短さゆえの余韻を味わう。(『透明人間の恋』『昏倒少女』)
『町田くんの世界』などで人気の安藤ゆき先生ですが、『透明人間の恋』『昏倒少女』(ともに集英社)の圧倒的短編力を、みなさまご存知ですか。『ぶ〜け』で育った私が、これぞ集英社の少女マンガ…!と勝手にDNAを検出し、崇め奉っている短編集です。
『透明人間の恋』を読んだ時、なぜだか藤田貴美先生の『目で殺せ』を初読した時の興奮がフラッシュバックしました(藤田貴美作品についてはまた今度)。
登場人物は男子も女子も可愛くて、清々しくて、かっこいい。少女マンガならではのキュンキュン来るセリフもシチュエーションもまぶされつつ、一筋縄じゃない。『透明人間の恋』に収められている『drops.』なんて、むう~!とうなりながら、もう一度、初めから読む羽目になる。エンドレスでリピートしちゃうなんて、音楽でいったら超キラーチューン。それほどの構成力なのです。『昏倒少女』もいい。私は巻頭の『ホットアイスチューン』が好き。短ければ短いほど、うまい作家さんは余韻を残す。まるで俳句のように。この作品も然り。
少女マンガの効用は、読んでいる間じゅう、まるで写し鏡のように、記憶の奥底にしまわれた己の学生時代のとほほやうふふやあははを思い出せること。好きな異性の「好みのツボ」を思う存分突かれること。連れ合いがいようと、不惑を超えようと、それは快感。ときめいて何が悪い。読書は心の開放。求めよ、さらば開かれん。