに賛成したのか、聞いてみたい。日米地位協定のために日本は苦しんでる。抜本改定を望む都道府県知事の要請があるにもかかわらず、どう考えているんですか?
そして、練馬9区は山岸一生さんを当選させました。それは市民と野党の共闘にてやりました。私たちは20項目の政策項目を作りましたが、これを次の参院選ではもっと発展させてがんばってほしいです」
質問者さんは市民運動をしてきた、政治にしっかりと考えを持った方とお見受けした。これに対しての小川さんの答えは少し長いので、要旨を伝えます。
「軍事施設等の周辺に対する土地の取得、登録、監視、そういう法制化がなされました。また、今、審議中で経済安全保障法案があります(高度な先端技術が海外に流出しないよう保護したり、半導体や医薬品など生活に欠かせない物資を確実に確保したりする法律だが、企業活動を制限しないか?など問題もある)。
それらに相通じるのは国家主義的な傾向であり、警戒心を抱いています。他方、外交や安全保障に関わる分野では現実的な対応が求められるのも事実で、基本的には警戒心を抱いて、もろ手を挙げて賛成ではないが、修正案を出しながら賛成していく立場です。(★2:この答えが誤解を呼んで分かりにくかったのですが、『重要土地調査規制法』は反対、『経済安全保障法案』は賛成、ということだそうです)
それから、思いやり予算は年1500~2000億円です。米軍基地の従業員の給料から光熱費まで払うのは同盟国では他にほとんどありません。縮小を目指すことは当然です。
野党共闘ですが、衆議院選挙以降ずいぶんと動揺しています。いまいちど、野党陣営は何なら協力できて、何はできないのか。選挙区調整なのか、閣外協力か、連立政権か、そこまで突っ込んで議論すべきだと思います。残念ながら(この夏の)参院選では時間が足りずにそこまで至らないでしょうが、再度組み上げ直していくことが大事だと思います」
小川さんの答えを聞いていた質問者さんはどことなく満足している様子がなかった(すぐ横にいらしたのです)。だから、その場ですぐ、「今の小川さんの答えを聞いてどう思われたかお尋ねしていいですか?」と聞いてみた。
「今の答えは100点満点ではないですね。重要土地規制法も、じわじわと戦争に進んでいる感じがします。国民が監視されるなんて、逆でしょう。規制を監視しなきゃ。それに賛成するというのは、納得できません。
思いやり予算は元々財政法からいって、ああいうお金の使い方ができないんですね。米軍自身が払うべきものを「思いやり」とつけて払ってる。それに賛成するのは納得できませんね(★3)。
私らは『九条の会』(憲法9条を守る活動)で、戦力を保持しないことで日本の平和は守られてきたと思っています。逆に米軍がいることで北朝鮮や中国が日本を変な目で見ているんだと思っています。
そして、このあいだの野党共闘は『戦争法(安保法制)に反対する』のが原点ですから、今の日米地位協定には矛盾が生じてきます。そこを向けて野党が共闘していくことが日本の確かな平和につながると思っています」
さて、この対話にはそもそも質問者さんに誤解があって(★1)、「重要土地調査規制法」に立憲民主党は「私権制限」につながるとして、採決に反対している。
……ということに、私もこのとき気づいてなかった!
さらに、それに対する小川さんの答え(★2)も、「ん?」というもので、話がこんがらがったかもしれない。
また、男性は小川さんが「思いやり予算」にも賛成しているように受け取っていたが(★3)、実際は「縮小」を言ってるので、そこにも誤解が生じている。
なるほど具体的な法律の話をこうして青空対話集会でするのは、なかなか難しい。質問者さんが納得できないまま終わってしまったのは、残念だ。
それでも質問者さんは答えに100点満点は出せずとも「野党が共闘していくことが日本の確かな平和につながると思っています」と最後は言い、小川さんを罵倒するような言葉などは口にせず、100点満点ではないことを理解しながら未来への希望を捨てていない。
そもそも政治的な「100点満点」は私たち日本に住む一人ひとり、受け手によって違う。私には100点の答えも、誰かには30点だったりする。そして、今、30点の答えでも、そこから話し合っていくことも大事だと思う。
たとえば質問2にあった原発の話。私は「今すぐすべての原発を廃炉に」と考えていて、『時給はいつも最低賃金、これって私のせいですか? 国会議員に聞いてみた。』でも小川さんと原発の話をしたが、廃炉の「ゴールは2050年」と言われ、ヘビのような目になって小川さんを見た。
そこからまた私も「化石燃料を燃やして温暖化で大雨災害が増えて、カビの生えた家で咳して震える人はそのままにしていていいのか?」とか思って、心揺れたりして、それを小川さんに言ったら、「そうやって迷って悩むことがたいせつ」と言われ、ふむふむとか思いつつも、また今は「やはり今すぐ廃炉が大事だ」と、戦争のあり様を見て思ったりしている。
