娘の成人式を前に思うこと
明日は娘の成人式だ。
こんな日が来ることを、数年前は想像も出来なかった。
なぜなら娘は、小学校で不登校を経験し、近所のスーパーに買い物に行く時さえも、回り道をしなければならないくらいのトラウマを抱えてしまい、通学路を通れなくなってしまったからだ。
中学は小学校のすぐそばにあるため、考えた結果、中学は私立を受験し、隣の市に引っ越しをすることになった。
私立の中学校生活
心機一転、初めは学校生活を楽しんでいた娘だったが、中高一貫の私立中学というのは、授業スピードが恐ろしく早い。
元々、学ぶことが大好きで、興味のあることにはとことん没頭する子だったのが、毎日大量の宿題に追われ、真面目で手を抜くことができない娘は、泣きながら、夜中まで数学の難問の宿題に取り組んでいた。
塾に通い始め、宿題を個別に教えてもらえるようになり、数学は何とかついてはいけていたが、宿題はそれだけではない。大量の課題に、ストレスと睡眠不足がかさなり、朝起きる事が出来ず、休みがちになっていった。
それでも真面目な娘は、今日こそはと制服を着るのだが、ついに足が動かなくなってしまった。一歩踏み出そうとしても、足が動かないと泣くのだ。
それは中3の12月。これ以上通わせたら体も心も壊れてしまう。
いい大学になど入らなくてもいい。普通に笑って暮らせればそれでいい。
決断の時期が迫っていた。普通なら、高校受験の真っ只中だ。高校を変わるなら、早急に願書を提出しなければならない。
私立の中高一貫中学だった娘の学校は、高校もそのままあがるので、高校受験の対策は当然ない。大学を見据えたカリキュラムになっているため、高校2年までには全ての授業を終えるのだ。
娘の意思を確認して、冬休み前の修了式後に娘の荷物を取り行き、先生に受験のことを話した。在籍したまま別の高校を受験させてはもらえないかと。
先生は、前例がないから難しいといった。少し休んでも、卒業は出来るので、高校入学前に遅れを取り戻せばいいと提案されたが、少し休んだくらいで、ますますたまる課題を春休み中にこなせるとはとても思えなかった。
でも、娘がそれでもいいと言えば、そうしようと思ったが、娘はうんとは言わなかった。
そうこうしているうちに、年を越して1月になった。高校受験をするという娘の意思は変わらない。決断の時がきた。
今度は夫と共に学校に出向いた。
もう一度、在籍したまま高校受験をお願いしたが、次に提案されたのは、地元の中学校に転学することだった。
それも、受験するためだけに…
受験対策するには、もちろんその方がいいのだろう。しかし、時は中3の1月。願書提出も迫っている。しかも、中学で引っ越しをしているので、友達が一人もいない中学校に、受験のためだけに転学するなんて、新たなストレスになるだけだ。
でも、このまま休んだとしても、たまった課題にストレスを感じないはずはない。
中学側は転学か、しばらくお休みするかこのどちらかの選択しか許さない。他にも合わなくて転学した子は何人もいる。
学校の決めた特色に合わない子は、やはり辞めるしかないのだろう。もう決断するしかない。
もしかしてそうなるかもしれないことは、娘には伝えていた。
私たち夫婦は、転学することを伝えた。
引き止められることもなく、あっさりと転学することが決まった。わたしたちは初めての経験だったが、学校にとってはよくある日常だったのだろう。
公立中学へ転学
そして、それからは忙しかった。書類を持って、バタバタと地元の中学に出向き転学手続きをした。とりあえず、クラスと担任も決まったが、今から転校生として入る勇気はなかった。
早速アルバムをどうするか聞かれた。それくらい慌ただしい時期だ。載せることはできると言われたが、それは流石に娘もわたしもお断りした。
娘は学校にはやはり行けないというので、出席日数にカウントしてもらえる支援教室に時々通った。
そして、誰にも知られていない、通っていない中学校の卒業生となったのだ。
わたしはこの事が、すごく切なくて、悲しい。
大切な娘へのエール
高校には無事合格し、今は大学で大好きな英語を学んでいる。これから多くの出会いがあるだろう。
そんな娘の成人式が明日行われる。
がんばれ娘!これからは自由に羽ばたくのだ!
人の痛みを自分のことのように感じてしまう優しい娘に、誰よりも幸せになって欲しいと心から願う。
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