物語のタネ │ 好奇心がアイディアになる
物語を生み出すって、なんだか植物を育てるのと似ている。
アイディアというタネがあって、たくさんの愛情を与えながら作品として育てていく。
では、その「タネ」はどこにあるのだろうか。
すでに持っている人と、生み出すことができる人と、探し出すことができる人がいると私は思う。
すでに「タネ」を持っている人
「実体験」というのは、小説を書くにあたって大きな強みになる。
親子の愛とか、学生時代の青春とか、恋愛経験とか、恐怖体験とか、職場での出来事とか。
感動した、驚いた、嬉しかった、悲しかった、怖かった。
そんな「実体験」と「感情」の組み合わせがタネになる。
よっぽど珍しい体験や出来事でもない限り、ありふれた物語になってしまいそうだけれど、それは作者の腕の見せどころ。
そのタネの育て方次第。
「タネ」を生み出すことができる人
経験もなければ事例もない。
そんなゼロからイチを生み出すことができるのはアイディアマン。
SFとかファンタジーとか、新たな世界を想像してもらうとわかりやすい。
こんな世界があったら、こんな能力を使えたら……
そんな「もしも」という思い付きが物語のタネ。
誰も思いつかないような密室トリックとかも同じ。
今までにない衝撃や真新しさがある作品になるけれど、ネタ切れになりやすいのがきっとこれ。
「タネ」を探し出すことができる人
日常は情報で溢れている。
目に映る景色、聞こえる音、触れた感触、口のなかに広がる味。
花の名前とか、花言葉とか。
変わった雲とか、そうなる現象はなぜかとか。
暑さ、寒さに関連することわざとか風情のある表現とか。
突飛な行動の裏にある人間心理とか。
五感を研ぎ澄ませ、「なんだろう」「知りたい」という好奇心から得た情報がタネになる。
「ネタ切れ」とは無縁の私
小説を書きはじめて10年以上。
出版した長編作品は『スノードロップ ー雪の雫の日記ー』の1冊で、Webでの連載は5作品、単発のショートショートが1作品。
これが降谷さゆとして世に出した作品のすべて。
黒歴史として心にしまっておきたい作品が多いけれど、10万字以上の長編は約10作、2~5万字の短編は約50作、別の名前で毎月納品しているコラムは350作以上がクラウドに保存されていて、スマートフォンとタブレットのメモ帳は「1つ作品が書けるネタ」で埋め尽くされている。
――実体験はあまり晒したくない。
――ゼロからイチの新しいアイディアがあれば仕事で生かしたい。
そんな私は「毎日タネを拾い集めている人」。
『スノードロップ ー雪の雫の日記ー』は花言葉とドキュメンタリー番組である症例を知ったときの衝撃から生まれた物語。
Webで連載したショートショート『酒のことば』はことわざやカクテル言葉から生まれた物語。
”好奇心があれば、日常のなかに物語の「タネ」は無限に存在する。”
作品として大切にタネを育て上げるのは大変だけれど、これからもたくさんの「タネ」を拾い集めたい。
参考までに
taga.bookさまのnotoの企画へ寄稿させていただいたショートショート『かけ違えたボタンみたい』を通じて、「物語を作るひとつの方法」を紹介しました。
ぜひこちらもご覧いただけると嬉しいです。