読書:平戸の琵琶法師 ロレンソ了斎
ザビエルに出会い、イエズス会修道士になって日本宣教に多大な貢献をした平戸出身の琵琶法師、ロレンソ了斎の本。著者はイエズス会司祭でキリシタン史研究家の結城了悟。
ロレンソは、足利義輝、信長、秀吉といった権力者と通訳として交渉し、とくに信長、秀吉とは時々ゆっくり会話を楽しむ仲でした。フロイス日本史にものっている足利将軍、信長、秀吉とのエピソードはどれも大好きな話です。信長とフロイスが二条城の工事現場で会う有名なシーンはロレンソも一緒にいます。本能寺の変の時は本能寺すぐ近くの南蛮寺にいたようです。話上手で宗教ディベートでは負けたことがなかったロレンソ、琵琶法師らしくユーモアが溢れるエピソードも多いです。
本にはザビエルと一緒に来日したトーレス神父(コスメ・デ・トルレス)と、ジョアン・フェルナンデス修道士についても詳しく書いてあって嬉しかった。
ザビエルは2年しか日本にいないので、二人がザビエルのあとを引き継いで初期宣教の基礎を作り上げていったのですが、キリシタン史を知っている人くらいしか知られていないと思います。
トーレス神父(コスメ・デ・トーレス)
スペイン、バレンシアの中流階級生まれ。司祭になった後は神学を教えていたらしい。どうしても心の平安を見出せないトーレスは、ウルデコナという小さい街に退き少年たちにラテン語を教え、そこで生涯を過ごすと思っていた。その後フランシスコ会修道士の親戚に誘われメキシコへ。しかしその親戚が亡くなり、ヴィリャロボスが大航海に出発すると聞いて同行することに。「誰だかわかりませんが誰かに呼ばれているように感じて乗船しました」(イエズス会創始者の一人・初代総長ロヨラ宛)そしてアンボイナ(モルッカ諸島)でザビエルに出会い感銘をうける。ゴアへ行ってザビエルと再開。イエズス会へ入会しザビエルと一緒に日本へ行くことに。
ジョアン・フェルナンデス修道士(ジョアン・デ・オビエド)
スペイン・コルドバ生まれ。ロレンソと同じ歳。
豪商の家庭に生まれ、兄とリスボンで商人として暮らしていた。
ある日、友人から、よい音楽があるから聞きに行こうと誘われイエズス会の教会へ行くもその日は音楽はなく有名な神父の話だったそう。説教に心を打たれ、たびたび教会へ出かけイエズス会に入会。その後インドへ。船には、ルイス・デ・アルメイダもいたそう。ほんと?マラッカまで行く予定だったフェルナンデスと同じ船にいたザビエルは彼を日本に連れて行くことに。ザビエルはゴアで最も優秀な神父に「フェルナンデスについてどう思いますか。彼は非常に徳高く活動熱心なので、彼のようになるまであなたも大いに努力しなければなりません。」と書いたそうで、実際フェルナンデスやトーレスの忍耐強さはまさに聖職者。
日本を離れるザビエル宛の手紙に「神父様と1年でも離れるのは辛いのですが」と手紙を書いているそうだが、ザビエルはその後亡くなる・・・。
ロレンソの話に戻して、エピソードはほとんど日本史に載っているものですが、なによりロレンソの活動が年代別に書いてあるのでわかりやすいです。
初めの頃は主に山口でトーレスと共に過ごし、トーレスはザビエルの悲願だったミヤコへの宣教をロレンソ、バルナバに命令します。ミヤコで宗教活動をするには比叡山の許可がいるのですがうまくいかず、いったん山口〜府内へ戻り、九州で活動。そして再びミヤコでの宣教を目指します。このミヤコでの話は面白すぎるので是非日本史で。
五畿内で休む間もなく活動した後、アルメイダとともに口之津(島原)へ戻り、トーレスが彼を休ませてくれます。その後、大村純忠の子供が病気になったのでアルメイダとともに治療へいき、口之津へ戻った後はまたアルメイダと五島列島へ宣教に行きます。それにしてもほぼ目が見えず、杖をついて歩くロレンソのすごい移動距離。
五島でアルメイダが病気になって口之津へ戻ってしまったので、ロレンソは半年間、一人で五島に残って活動していたそうです。その後は、府内→五畿内へ、和田惟政の助けを得て、信長とつながっていきます。
和田惟政は、教会、神父たち、そしてロレンソを特別に扱っていました。しかし惟政は洗礼を受ける準備をしているときに戦死。惟政の死はフロイスを落胆させてしまいます。
秀吉の伴天連追放令後に長崎へ戻ってきたロレンソ。最後は静かに長崎で亡くなります
宣教師たちから「神から照らされている盲人」と言われ、怒涛の時代を生き、権力者とも関わり不思議な人生をおくったロレンソ。歴史上で会ってみたい人物のうちの一人です。
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