[小児科医ママが解説] おうちで健診:「でべそ」受診の目安は?
「教えて!ドクター プロジェクト」の「乳幼児健診を知ろう!」にそって、解説させていただいている「おうちで健診」シリーズ。
前回は、でべそってどれくらいいるの?いつ治るの?テープ圧迫はしたほうがいいの?そんなことを見てきました。
今回は、
でべそで「受診するべき目安」はあるのか?
経過観察やテープ圧迫で、治らなかった場合、どうするのか?
そんなことを、なるべく医学的な根拠とともに見ていきましょう。
今回の参考文献はこちら。
「でべそ」で受診を考えるとき
①テープ圧迫中の、お肌かぶれ
②でべその袋の中に、腸がはまりこんで戻れない
③全然なおらないので、手術を考えるとき
でべその受診の目安は、ザックリ分けると、上の3つになります。
1つずつ詳しく見ていきましょう。
①テープ圧迫中の、お肌かぶれ
前回の記事では、でべそをテープ圧迫をする・しないは、それぞれメリット・デメリットがあり、親御さん・お子さんが心身ともにムリない範囲でOKですよ、というニュアンスでしたね。
また、テープ圧迫のデメリットとして、お肌トラブルが20%以上のお子さんに起きうることも書きました。
テープ圧迫のせいだけでなく、ただでさえ生後まもない赤ちゃんのお肌は薄く・皮脂や水分のバランスを保つのがむずかしいもの。
お肌は目に見えやすいので、ちょっとした変化も不安になりますよね。
指示にしたがってテープ圧迫や清潔にしてきたけれども、以下のような皮膚の状態が数日つづくようであれば、受診を検討してください。
皮膚の表面には、普段はわるさをしない常在菌という細菌がいます。
かぶれたりして、こうした常在菌が皮膚の内側に入ってしまうと、皮膚の下で細菌の感染が広がってしまいます。上にあげたサインは、こうした細菌感染がおきている可能性があります。
②でべその袋の中に、腸がはまりこむ
前回も書きましたが、赤ちゃんとお母さんをつないでいるへその緒の通り道があるので、赤ちゃんは皆うまれつき、おへその内側のお腹の筋肉が一部あいているんでしたね。
普通の状態でも、でべその袋の中に、腸が一時的に入り込むことはよくあります。
でっぱったおへそを押してみたら、ジュワー・ボコッとした触感があるのは、このためです。
で、普通は、腸はでべその袋の中をいったり・きたり、つまりはまり込むことなく、自由に動いています。動けます。
が、ものすごーーーーくごく稀に、腸が、でべその袋の中に入ったまま、でられなくなってしまうことがあります。
医学的には「(臍ヘルニア=でべそ の)嵌頓」とか「(はまりこんだ腸管が)絞扼」という言い方をします。
この場合は必要におうじて、手術などの外科的な処置が必要になることもあります。
腸が入り込んででられなくなる状態がつづくと、皮膚や腸が炎症をおこしたり・壊死してしまったりするリスクがあります。
赤ちゃんの場合は痛みをうったえられないので、ピンポイントな症状がなく判断がむずかしいのですが、上記にあげたポイントが手がかりになります。
・・・なんかこう書くと、こわくなっちゃう方もいると思うんですが、これ、普通は、というか、ほぼ怒らない状態だと思ってもらってOKです。(Pediatr Surg Int. 1998;14(3):231.)
安心するために、もう少し詳しい数字を見てみましょう。
報告によってバラツキはありますが、でべそのお子さんのうち、腸がはまってでてこれなくなるような緊急の合併症を起こすのは、100人に1人もいないというのが主流の報告です。
なおおへその皮がふくらみすぎて、「これって皮膚が破裂しちゃったりしないですか?!」と心配になられる親御さんもいらっしゃいますが、これもまた、まず起こらないと思ってもらって良いです。
(Pediatr Surg Int. 1998;14(3):231.)
