[小児科医ママが解説] おうちで健診【Vol.3】赤ちゃんの目って、どれくらい見えてるの?目で追えてないかも、と心配になったとき、チェックすること。
「教えて!ドクター プロジェクト」の「乳幼児健診を知ろう!」にそって、解説させていただいている「おうちで健診」シリーズ。
今回は「目を合わせるか。目で追うか。」というチェック項目について、見ていきます。
赤ちゃんの目って、ぶっちゃけどれくらい見えているの?ちゃんと目で追えているか心配です。といったお声を、外来や健診でいただきます。
今回も科学的な根拠をなるべくお示ししながら、見ていきたいと思います。
すべての「おうちで健診」シリーズに共通した、主な参考文献は以下です。
新生児の視力は0.01。3歳でやっと0.5。
産まれて1ヶ月ころの赤ちゃんは、まだ視力は0.01くらい。
大人ならメガネ・コンタクト必須レベルですよね。
でも「顔のようなもの(輪郭があって、上に2点・下に1点、みたいな構造)を認識する力」はあります。
また、とくに「前後(近づく・遠ざかる)にモノが移動してるな」とか「クルクル回転しているな」ということも認識できます。
ただし生後1ヶ月では、まだあまり、顔そのものの構造に、ものすごい興味を示す時期ではないようです。
お母さんの顔よりも、他の人の顔のほうをよく見たり、また見たとしても顔のすごい狭い範囲しか見ていなかったり・・・というのも生後1ヶ月としては普通です。(Child Dev. 1976 Jun;47(2):523-7.))
また「赤い色に反応しやすい」「20~30cm先が一番見えやすい」というのも、聞いたことがある親御さんもいるかもしれません。
ほとんど見えない世界の中で、お母さんの赤い乳首はなんとなくとらえられる。
しかもおっぱいやミルクをあげるときの、赤ちゃん~お母さんの距離が、だいたい20~30cmくらいです。
赤ちゃんの生きるチカラ、生命体としての本能的なチカラを感じますよね。
まだ寝ている時間も多い時期。
生後1ヶ月ころまでは「なんか赤ちゃん起きていても、ぼんやりしてるだけだな。見えてるのか・見えてないのかよくわからん。」こんな状況で大丈夫です。
まだ目の筋肉や神経を調整する力も発達していないので、
「目が泳いでいるように見える」「より目に見える」というのも正常な時期です。
そこから生後3~4ヶ月になると視力は0.1~0.2、3歳でやっと0.5くらいになります。
よくこんな視力で外界を認識して、時々ケガをしながらも、ハイハイしたり歩いたり・走ったりしてるな、と思います。
でも、たとえば生後3~4ヶ月では、バイオロジカルモーション、つまり光点の運動だけから、他人の行動を把握できるようになってきます。
また生後4~5ヶ月ころには、モノが自分の「遠くにあるか、近くにあるか」といった奥行きの知覚も発達してきます。視力以上に、赤ちゃんの内面では、見る力・観る力がグングン育っているんですね。
「左右」を追えるのは2ヶ月。「上下」は3ヶ月。
「目の前で動いているものを、ちゃんと目で追うか」は、医学的には「追視(ついし)」といいます。
「左右」の追視は生後2ヶ月ころ、「上下」の追視は3ヶ月ころから、徐々にできてくるのが一般的です。
生後2ヶ月ころに、目で追える範囲は、「左右にそれぞれ60°くらい」です。
この頃、赤ちゃんの真ん前からモノを左に動かしていって、ずーっと顔の真左にくるまで動かしちゃうと、途中で目で追えなくなってプイと違う方向を向くのは正常です。
また生後2ヶ月では、上下への追視はまだほとんどできないことがほとんどです。
上下にモノを動かしても全然見ようとしてくれない・・・というのは、生後2ヶ月ころであれば正常なんですね。
でも、モノをとらえるチカラは、新生児の頃より圧倒的に成長します。
両目で物を立体的にとらえる「立体視」が発達するのも生後2ヶ月ころですし、生後1ヶ月の頃よりも、顔の構造・とくに目をよく見るようになるのも、生後2ヶ月ころです。(Child Dev. 1976 Jun;47(2):523-7.)
生後3ヶ月ころになると、上下方向も目で追えるようになります。が、まだ完全ではありませんし、上下におえる範囲も個人差が大きいです。
また多少、2ヶ月の頃に比べれば、モノを上下に動かすと、ちょっと追って見てくれるかな、ぐらいでOKです。
しっかりと上下方向に目で追えるようになるのは、生後6~7ヶ月ころともいわれています。
「あれ?目で追えてないかも?」と思ったときに、チェックすること。
というわけで、生後数ヶ月の間に「あれ?ウチの子、モノを目で追ってくれない?!」と思った時に、チェックするポイントを見てみましょう。
要は「発達の段階で、赤ちゃんがまだ目で追えなくてもおかしくない範囲で、モノを動かしてしまっていないか」ということです。
①モノが遠すぎないか
動かすモノが遠すぎると、そもそも赤ちゃんにとって、モノが見えていない状況かもしれません。産まれて1年間の赤ちゃんの視力は、まだ0点台。モノの「距離」を調整してあげるのが大事です。
産まれてしばらくは、赤ちゃんの目から30~40cmくらい離れたところが、一番見やすい時期です。
生後4ヶ月をすぎると、数mくらい先もなんとか見えるようになります。が、目で追えるかどうかを見るには、やはり赤ちゃんから30~40cmくらい離れたところがベストです。
②モノの色が、そもそも見づらくないか
距離にくわえて「色」も大事です。
産まれたばかりのころは「赤」、生後4~5ヶ月でやっと「黄」「緑」「青」といった色を認識できるようになります。
赤ちゃんのオモチャはこうした色を使っていることが多いのですが、あらためて、動かしているモノが赤ちゃんの見えやすい色かも、チェックしてみましょう。
③モノを、赤ちゃんの左右に動かしすぎていないか
生後2ヶ月ころから左右に追えるようにはなりますが「赤ちゃんの真ん中から、左右それぞれ60°」くらいしか追えません。
赤ちゃんの真横くらいまでモノを動かしすぎていないか、もチェックポイントです。
④モノを動かすスピードが、速すぎないか
どれくらいの速さ、という定義はないのですが、わりと速いスピードで動くモノを、ちゃんと目で追えるようになるのは生後6~7ヶ月ころです。
生後4~5ヶ月ころから少しずつ、スピードに追いつけるようにはなりますが、まだ十分ではありません。
目で追えるかチェックするときは、ゆっくりめに動かして上げましょう。
⑤長い時間、かけすぎていないか
④と矛盾するようですが、長い時間かけすぎても、赤ちゃんはすぐそっぽを向きます。
これも○秒という医学的な定義はないのですが、生後数ヶ月の間は、何かを見ようとしても短い時間ですぐ目をそらすのは、正常です。
1歳ころでようやく、長い時間、目の焦点を合わせてモノを見る・追えるようになります。
⑥「上下」を試す時期が、早すぎないか
上下に追えるようになるのは生後3ヶ月からですが、完全にはできません。上下方向に追えるようになるのは、生後6~7ヶ月ころでしたね。
いかがでしょうか。
ずーっと赤ちゃんといると、ちょっとした目の動きや、見えてるのかな?とか、気になってきますよね。
「ウチの子、なんか目が合わない気がするんです」といったご相談も、実はよくいただきます。
次回は「目が合う・目をそらす」ということについて書いていきます。
(この記事は、2023年2月20日に一部改訂しました。)