見通しの価値
研究会で若手の先生から頂いた質問
1年間の研究発表会を先週行ったが、そこで若手の先生に
『何人かの子どもに「見通しはなんで書いているの?」と聞いたら、どの子もそれぞれの考えを教えてくれました。私のクラスの子に聞いても答えられなくて、どのように価値を指導してきたのですか」
と質問していただきました。
そこで、「見通し」の価値について話をしていきたいと思います。
見通しの役割
自己調整学習していくためには、見通し(Anticipation)⇨行動(Action)⇨振り返り(Reflection)のサイクルを回していくことが大切だと言われています。
では、見通しにはどのような役割があるのでしょうか。
「見通し」は大きく分けて課題の分析と動機づけの2つの役割があると言われています。
①課題の分析
課題を分析し、どんな手順や方法で学ぶのかといった学習過程そのものの過程目標と、どこまで学ぶのか、何ができるようになるのかといった学習結果への結果目標を立てることです。
私の場合は、過程目標を「学び方の作戦」という言葉に置き換えて、子どもに声をかけるようにしています。
結果目標は、低学年であれば学習過程をカードにし、今日はどこまで進めるのかを移動したり、高学年であればロイロノートなどでカードを動かして、カードの大きさを変えられるようにしてどれくらいの時間をどこにかけるのかの時間に関する作戦も考えられるようにしています。
②動機づけ
2つ目が課題の分析し目標を立てた結果、自分は「この課題をなんとかやっていけそうだ」と学習について自己効力感を感じながら、学習結果に対する期待を持つのです。
ここで私が大切にしていることは、不安そうな子を見つけること。この段階で学習に対する自己効力感がなければ、させられる学習か、やっているふりしかできなくなると感じているからです。
不安そうな子には
どこにどこに不安を感じているのか(原因分析)
私か友達のヘルプが必要か(援助要請の有無)
誰とだったらできそうか(援助要請の具体策)
どこまでだったらできそうか(課題量の調整)
を聞くようにしています。
そうやって、子どもの不安に寄り添うようにすることで、多くの子は動機をもちながら学習に向かっていくことができます。
選択肢のある「見通し」が大切
「さぁ見通しを持ちましょう」と声を掛けたとしても、見通せることが少なければ子どもにとって見通す意味はありません。教師が作る指導案がしっかりしていて、教師の時間配分の中で、教師が与える学習方法で、学習する手順に則り学習する限り、「見通し」は教師の役割であり、子どもの学習過程には含まれてこないのです。つまり、自己調整学習を成立させていくためには、当たり前ですが、選択肢が多く準備されていることが重要になってきます。
では、どんな選択肢があるのでしょうか。私が授業をデザインしていくときに大切にしていることを紹介します。
どうやって学ぶのかの選択肢(認知的方略)
誰とどこで学ぶのかの選択肢(環境構成、社会的支援の探求に関する方略)
どこまでするのかの選択肢(目標設定に関する方略)
この3つの選択肢はかなり重要だと思っています。
ただ、何でもかんでも子どもに委ねたらいいのかというとそうではないので、その辺りはぼちぼち書いていこうと思います。
「見通し」「行動」「振り返り」はセットでサイクル
「見通し」が持てたとして、終わってしまっては「見通し」を書いた意味がありません。初めにも書きましたが、「見通し」⇨「行動」⇨「振り返り」のサイクルを回していくことが大切になります。
そのため、「見通し」が「行動」に影響を及ぼし、「行動」の最中にそれがどうであったのかを「自己観察」し「自己評価」しながら調整していくことが大切になります。
自分自身をメタ認知するのですが、観察した自分自身が順調なのかどうかを「自己評価」するための物差しが必要になってきます。その物差しこそが、自分で立てた「見通し」なのです。その「見通し」と「自身のパフォーマンス」を比べることで「自己評価」するのです。それがなければ、ポジティブな子は常に楽観的な評価をし、ネガティブな子は悲観的な評価を繰り返すだけになってしまいます。
価値を感じられること
最後に本題に戻って終わりたいと思います。
どうすれば子どもが「見通し」の価値を感じながら主体的に取り組めるようになるのかですが、それは見通すことが学習過程や結果に大きな影響を及ぼすのだと感じられるような単元デザインにしていくことだということです。
今日は書きませんでしたが、「振り返り」との関係性はとても大きなものになります。次回は「振り返り」について書いてみたいと思います。
参考文献
著者ヘファ・ベンベヌティ 編他 自己調整学習の多様な展開 バリー・ジマーマンへのオマージュ 福村出版 2019年
https://www.fukumura.co.jp/book/b447822.html