悩み迷いつつも対話を重ねて政治を熟成させていく、政治家も私たちも共に悩んで互いに成長し合っていくってことが、何より大事なんだと改めて思う。今、SNSを見ていると政治家の発言に即「こいつはバカだ」「こいつは終りだ」「こいつはダメだ」と直情的に結論を出してしまう人も多いが、それでは自分も決して成長できないし、政治も変わらないってこと、私自身も肝に銘じたい。
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社会保障も大事、でも今すぐお金が必要なんです
そして質問9は、「子どもの教育費を大学まで無償化してほしい。また消費税をなくしてほしい。山本太郎さんはよく考えてらっしゃるが、なんで小川さんは考えられないのか?」という問いだった。
この質問には小川さん、即答。
「高等教育の無償化は絶対にやらせていただきたいです。子どもたちの可能性を家庭環境によって潰してしまうことはあってはならないこと。子どもたちのためであり、社会の可能性の芽を摘まないという両面から、圧倒的に必要な政策だと思います」
そして、後半の質問の消費税については、
「国民負担を減らすことは社会サービスを下げることです。この社会で必要とされる社会サービスとはどんなものか、それに対して納得感を持って税という形で社会サービスを購入しようじゃないか?という感覚で、どっかで折り合いをつかないとならない。たとえば大学教育に限って言えば、必要になるのは1兆円、消費税なら0.3%です。それで国公立大学は無償にできます。
いかに有権者が「うんうん」と納得して税金を払い、その対価としてサービスを手にしていくかを議論していくのが政治です。ただ土台として政治が信頼されてないと、できません。同時に信頼される政治を作るのは有権者だという国民の自覚と芽生えがセットです」と話した。
小川さんが消費税の話をすると大いに批判されることが多いのだけど、「財政民主主義」という言葉があると、少し前に学んだ。
それは税金から何にいくら使うかをみんなで話し合い決めていくということ。残念ながら、今の政治だとそれが上手く機能しておらず、私たちは税金が理不尽な使い方をされ、消費税もきちんと正しく使われていないと感じて(実際にそうだと思う)、批判が起きる。
でも、財政民主主義がきちんと機能すれば、消費税は正しく社会保障、社会サービスに使われるはずだ。そのためには私たち有権者が信頼できる政府を作らなくてはいけない、というのは小川さんの論そのとおりで、私はそこに異論はない。
とはいえ、今は賃金は上がらないのに、税金や社会保障費ばかり上がり、物価も値上がり続きで、みんなが青色吐息だ。「財政民主主義が成立するときなんて待ってらんないですよ。今すぐ、今救ってくれなっきゃ!」という声の方が大きいだろ。私も正直、そういう一人である。
ぶっちゃけ、みんなの叫びは「金をくれ!」じゃないか?
そうした声に応えるのが、質問者さんが例に出していた山本太郎さん率いるれいわ新選組が唱える消費税廃止案だろう。それを実現するに必要な貨幣論が「MMT論(現代貨幣理論)」だ。
これは、自国通貨を発行する国ではお金はいくら刷っても問題ない、税金は財源ではない、という考え方。日本ではれいわ新選組と、自民党の一部(高市早苗さんら)などが、この論に対して肯定的な議論を行っている。
世界でも注目をされるMMTだが、慶應義塾大学教授の白井さゆりさんがNHKの「読むらじる。」で発言しているのを見ると、野放図な積極財政を行うとインフレ率が高まりすぎるので、そのバランスの舵取りが難しいように思える。
「いつでも歳出拡大や縮小、あるいは増税などの調整がすぐできるように国会運営ができるのかどうかにかかっているんですね。とくに、大インフレになりつつあるときに、はたして国会議員が国民に不人気な増税を迅速に断行していけるのかが問われます。世界の多くの国は、かつて政府が放漫な財政歳出を続け、大インフレになった歴史がありますので、おいそれと政府の裁量にまかせることができないのではないかという思いがあります」
経済の専門家ではないので、今ここでこれが正しい正しくないとは判断できないが、これだけの舵取りを果たして日本の国会が出来るだろうか?という疑問は沸く。
とはいえ、私たちの暮らしは待ったナシだ。なら、たとえば折衷案はどうだろう? 野党共闘で政権交代を果たしたら時限的なMMTを実現して消費税は廃止、社会保障を充実して、みんなの生活を建て直す。その間、国会は今のように休みの期間の方が多いんじゃない?ってぐらいの開催日程を変えて、土日以外、1年間、しっかり通年で開催する。
それを2年ぐらい続け、生活が少し建て直ったら、そこでMMTは徐々に終了して、国民負担とサービスを応分にしていく。
それならどうだろう? ただ、これを実現するには100点満点の政治家、政治、政党を求めていたら永遠に適わない。それを私たち有権者側が肝に銘じなければならないと思う。
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