ちなみに「お子さんの年齢や、でべそのサイズによって、腸がはまりやすいかどうか」というのは、結論がついていません。
(J Pediatr Surg. 2011 Nov;46(11):2151-6.など)
生後まもない赤ちゃんでも・小学生になっても、また、でべそ(正確には、おへその下のお腹の筋肉があいている)サイズが5mm未満でも・1.5cm以上でも、腸がはまりこむことはありうるよ、という報告です。
(J Pediatr Surg. 1975 Jun;10(3):405-9.など)
いずれにせよ、でべその袋の中に、腸がはまってでられなくなることは、本当にまれ。だから、普段は心配しないですごしてください。
だけど、一応上のようなサインがあったら、受診を考えよう、というのを頭の片隅においていただいたら大丈夫です。
③全然なおらないので手術を考えるとき
これは急ぎの受診ではないのですが、治らなかった時に、今後の方針を医師と話し合っていくために、でべそのかかりつけを作っておく、的なイメージの受診です。
前回もふれたとおり、でべそはとくに治療をしなくても、1歳くらいまでには80%以上が治るんでしたよね。
これをふまえて、1歳までに全然なおらない・ますますでべそが大きくなるような場合は、「ゆくゆく」手術を検討しても良いのでは?というのが、共通した見解です。
(小児科診療 67(6): 919-924, 2004.、米国小児科学会など)
ただし例えば1歳の時点でまだでべそでも、即手術!とはなりません。
2歳になればさらに、でべそ全体の90%以上が治るのではともいわれており、基本的には「待ち」の姿勢をつづけます。
そもそも単におへその手術と言っても、お子さんの場合は「全身麻酔」が基本です。
点滴や吸う麻酔のお薬で眠らせて、呼吸も鎮静するので、人工呼吸器を使います。
全身麻酔にともなう、呼吸の鎮静や血圧の低下など、色々なリスクがありますが、それを上回るメリットがある場合でないと、おいそれとお子さんに手術はすすめられません。
具体的には、4歳未満で手術をすることは、推奨されていません。
(①J Pediatr Surg. 2017 Jul 24. ②J Pediatr. 2020;217:125.)
上記のような呼吸や血圧のリスクのほかに、麻酔をかけることはお子さんの「脳の成長」に影響があるのでは、とも考えられているからです。
2~3歳になれば脳の「サイズ」は大人の70%近くにまで成長していますが、脳の「神経」「機能」についてはまだまだ発展途上。
ここで麻酔をかけて一時的にも意識を落とすことで、その後のお子さまの脳の神経や機能の発達に影響が出るのでは?という懸念です。
また単純に、4歳未満でおへその手術をしても、またお子さんの筋肉や皮膚の成長に伴って、再発してしまうリスクもあるのでは?という見解もあります。(J Pediatr. 2020;217:125)
・・・というわけで、もちろん個人差もありますし、各医療機関での物理的な資源などで対応は変わってきますが、基本的には手術は急がないのがモットーです。
そんな時に、親御さんと相談したうえで、手術を検討します。
(Pharma Medica 13(8): 188-189, 1995. ②UpToDate ” Care of the umbilicus and management of umbilical disorders”
など)
なので、でべそが治らない。じゃあ手術のタイミングを逃さないように、すぐ受診しないと手遅れになる!ということではありません。
いざ手術をするとなると、通常、専門の科は「小児外科」になります。
どこの病院でもあるメジャーな科ではないので、だいたいは、お近くの病院から、小児外科のある大きな病院に紹介状をかいてもらって、受診するという流れになります。
いかがでしょうか。
①テープ圧迫中の皮膚トラブル、またかなりレアですが②おへそのなかに腸がはまり込んで戻らなくなったとき、そして緊急ではありませんが③全然なおらず手術を考えるとき。
それぞれの受診の目安・考え方をお示ししてきました。
たかがへそ、とはいえ、毎日目につくと、ちょっとした変化や、今後の症状が不安になりますよね。
少しでも安心してすごせる材料になれば幸いです。
(この記事は、2023年2月4日に改訂しました。)