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大いなるものに抗うということ。(『千年万年りんごの子』)

何度読んでも泣いてしまう、『千年万年りんごの子』(講談社)。青森のりんご農家に入婿した雪之丞。彼女の妻、朝日が寝込んだ日、「それ」は起きてしまう。あらかじめ決定づけられていたかのように。…詳しいストーリーは省きますので、ぜひご一読を。

人智を超えた大いなるものに抗うとき。己の無力さに打ちひしがれ、それでも、もがく。運命や宿命という名のプログラミングを書き換えるために。2020年の今だって、私たちは不測の事態に直面している。誰もが想像しなかった、新しい暮らしを実践する日々。被害が年々大きくなる自然災害。目に見えない“何か“が私たちに与える、幸せと厄災について、考えてしまいます。そのとき私は、どう抗い、守るのか。

常世から来るものさ違いなどねえ 幸いは災いに 災いは幸いに ぴたりと寄り沿い 流転し続けるのだから(3巻より抜粋)

2020年、この言葉にもう一度出合ったことの意味を噛み締める。

表紙に目を落とす。やさしくもひんやりとしたりんごの赤、澄んだ夕焼けのオレンジがさびしい。点在する白いりんごの花は、雪之丞と朝日の間に咲いた、束の間の幸福な時間のよう。身を切るように冷たい津軽の冬の空気。無音の夜の気配。田中相先生の作品には、自然への、そこで暮らす人々への畏敬がある。もしこの作品を気に入ったなら、『地上はポケットの中の庭』もどうぞ。土の匂いのするマンガはほっとします。

追記★蛇足ですが…大ヒットしたあの映画と、通底しているものが同じだなぁと感じたり(この作品の方が世に出たのは先です)。これも、再読ならではの発見。嬉しい。その映画作品はネタバレにつながるので伏せておきます。匂わせてすみません。素晴らしい両作品を味わった人だけが受けとるごほうび、ということで…。

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