"インクルーシブ"が含めはじめたムスリムの事情
先日こんな記事を目にしました。まずは海外の記事。
Nike Is Launching Modest Swimsuits(ナイキが控えめな水着を発売)
"modest"というキーワードは、ムスリムの女性たちの間で、「より配慮のある肌を見せないファッション」を意味する"Modest Fashion"の文脈で出てきます。まさに「控えめな」という言葉の意味です。
その後日本語の記事も出てましたね。
記事によると、2017年にナイキは「プロヒジャブ(アスリート用ヒジャブ)」を発売していて、スポーツブランドでは先駆的な取り組みとして知られています。(英語の記事では2016年とあるけどたぶん間違いかな)
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ナイキがヒジャブを開発する
ナイキは2017年の春にムスリム女性向けのスポーツ用ヒジャブ『Nike Pro Hijab』を開発し始め、同年12月からは、オンラインショップと一部実店舗にて同商品の販売を開始していたそうです。
面白いなと思うのが、女性の尊厳としてヒジャブが必要である以上に、ヒジャブを身につけて競技に挑むことにおける課題がいくつかあった点です。
例えば通気性。通常であれば「乾燥しづらい素材で頭を覆うため、汗で濡れて不快なだけでなく、周囲の声が聞こえづらくなる」とのこと。また、「試合中に審判の声が聞こえず、フライングを犯してしまった経験」のあるプロ選手もいたのだとか。その他にも、「激しい動きのなかでヒジャブが外れてしまう」など、意外と知らない課題が多いです。
そして開発にあたり、ナイキは「ウェイトリフティングやフィギュアスケート、ボクシングなど、競技の異なるムスリム女性アスリートにプロトタイプを配布」して、プロトタイプを試してもらいながら、機能とデザイン両方のベストを目指して開発を進めていったそうです。
なんとなくムスリム女性向けに開発、なんてせずにちゃんとプロトタイプで試してみたりしているところをみても、まずは作って試すがいかに大事化がわかりますね…
そしてヒジャブが日常的にない私からすると異世界な課題だなと思ってしまう自分がいます。
ヒジャブがスポーツで重要なわけ
この辺のことは私はあまり詳しくないのですが、ムスリム女性に対してスポーツ業界が意識を強めた印象的だった事例があります。
2012年ロンドンオリンピックのサッカー予選試合で、イラン女子チームが、ヒジャブをつけたまま競技するのは危険ということで違反とされ、参加権を剥奪されたという出来事。
参加権が剥奪されるということは、はっきり言えばスポーツにイスラムの人たちが排除されているという状況になっています。
であればムスリム国家も保守的な姿勢もあり参加に消極的な姿勢になっていくという側面もあり、ある意味パラリンピックやスペシャルオリンピックスよりも深刻だったかもしれません。
「ヒジャブが危険なので参加できない」というのは簡単ですが、「ヒジャブの危険性」に着目して、商品を考えるという考え方自体、インクルーシブな発想だなと感じます。
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スポーツとファッションが共有する課題
英語のほうの記事ではこの一文が非常に印象的です。
Fashion and sports have historically shared a lot of the same inclusion problems as brands have struggled to serve plus-size customers and create inclusive designs that meet the needs of women with disabilities or differing standards of modesty.
つまり、ファッションとスポーツが抱える顧客の課題が同じということです。サイズのみならず、障害、控えめさという観点で同じ課題を共有し続けてきた、というこですね。
この観点は意外と持ってない人多いのかも、と思いました。
サイズについては、ZOZOSUITが画期的な事例でしたが、ファッションにおいて「サイズ」は永遠の課題ですよね。そこに近しいのが障害による課題です。手足の可動域とか、丈の長さとか、着脱のしやすさ、など、非常に近いところで課題が議論されていると思います。
だからなのか、インクルーシブデザインに近しい取り組みやユニバーサルデザイン事例でも、ファッションの事例は非常に多いと思います。服は課題が見出しやすいですよね。
そんな中インクルーシブ系のファッション事例はどうしても機能の議論に偏りがちです、着やすい、脱ぎやすい、動かしやすい、などなど。(もちろんファッション性の高い事例もあります!)
ヒジャブの場合、最近だと可愛い柄のものなど、おしゃれの側面で見られることも多いからか、機能面でアップデートするという観点がもちにくい印象がありますが、スポーツの領域と掛け合わせることで、機能面の課題も明らかになり、結果としてファッション性と機能性両方を担保したプロダクトになっているのではと思います。
そういう意味ではファッションの課題をスポーツから、スポーツの課題をファッションの視点から考えると、課題を検討しやすいのかもしれないですね。
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ムスリム視点のインクルーシブデザインは生まれるのか
結構海外のメディアをみると、宗教に関係したインクルーシブな課題の議論は多く見られています。一方ファッションのみならず、日本だと宗教における商品・サービスの課題はまだまだ発展途上ですよね。
ようやくハラルフードの議論がふつふつと盛り上がってきた(盛り上がってきたとまでは言えない?)くらいでしょうか。どうですかね。
実際日本人目線だと、日本で見るヒジャブユーザーってほっとんど観光客という印象ですよね。留学生の方でつけている人とかが増えてきたという感じでしょうか。だからなのかこの点が疎いのだよなと思います。
ハラルフード以外に、ナイキのような事例が日本から出たら、日本のダイバーシティ寛容度がより高まるのかもしれないなという期待が個人的にはあります。
ファッションやスポーツは機能面だけでなく、自身のアイデンティティを表現するツールでもあるので、面白い事例が日本から出るといいのになあ、と思っています。
以上、インクルーシブデザインレビューでした。
(ムスリムの事情は詳しくないので、ぜひ色々教えてほしいです!)
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