[小児科医ママが解説] 赤ちゃんのウンチが、長らく出ていない...でも元気。こんなときどうする?
先日「教えて!ドクター プロジェクト」の「乳幼児健診を知ろう!」に沿った解説シリーズを、完了させていただきました(3~4ヶ月健診・6~8ヶ月健診・1歳半健診・3歳児健診)。
乳幼児健診が再開された自治体も多いですが、
まだまだしぶといコロナで、なるべく受診や外出は控えたいところ。
「うーん、病院いくほどじゃないけど、これって様子見てて大丈夫なの?」
っていうお悩みに、ひきつづき寄り添っていけたら幸いです。
今回は「(生後間もない〜生後4ヶ月くらいのお子さんで)ウンチが出ない。でも元気。これって大丈夫…?」というお悩みです。
というお悩み、実は結構多いご相談なんです。
医学的な情報もそえて、見ていきましょう。
①1週間に1回しかウンチが出なくても正常の範囲。
「え、そうなの?」って感じですよね。
たしかに過去のnoteでは、「1週間に2回以下(しかウンチが出ない)」のは、便秘の診断基準のひとつだと書きました。
ただし実は「生後3ヶ月くらいまでは、正常でも、1週間くらいウンチが出ない子もいる」ことも、チラッと書かせていただいていました。
(「正常ですで終わらせない! 子どものヘルス・スーパービジョン」(阪下和美、東京医学社、2017年)
実際に「1週間に1回のウンチでも、正常の範囲だよ!」とする文献・情報は他にもあります。
もう少し詳しく調べたものだと、「完全母乳のお子さんの37%が、最低1回は、丸1日排便がなかったことがある」というデータもあります。やはり時期としては、生後1ヶ月未満が多かったとのこと。(Breastfeed Med. 2014 Nov;9(9):442-5. )
生後数ヶ月というと、まだまだ赤ちゃんも産まれたて。
消化したり、ウンチを出したり・・・という機能も未熟です。
数日〜1週間でなくても、正常の範囲なんですね。
②飲みがよければ、急ぎの受診や浣腸は必要ない。
そうか、じゃあ様子見るか・・・と思いつつ。
なんかウンチを促してあげる方法はないかな…と思うのが親心ですよね。
ご相談を拝見していると、お腹の「のの字」マッサージや、綿棒刺激、また市販のイチジク浣腸などを使っている親御さんが多い印象です。
結論から申し上げると、こうしたマッサージや浣腸はトライしてもちろんOKですが、「必ずしもやらないといけない、というわけではない」ということです。
まずお腹のマッサージや綿棒刺激について、「便秘に絶対効く!」という医学的な根拠はない、ということは前回の便秘の記事でも触れました。
もしやるのが面倒くさいなー、とか、綿棒刺激ってちょっと怖くて抵抗ある・・・とかだったら、無理やりやらなくてOKなんです。
逆に、マッサージや綿棒刺激に抵抗がなければ、もちろんやっていただいて大丈夫です。ウンチそのものが出なくても、刺激によってお腹が動かされたり、ガスが出たりするのは悪くないからです。
次にイチジク浣腸について。
もちろん使うのを禁止するわけではありません。
乳児用のも市販されていて、正しく使う分には良いでしょう。
ただし、月齢の低いお子さんで、数日ウンチが出なかったから、
必ずイチジク浣腸をしないといけない、というわけではないのです。
赤ちゃんに漫然と浣腸を行うことを、あまり推奨しない意見もあります。
浣腸が完全にクセにならないか、は証明されていないからです。
またその場しのぎの浣腸を続けても、便秘に効果があるとは限らないからです。
少なくとも赤ちゃんも嫌がっているのに+親御さんも負担に感じているのに、無理やりイチジク浣腸をやる必要はないんですね。
(UpToDate:” Chronic functional constipation and fecal incontinence in infants, children, and adolescents: Treatment”)
数日〜1週間くらいウンチが出ていなくても、お子さんがしっかり飲めていれば、何もせずに様子を見ていただいて良いでしょう。
というのが医学的な考え方です。
③受診の目安は、1週間全く出ない、飲みが悪い、吐いているなど。
ではウンチがでなくて、受診する目安はどんなものがあるでしょう?
代表的なポイントをあげると、以下になります。
特に月齢の低いお子さんでは、ウンチが出ずにお腹が張ることで、(1)飲みが悪くなるということが一番の心配です。吸い付きが悪い、飲む勢いが悪いな、という場合は、受診する一つの目安になります。
そのほか、飲みが悪いことで(2)極端におしっこの量が減ったり、
(3)ぐったりしたり、(4)吐いている場合も、もちろん要注意です。
なお飲みが心配だと、体重の増えが大丈夫かも気になってきますよね。
体重増加については、以前のnoteが参考になれば嬉しいです。
最後の(5)1週間「以上」ウンチが出ない場合ですが、これはケースバイケースです。
1週間以上ウンチが出なくても、ケロットして飲みもバッチリ!というお子さんもいらっしゃいます。で、その数日後にドカーン!と大量のウンチを放出して・・・を繰り返されるパターンもあります。
なので、1週間「以上」ウンチが出なくても、必ずしも急ぎの受診は必要ない場合もあります。
元気で飲みも良いなら、夜間や休日の救急外来にかけこむ必要もありません。
ただしウンチが長い期間出づらい体質であること、
また今後、もし何日出なかったらどのようにしたらいいのか、
などを、
一度かかりつけの先生にご相談しておく・今後も相談する窓口をつくっておく、という意味合いで、受診してもよいのでは?というニュアンスです。
受診をすると、一時的に使ってねという意味合いで、処方の浣腸液や、座薬の便秘薬が出されるケースもあります。
きちんと今後の方針を聞いたうえで、一時的に「お尻から入れる」お薬を使うことはわるくないので、処方されたら恐れずに使ってあげて大丈夫です。
なお、飲む便秘薬については(お尻から入れるお薬や浣腸とはちがって)
「クセになることはないだろう・医学的にクセになるとは証明されていない」とガイドラインにも明記されています。
また、もう少し月齢が進んで・離乳食なども食べられている段階で、便秘の基準にあてはまっていて、便秘の飲み薬が処方された場合は、これもしっかり飲む・飲み続けたほうが良いです。
いかがでしょうか?
離乳食を食べ始めた後くらいのお子さんであれば、前回の記事のとおり、便秘の飲み薬なども推奨されるのですが、
生後間もない〜4ヶ月くらいのお子さんに限れば、「1週間に1回のウンチでも正常の範囲」ということをお伝えしたく、今回の記事を書かせていただきました。
(この記事は、2023年1月27日に改訂しました。)